モニュメントのバグ
「スキル」
スキル:デバッグ
選択可能スキル:レベルが足りません
モニュメントを確認したがやはり、昨日と同じだ。
少し待っていると夕焼けの雫のメンバーがやってきた。
「お待たせ、待った」
「今来たとこです」
「今日は何をやるんだ」
「モニュメントに触れて『スキル』と言ってみてください」
「私がやりまーす」
ウイさんが1番に立候補する。
俺と同じで非戦闘スキルなのだろう。
ダンジョン探索で活用出来るとはいえスキルの改善に期待しているのだろう。
「スキル、えっ」
「どうした」
「大丈夫、ちょっと待って、選択可能スキルっていうのがあるの」
啓示石を知らなくともモニュメントのスキルを使えるらしい。
「何が選べますか」
「上から再生、幻影、光、洗浄、祈祷、隠密の6つがあるね。これってどうすればいいの」
「欲しいスキルを選べばいいと思います。俺はレベル不足で選べなかったのであまりわからないですけど」
「レベルのよる恩恵って言ってたのはそういう事なのね。うーん、どれにしよう」
ウイさんは数分間悩んでいた。
夕焼けの雫のメンバーは周りで何も言わずに見守っていた。
「光にする」
ウイさんが薄らと光る。
スキルを選んだのだろう。
演出が入るのは驚きだ。
「スキルに光が増えてる。レベル表記はないね」
「もう1回やったらまた選べるんじゃないか」
「そうだね。スキル、光は無くなったけど付与っていうのが増えてる」
ユウさんがもう一度確認することを促すとまだ選べることが判明した。
レベル10毎にスキル選択が出来るのだろう。
「久場さん、何がいいと思いますか」
「えっ」
「こんなのに気づけるってことは私たちよりもスキルについて詳しんだと思うの。だから、その、アドバイスがほしいなって」
「わかりました 。少し考えさせてください」
開示石でスキルには詳細な能力があることを知っている。
開示石では自分と自分が触れているスキルがあるもののステータスを確認できる。
「手を握っていいですか」
「えっと、はい」
ウイさんが照れた様子で手を出してくれる。
その手を取り、ステータスを確認する。
レベル:25
スキル:再生[II]
-記録
-修復
-遡行
-治癒
スキル:光
-発光
-
触れた物だけでなく者まで見れるのか。
スキルの能力はある程度わかった。
光が2つしか枠がないのは初期のスキルに依存するからなのだと思う。
初期スキルのレベルの半分が適用されるのか、そのままのレベルだが、枠が半分なのか。
手を離し、ウイさんに告げる。
「再生を選ぶのがいいと思います」
「何でか聞いていいかな」
「はい、再生というスキルはオールラウンダーなスキルなのだと思います。レベルが低いのでなんとも言えませんが恐らく、レベルが上がれば他の人のスキルの再現も出来るかもしれないからです」
「他のスキルの再現」
「ここで再生を選ぶことでスキルレベル2の状態でも1.5倍のレベル3相当のものになるんじゃないかと思います。レベルのない他のスキルを選ぶより大器晩成型のスキルを強化した方がいいと思います」
「わかった。再生にする」
モニュメントから手を離し、こちらを見る。
ウイさんがスキルを選択したのだろう。
先程のような演出が起こらなかった。
発光能力があったがモニュメントのバグで基礎能力が発動したのだろうか。
「選んだのか」
「うん、選んだよ」
「ウイ、探協に戻って報告してきてくれ」
「りょーかい」
ウイさんが探協へ向かっていく。
探協の職員が来れば、俺のスキルの効果や開示石についても話さないといけないかもしれないが仕方ないだろう。
「次誰がやるかだが俺がやってもいいか」
「ええ」
「いいぜ」
シズクさんとソラが応える。
「1つ目は俺が選ぶが2つ目はアドバイスしてほしい」
「大丈夫ですよ」
「スキル。俺も6つだな。炎操作、熱操作、重量操作、筋力強化、視覚強化だ。重量操作にするか」
ユウさんは即断即決でスキルを選ぶ。
背負っている剣の重さを変えるために選んだのだろう。
「スキル。注目というのが追加されたみたいだ。アドバイスを頼む」
「はい」
差し出された手を掴みステータスを見る。
スキルを俺が決めてしまっていいのか不安になってくる。
レベル:30
スキル:炎操作[III]
-発火
-形状変化
-炎耐性
-遠隔操作
-火力強化
