18話 かっこかり
「どこまで行ったんだ?」
「どうなんでしょう?結構前だったんでそろそろ戻って来る頃だと思うんですけど」
暴走しがちなダのストッパー役にタと組ませたんだろうけど・・・全くその意味を為していなかった。
先輩はスマホを取り出しダにメッセージを送った。
「何て言ってます?」
「いや、まだ既読が・・・あ、付いたな」
しばらくダの反応を待つと直ぐ戻ると返信が着たのでダを待ちながらこっちはこっちでやる事を進めた。
「どうだ?」
「入り・・・ました!」
「重そうだね」
「そこそこ。2-3キロはあるかも」
多分、恐らくメイビー。コイツは俗に言うスライムだ。
見た目に関してはほぼ陸に打ち上げられたクラゲ。
「タ。居たのはコイツだけか?」
「はい」
「出来ればもう2-3匹は欲しいですね」
「何かあんのか?」
「まぁ、ちょっと・・・」
「どうする?ダが戻ったら探しに行くか?」
「いや、そこまでじゃないです」
「まぁ、お前は住んでんだから好きな時に実験出来るわな」
「あ、確かにそうですね」
と、喋っているとダが戻って来た。
「遅くなりましたー」
「そっちじゃねぇ。勝手に動くなっつったろ」
「す、すいません・・・」
「で?何か収穫はあったのか?」
「1匹だけ見つけて」
「ほう」
「掴んだんですよ」
「ほう」
「そしたら手が痛くて」
「ほう」
「落としたら消えました」
「消えた?」
「普通、コイツってビニール袋みたいな感じじゃないですか」
「おう」
「落としたらバシャって水溜りが出来て。そのままその水も消えました」
「なるほど?」
これはもしかして・・・。
「ダ、ダ!」
「はい?」
「レベルは?」
「上がってないです」
「そうか・・・」
「ステータスも出なかったです」
「くそう・・・」
「ドロップも無かったです」
「マジかよ・・・」
「おい、俺らにも分かるように人間の言葉で話せ」
オタクを人外認定すんなっ!
「ウキー。ウキッウキッ、ウキーッ」
「なるほど。猿は置いて帰るか」
「なんでですかー。乗っただけじゃないですか」
「もういい。ダ、お前は黙ってろ。カナタちゃんと説明しろ。ちゃんとな」
「は、はい・・・」
普通にちょっとご立腹なご様子だったので真面目に説明をした。
ラノベ等で異世界転生といったジャンルがありRPGの様に経験値システムがあったり倒すとアイテムやお金をドロップしたりするのが定番だと説明をした。
「ふーん、なるほどな。お前らはここがダンジョンで異世界と繋がってると予想した訳だ」
「だったら良いなー。くらいですけど」
「現実世界で考えるとピラミッドの内部くらいしかこんなどこまでも続く石畳の通路なんて浮かばないよね」
「お?タカナシもそっち側だったか?」
「こんな不思議空間に不思議な生物ときたらゲームの中に入り込んだのかも?くらいは思いません?」
「まぁ、そうでもしないと説明つかねーしな」
「とりあえず一旦戻りません?」
「そうだな」
そうして、ダンボールに入ったスライム(仮)を抱え秘密基地まで戻ってきた。
ちなみに、帰り道はずっと先輩からダへの説教に費やされた。
「そうだ。カナタ」
「はい」
「休みの日とかにダが来ても入れんなよ」
「えっ!?」
「分かりました」
「その反応から見るに、俺らが居ない時に1人で入るつもりだったろ?」
「そ、そんな事ありませんのだ・・・」
「コイツはマジで何しでかすか分からんから絶対入れんなよ」
「はい」
「そんなーーー」
いや、今日が特別なだけで休みの日まで同僚と会いたくない。
会いたくないは語弊があるか・・・普通に連日押し掛けられると困る。こっちにやらないといけない事ややりたい事も色々あるんだから。
「コイツと一緒ならokですか?」
と、タの方を指差す。
「ダメだ」
「なんでですかー」
「さっきだってタじゃお前を制御しきれてなかっただろ」
「お、もう大丈夫です!ちゃんと言う事聞きますからっ」
「ダメだ」
「そんなぁーーー」
ダの悲痛な叫びは誰の胸にも一切響かず通路にだけ響いていた。
「ちょっと、手見せて」
「へ?はい」
「右手でスライムに触った?」
「どうだろ?たぶん」
「ちょっと皮めくれてるね」
「え?マジすか?あー、何か痛くなってきた・・・」
「何か菌でも付いてたらヤバいから手ぇ洗って来い」
「はい。洗面所お借りしまーす」
「どーぞー」
ダは小走りで洗面所へと駆けていった。
「やっぱ触るとあんま良くない感じか」
「みたいですね」
「カナタ。何か棒とかあるか?」
「あー、割り箸取って来ますね」
「頼む」
そこから男5人でスライムを突き回す小学生とやってる事が一切成長してなくも感じる調査タイムへと突入した。