表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/25

実戦のバグ

「これより初心者講習を再開致します。では、夕焼けの雫の皆さんよろしくお願いします」


説明担当の男性が夕焼けの雫紹介し、退室していく。

1歩前に出た男性はリーダーの穂村ユウ、後ろにい4人おり左から赤城シズク、渡井ウイ、上野ソラ、多磨ケンゴの計5人が夕焼けの雫のメンバーだ。


「ここからは探索者パーティー夕焼けの雫が担当させていただきます。まずは冊子の50ページ目を開いてください。探索者の活動について説明をしていきます」


30分ほど探索者の活動についての説明を受けた。

まとめるとこんな感じだ。

・ダンジョンに1人で潜ることをソロといい、複数人で潜ることをパーティーと呼ぶ

・討伐、採取、護衛、その他の4つに大きく分類される

・討伐はボス部屋と呼ばれる強敵がいる際に招集されたり、凶暴な魔物や魔物素材が必要な場合に依頼が出される

・採取はダンジョン内の資源を採ることを目的として、工業用や研究用の依頼が出される

・護衛はダンジョン内の研究を行う研究者の護衛や採取専門の探索者パーティーの護衛などが依頼として出される

・その他は講習や治安維持など様々な案件が探協から依頼されるらしい


「ダンジョンに向かう前に武器を選んでください」


ソラともう1人の男性が武器の入った箱を持って入ってくる。

剣や槍、金属の棒などが入っている箱とグローブやプロテクター、ヘルメットが入っている箱が置かれる。


「初めてで剣や槍は危険なので剣道などの経験がなければこの棒をお選びください」


3人が棒を持つ。

バットの様に持ち手には布が巻かれており、持ちやすくなっている。


「ではこの防具をつけてついてきてください」


プロテクターとヘルメットを装着し、夕焼けの雫について行く。

受付前を通り、改札のような入場ゲートに着いた。


「では探索者カードをかざして入ってください」


ピッ


ユウさんがゲートを通る。


ブー


シズクさんが通ろうとするとブザーが鳴った。

改札のようにゲートが閉じる。


「申請機で受付をしない場合はこのようにブザーが鳴りますのでしっかり申請してください。今回は初心者講習として申請が行われているので入って来てください」


ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ ピッ


問題なく全員入ることが出来た。

シズクさんも申請せずに入れているところを見ると講師に設定されると一度はエラーが鳴る仕様なのだろう。

少し歩くと外に繋がる道が見えてくる。


「これが東京ダンジョンです。東京は塔型ですが場所によって違う形のダンジョンもあります。日本では病院が隣接しているので怪我をした際はあちらの病院側から直接病院に行くことが出来ます」


舗装された道がダンジョンまで続いているが途中で分岐しており、病院の裏口に続いていた。

ダンジョンの入口はバスを横にしたくらい広く人を捕食しているようにも見える。


「このモニュメントを触ることで鑑定石と同じようにステータスを見ることが出来ます」


開示石に触れつつ、モニュメントに触れてみる。


啓示石

スキル1:啓示[-]

-ステータス表示

-

-

スキル2:拡張[-]

-スキル

-

-

-


違うじゃないか。

開示石と同じで名前が違っていた。

2つのスキルを持っているのは初めて見た。

枕と同じでスキルに空欄があるため、デバッグで解放出来るものがあるのだろう。

後で確認しないとな。


「スキル」


小さく呟く。


スキル:デバッグ

選択可能スキル:レベルが足りません


「レベル制なのか」

「おーい、どうした」


モニュメントの前で止まっていた俺にソラが話しかけてきた。


「いや、何でもない」

「遅れるなよ」


ソラに言われ遅れていることに気づいた。

先頭に追いつくとコンビニの出入口くらいの大きさの扉を説明しているところだった。


「ダンジョンを攻略すると使えるようになる部屋に繋がる扉です。好きな階層に転移出来るらしいですがこの通り未だに攻略されていません」


扉はなんとも言えない不思議な素材で出来ていた。

この扉も調べてみる。


資格の扉

スキル:資格

-到達階層検査

-


やはりこの扉もスキルがあるようだ。

また今度見ることにしよう。


「次は魔物との戦いについて説明します。このダンジョンでは基本的に1層から10層まで同じ魔物が出ます。上に行くほど大きな魔物が多くなりますが上手く戦えないうちは大きな魔物からは逃げてください」


