表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

初心者のバグ

家に着くと探協で貰ったものを確認する。

探索者カードはシンプルな白を基調としたカードだった。

白いカードの表には名前や住所、IDといった個人情報が書かれており、裏にはカードの使用方法が簡単に書かれている。

白いカードの一部が黒くなっており、裏表を見ると同じ位置にあるので何かが埋め込まれているのだと思う。


レベル:1

スキル:デバッグ[Ⅳ]


黒い部分に触れると鑑定石で見た表示が浮かぶ。

探索者カードには鑑定石が埋め込まれているようだ。

まあ、発行費用がそこそこかかったので何かあると思ったが便利なだけのカードではないようだ。

探協でも感じていたが鑑定石に触る度に何か違和感がある。


レベル:1

スキル:デバッグ[Ⅳ]


何度も触るが違和感が消えない。

慣れていないだけなのかと思ったが既視感がある気がする。

気にしてもわからないので放置して寝る。

明日、先輩に聞いてみよう。




「おはようございます」

「おう、おはよう。昨日はどうだった」

「無事にカードの作成と講習の予約は出来ました」

「カード費用と講習費用の半額分は補助金が出るから申請しとけよ。うちの数少ない福利厚生だからな」

「ありがとうございます」


先輩に挨拶をすませ、PCを起動させる。

そのまま申請を行うと始業の鳩時計が鳴った。

何か忘れている気がするがどうでもいいことだったと思う。

いつも通り、バグの調査やシステムの監視を行っていると定時を告げる鳩時計が鳴る。


「久場くん、大丈夫と思うけど、ステータスの確認はしたかい」

「しましたよ。カードに付いてるなんて便利ですね」


思い出した。

カードに鑑定石が付いているのは便利なのだがそんなに使わないから忘れていた。

思い出したのは鑑定石を使うと違和感があることだ。


「最近のカードは鑑定石が付いているのか。カードの更新は大きな変更がある時か功績を残した時くらいだからなぁ」

「新人の特権ってやつですね。それでこの鑑定石って使うと違和感ありませんか」


財布からカードを取り出し、社長に触れてもらう。


「うん、特に違和感なんてないし、久しぶりに確認したから違和感があるってだけじゃないのかい」

「そうかもです。ありがとうございました。今日はあがりますね」

「ああ、お疲れ様」

「お疲れ様です」


軽く挨拶をした後に荷物をまとめていく。

特に予定もないので寄り道せず家に帰るのだった。

家に着くと鑑定石を取り出し、つつきながら考える。

社長は特に違和感を感じていなかった。

しかし、何度触っても違和感が消えないことを考えると慣れのせいではないと思う。


「デバッグ」


スキルが使われている感覚がある。

正常な状態ではスキルを使ってもすぐに停止するが今回はまだ使われている。

風呂に入ってもご飯を食べても終わる気配がない。

デバッグは触れているものや見えているものに対して使用出来るスキルだが一度発動すればその場から離れても効果が続くのだ。

触れていない状態だと遅くはなるが家の中を移動する程度であれば極端に遅くなるということはない。


「仕方ないか」


鑑定石に触れ、目を閉じる。

対象に触れている状態で目を閉じ、集中するとデバッグのパフォーマンスは最大になるが疲れるのだ。

仕事でもここまですることは稀なのだが今日はもう寝るだけなので頑張ってみる。


「あーーーー、無理だ」


時計を見るともう少しで天辺を超えそうな時間になっていた。

3時間以上かかっても出来ないなら今日はもう諦めよう。

ベッドに寝転びカードをイジる。

2年前はこんな違和感を感じなかったが何が原因なのだろう。

やはり、スキルレベルが上がったからだろうか。

考えても仕方ないか、もう寝よう。


ピピッピピッ


「まだ終わらないか」


一晩経っても終わらないってヤバいな。

昨年の大規模システムのデバッグでは2週間ほどかかったが基本的には数日で終わるし、集中すれば1日で終わることが多い。


そんなこんなで寝る前に集中してデバッグを進めていたが2月が終わり、3月になってしまった。

3月1日は火曜なので明日が講習の予約日だ。

今日も鳩時計が鳴り、業務を終わらせる。


「明日からのダンジョン休み楽しめよ」

「休みじゃないですって、怪我しないように頑張ってきます」

「ゆっくりやってこい」


先輩からの応援を受け、明日へのやる気を高めていく。

初心者講習は午前中にダンジョンについての説明、午後に武器の使い方や探索についての訓練を行い、最後に少しだけダンジョンに潜るという流れと聞いている。

武器や防具は貸し出しがあるので準備は必要ないが自前の装備がある場合は使ってもいいことになっている。

俺の場合はデバッグという非戦闘スキルのため、自前の装備は持っていないので関係ない。


「あ」

「どうした。申請忘れたか」

「プライベートでやってたデバッグが終わったみたいです」

「ほうほう、何のデバッグをやったんだ」

「鑑定石です。やってみたらできちゃったみたいです」


財布からカードを取り出して何が変わったか眺めてみる。

特に見た目は変わっていないみたいだ。


「じゃあ、触ってみますね」

「おう」


恐る恐る鑑定石に触れてみる。


レベル:1

スキル:デバッグ[V]

-バグ感知

-バグ走査

-バグ修正

-遠隔走査

-並列走査

-高速走査

-感知拡張

-走査強化

-

-


開示石

スキル:開示[-]

-ステータス表示

-範囲拡張


表示が増えてる。

デバッグのレベルが上がっている。

スキルのレベルごとに2つの能力が増えるのだろうか。

それよりも開示石というのは鑑定石のことだろうか。

道具にもステータスがあるということなのか。


「何か変わったことはあったか」

「色々、見れる様になってます。どうぞ」


先輩にカードを渡して反応をみてみる。


「ふむふむ、ホントに色々見れるな。触れているアイテムの情報も見れるのか」

「スキルで使える能力も見れるっぽいですしヤバいですよね」

「世紀の大発見ってやつだな。とりあえず、他のやつの意見も聞くか」


先輩が社内に残っているメンバーを呼び、状況を説明してくれる。


「鑑定石にスキルを使うっつうとんでもないことをして色んなステータスを見れる様になったみたいだ」


ダンジョンガチ勢のメンバーは定時後すぐに出ていくので今残っているメンバーはエンジョイ勢や俺のような潜ったことの無いメンバーだ。

ガチ勢ではないが研究者気質のメンバーが多く議論が進んでいる。


出てきた意見をまとめると以下のようだ。

・鑑定石と呼んでいる物は開示石という名称

・デバッグをかけた開示石のみスキルの詳細や持っている物のステータスを見れる

・スキルにはスキルレベル×2の能力が発生する

・ダンジョン産の物にはスキルがある

・デバックをかけていない物はスキルが制限されている?


「このことはとりあえず7月まで社外秘として扱うことにする」


社長の一言で7月までは社外秘ということになった。

また、名称も情報を公開するまでは鑑定石で通すようだ。

怒濤の勢いだったが続きはガチ勢がいる時に行うということで解散することになった。

明日からのダンジョン休みに備えてしっかり休んでおくように言われまっすぐに帰宅する。


ダンジョン産のアイテムにスキルを使うということを驚かれ、発見の多い1日だった。

明日の初のダンジョンはどのようなことが起きるのだろうか。

楽しみと不安が入り交じりつつ眠りにつくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