-炎付与
スキル:重量操作
-重量増加
-
-
バランスがいい能力だと思う。
手を離し、ユウさんに告げる。
「盾役のようなことをするなら注目がいいと思いますが熱操作がいいと思います」
「何で熱操作なんだ」
「炎操作はバランスがいいので選ばなくてもいいと思いますが熱が周りに影響があるんじゃないかと思ってパーティーを考えると熱操作で温度を一定に保つ方がいいと思います。あとは単純に炎操作と相性がいいんじゃないかなと」
「じゃあ、そうするか」
この決断力はさすがリーダーだと思う。
「3回目ができるか試すか、スキル」
ユウさんは何も言わずにモニュメントから手を離した。
ダメだったのだろう。
レベルは1から始まりだから31が次のスキル選択の条件なのかもしれない。
「次は私がやるわ。アドバイスも要らないわ」
次はシズクさんがやるらしい。
アドバイスが要らないということで気が楽だ。
「スキル。水操作の他は地形把握、回復、変更、付与、指揮ね」
変更というスキルは気になる。
何を変更するのだろう。
「回復にするわ」
シズクさんも即断即決だ。
「スキル。次は料理が出たわね。水操作にしとくわ。私も3回目を試すわね。スキル。ダメね」
「レベルだけが条件じゃないのか、10、20、40って感じで倍毎なのか」
「そうかもね。次はソラ君かしら」
「ケン、先にやっていいぞ」
「いいんっすか、やるっすよ。スキル」
次の選択はレベル40なのか他に理由があるのか。
わからないことは出てきたが次はケンゴ君がやるみたいだ。
「回避以外に歩法、透過、伝心、共有、気配操作っすね。どれがいいと思うっすか。あ」
モニュメントから手を離した。
この場合、どうなるのか。
「あーーーーーーー、スキルが増えてるっす。魔使いっていう知らないやつっす」
「さすがだな」
「離すとランダムなのか」
「もう1回やってみたら」
メンバーは辛辣である。
モニュメントから手を離すとランダムというのはどうなのだろうか。
これもバグなのか、仕様なのか。
「もう1回やるっす。次はしっかりやるっすよ。スキル。特に変わってないっすね。オススメあるっすか」
「ランダムでいいんじゃないか」
「そんなこと言わずにアドバイスしてほしいっす」
「ランダムのせいでビルドが変わったし、運に任せるのも手だと思うぞ」
「手握ったら何かわかるんすよね。やってくださいっす」
「仕方ない」
流石に可哀想に思うがステータスを見ても何かが変わるわけじゃない。
とりあえず、手を握ってみる。
レベル:26
スキル:回避[II]
-見切り
-滑り回避
-立体回避
-一時透過
スキル:魔使い[-]
-テイム
-従魔伝心
-視界共有
-モンスターハート
-召喚
-送還
ホントにランダムでいい気がする。
握った手を離し、告げる。
「ランダムがいいと思うがあえて選ぶなら歩法ですね。普通にランダムがオススメです」
「何でランダムなんっすか」
「魔使いってスキルがテイマーのスキルでわざわざ新しいスキルを選ぶ必要はないと思っただけです。もしランダムが魔物に関わるスキルが選ばれるならランダムの方が親和性があると思います」
「わかりましたっす」
ケンゴ君が手を離した。
「確認してみるっす」
再度、モニュメントに手を触れた。
「回魔っていうのが追加されたっすね。見て貰ってもいいっすか」
開示石を使っているというのに罪悪感を感じてしまう。
差し出された手をとり、ステータスをみる。
スキル:回魔
-魔素変換
-魔力操作
-魔力改変
-魔力供給
-魔石生成
-魔石合成
魔王にでもなるのかっていうくらい『魔』というものに関わっているスキルだ。
ランダムにすると魔に関わる能力が選ばれるようだ。
魔素や魔力、魔石といった新しい概念がわかったがどんなものなのだろうか。
「魔力に関わるスキルみたいですね。魔力を使って色んなことが出来るんだと思います。昨日、蜘蛛の魔物と戦った時に糸を何もないところから出していましたけどそんな感じで糸でも他の火とかでも扱えるようになるんじゃないかなと思います」
「魔法使いみたいな感じっすかね」
「そんな感じだと思います。詳しくはわかんないから自分で確かめてみてください」
「はいっす」
ケンゴ君のスキル選びも終わり残すはソラだけになった。
「次は俺だが久場、お前はスキルについてどれくらい知ってるんだ」