ワオーン


通路の奥から鳴き声が聞こえてくる。


「今から5層付近に多くいるブラックドッグと戦います。見ていてください」


奥から男性が走ってくる。

その後ろを腰ほどの大きさの黒い犬が追っている。

牙を剥き出しにして迫ってくる姿は恐怖を覚える。


「頼んます」

「おう」


ユウさんと男性が声を掛け合い、交代するように位置が変わる。

腰につけている剣は抜かずに講習で使用している棒を持って立ち向かう。


「ハッ」

キャウン


足に向かって棒を振りかぶり、当てた。

続けざまに後ろ足へ攻撃を当てるとブラックドッグは倒れた。

倒れたブラックドッグの頭部に向けて棒を振り下ろす。

頭部は弾け、初めから何もなかったかのように消えていった。

10秒ほどの短い時間の出来事だった。


「このように足を狙って倒すのが定石です。そして、魔物は倒すと消えてなくなります。今回はありませんでしたが魔物の素材として毛皮が残ったり牙が残ったりする時がありますので素材が残った場合は回収しましょう」


多分、こんなことせずに一撃で倒せるのだろうが戦闘を見せてくれたのだろう。

ただ、説明を聞いてやってることはわかったが早すぎて何もわからなかった。


「もう一度、魔物を連れてきて貰うので3人で倒してみましょう」


ユウさんがそういうと通路の奥から男性が走ってくる。

その後ろから膝に届きそうな大きさの蜘蛛が追ってきている。


「3人で頑張ってください」


俺たち3人は先頭に立たされ、武器を握る。


「任せますね」


まず動いたのは右端の男性だった。


「うわぁぁぁ」


左足を狙った攻撃だった。

蜘蛛は跳んで躱すが後ろ足に掠ったらしく足が折れる。

次に動いたのは真ん中にいた男性だ。

振り下ろすような攻撃を行う。

蜘蛛は糸を吐き出し、武器を逸らした。

俺は遅れを取り戻すかのように動き、本体を目掛けてスイングする。

右足を2本壊すことに成功する。


「うおぉぉぉ」


蜘蛛の後ろから初めに動いた男性が攻撃を行い、蜘蛛に直撃する。


「やったぁぁぁ」

「昆虫の魔物はしぶといので消えるまでしっかりと攻撃してください」


男性が喜ぶのと同時にユウさんから注意が飛ぶ。

ユウさんの注意通りまだ消えていない。

蜘蛛の糸が飛んでいき、男性の体を襲う。

糸に押され倒れ込むと糸が床にくっつきその場に固定される。

蜘蛛が3本の足を器用に使い男性に身体を向ける。

そのまま襲いかかろうとしているのだろう。

俺は咄嗟に動けなかった。


グチャ


蜘蛛の糸が絡まった棒を男性が叩きつけていた。

蜘蛛の魔物と糸が消えていく。


「ぶちょおお、助かりました」

「間に合って良かった」


やはり2人は知り合いだったらしい。

1分も経っていなかったが数十分の様に感じた戦いが終わったと実感が湧いてくる。


「初戦闘、お疲れ様です。おや、蜘蛛の牙ですね。魔物素材です。やりましたね」

「おぉ、これが素材なのですね」

「君が持っていなさい」

「はい」


親指程の大きさの牙が魔物素材の様だ。

素材は一番初めに飛び出した男性が拾った。

MVPはこの男性だろう。


「これで講習内容は大体終わりです。ダンジョンの中は危ないので外に出ましょう」


ユウさんの指示に従いダンジョンを抜ける。

入口に到着すると生きた心地がした。


「では鑑定石でレベルを確認してみてください」


ポケットからカードを取り出し、触れる。


レベル:1

スキル:デバッグ[V]

-バグ感知

-バグ走査

-バグ修正

-遠隔走査

-並列走査

-高速走査

-感知拡張

-走査強化

-

-


開示石

スキル:開示[-]

-ステータス表示

-範囲拡張


何も変わってなかった。


「やりました。レベル2になってます」

「俺もだ。やったな」

「すみません。レベル上がってなかったみたいです」


居た堪れない空気が漂う。


「あ、こいつのことはいいんで進めちゃってください」

「ソラ君、何言ってるんだ」

「リーダー、いいんで進めてください」


ソラが話を進めようとしているみたいだ。

訝しげな目を向けつつ話を進める。


「ごほん、では、換金して会議室へ向かうとしましょう」


蜘蛛の牙は1000円となった。

初の討伐ということで蜘蛛の牙を買い戻し大切に持っておくそうだ。

その後、ゲートを通って会議室へと向かう。

会議室には説明担当の男性が待っており、机の上には初心者マークの入った腕章が置かれていた。


「皆さんお疲れ様です。机の上にある腕章は初心者講習の記念品です。レベル5までは着用義務がありますがそれ以降は家に飾るなどし初心を思い出してください。今日の講習は以上です」


受講者2人組は席を立って会議室を出ていった。


「ソラ、終わったら連絡しろよ」


俺も一言残し、会議室を後にする。

レベルが上がることが前提の講習だったのだろうが上がらなかった。

なぜなのだろうか。


この(バグ)もソラが知っているのだろう。

買い物をした後にソラを問いただすとしよう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