13話 仲間外れ
先輩と別れ秘密基地に敷く用の絨毯を見に行ったが先輩の所為で悩み始めている。
先輩の言う通り、コンセプトを決めて秘密基地を構築してくのも良いかもしれないと思ってしまったからだ。
とはいえ、全面石造りな以上は温かみのある感じ等は無理だし。なによりも俺にそういったセンスが皆無なのが悩みのタネだ。
そして、今はまだ春だから良いが夏になれば暑く冬になれば寒くもなる。
その時にエアコンの無い秘密基地で過ごすのはかなりの苦痛だろうし。冬に石造りの部屋だとストーブくらいじゃ温まらない気がする。
春秋限定の喫煙スペースと考えるとかなりコスパが悪い。
「うーん・・・」
これといって金食い虫な趣味は無いから秘密基地作りをするくらいは問題無い。が、当然ながら無駄な物に金を注ぎ込める程裕福な訳でもない。
なので、仕事帰りに見てきた絨毯も良い感じだったけどポチるのを躊躇う。
当面はスリッパで済ませるとするか・・・。
月日は流れ・・・気付けば夏になっており。
「よっこい・・・しょっ・・・とぉ」
この秘密基地に2台目の空気清浄機が追加された。
秘密基地の利用は春秋だけかと思われたが、夏になって気付いた。
この部屋は一定の温度・湿度に保たれている。
原理は不明だが別の次元なのか別の世界なのかよく分からないどこかに繋がっていて俺が普段居る世界?からの影響はほとんど受けていないのかもしれない。
梅雨時も秘密基地はカラっとしていて部屋に戻るとジメジメしていたので、もしかしたら?と思ったが予想が的中して夏になっても秘密基地の中の温度は変わらなかった。
これにより年中利用可になり。更にはエアコン代も浮く!
その浮いたであろう金で空気清浄機(2台目)を購入した。
温度・湿度的には過ごしやすく不満は一切無いが窓も無く空気の動きが無いのだけが唯一の不満ポイントかもしれない。
仕事から帰り部屋着に着替え秘密基地に直行するとなんとなく空気の淀みを感じる。
それを緩和する為の空気清浄機だ。
換気扇を通路側に向けて設置するかも悩んだが謎の生物がその隙間から来ないとも限らないので渋々断念した。
「そういや新居はどうなった?」
と、タバコ休憩中に唐突に先輩から話を振られた。
「どうとは?」
「絨毯買ったり色々やったんだろ?」
「先輩が想像してるようなオシャレな感じにはしてないですよ?」
「なんだよー」
「あー、でも・・・」
「ん?」
「1回見に来ます?」
「お?やっぱ自慢したい出来になってんのかよ」
「いや、そういう訳じゃないんですけど・・・」
「自信は無いけど評価して欲しいって感じか?」
「なんて言ったら良いか・・・」
正直、秘密基地の事は誰にも言う気は無かった。
でも、あの快適空間を自慢したい気持ちとどこまでも続く謎の通路だったり不思議体験に誰かを巻き込みたいという気持ちが秘密にしたい気持ちを上回り始めていた。
「まぁ、ヒマな時に1回見に来て下さいよ」
「いつでも良いぞ?休日なら」
「なら、次の土日のどっちかどうですか?」
「カナタ的にはどっちのが良いとかあるか?」
「いえ?休日は基本的にヒマしてるんで」
「そっか・・・」
「いや、なんですかっ」
「侘しいなと思ってな・・・頑張れよカナタ・・・」
「いやっ、そんな哀れですかっ!?」
「まぁ、そこそこ?」
「マジか・・・」
「土曜のが俺は都合良いな」
「だったら土曜で」
「おう」
「あ、飲んだりします?」
「どうすっかな」
不意に喫煙ブースの扉が開いた。
「あ、お疲れ様でーす」
「お疲れ様です」
「おう、お疲れさん」
「お疲れ様ー」
中田と中田。通称タダがが喫煙ブースに入って来た。
「難しい顔してましたけど。何の話してたんですか?」
「んー?次の土曜にカナタん家に行く事になったんだけど。何すっかなー?って話してた」
「おー、あの新居ですね」
「お前ら2人もどうだ?引っ越し手伝ったんだし遊びに行く権利あんだろ」
何を勝手に・・・手伝って貰った恩はあるけど秘密基地の事どうするかな・・・。
「ってか、これでタカナシ誘わなかったら文句言われそうだな」
「いや、アイツは誘わなくていいですよ」
「なんでだよ。同期のクセに仲悪いのか?」
「いや、どうせ新しい彼女と居るでしょ。休日は」
「確かに・・・」
「でも、声掛けなかったら後で何か言われませんか?」
「確かにタの言う通りだな」
「いや、でも、全員で寛げるような広さじゃないのは知ってるでしょ・・・?」
「そん時はどっか店にでも行けば良いんじゃね?」
意味っ。俺ん家に来る意味っ・・・。
そうして何だかんだで昼前に俺の家に集合で一緒に昼を食べる事になった。
タカナシも予想に反して来るらしく更に狭くなってしまった。