バグの戦い
ダンジョンにやってきた。
3度目の挑戦だ。
2日前から毎日来ているがダンジョンに潜るためだけに来たのは初めてだ。
マップを開き、マップの端を目指す。
変鉄を蜘蛛の脚の様に展開する。
徐々に身体を持ち上げてみる。
脚を動かし進んでいく。
全速疾走くらいの速度をデメリットなく出せている。
ブラックドッグを運んだ時の様にタイヤを動かす機構にすれば速さは出せるかもしれない。
しかし、制御をすることを考えれば機構はシンプルにイメージしやすい方がやりやすい。
「結界」
浮いた状態で結界を発動してもその場に固定されることなく進むことが出来た。
通常の結界と変形させた結界は仕様が違うのだろうか。
「形状変化」
特に変形出来ない。
部屋で試した時は結界の切り替えは試していなかったが地上でも出来ないと思う。
形状の変化は出来ないがこれはこれで安全だしいいと思う。
1度止まりマップを確認すると結構進んでいた。
もう少しで部屋のような場所に出るらしい。
その部屋を進むと床が抜けた通路に出る、そこが今回目指す場所だ。
もう1度結界を張り進んでいく。
部屋に着き、まず見えたのは緑の塊だった。
岩石のようなものに手足が生えている。
ロックタートルと呼ばれる魔物だと思うがこんなに苔むした魔物もいるんだな。
事前に見ていた資料では1m程の大きさの岩を背負っている様な亀ということだったのだが1.5m程の大きさの亀だった。
通路から写真を撮っておく、カメラ目線だ。
部屋入る直前にロックタートルを囲む形で通路から通路へドーナッツ状に結界を張る。
何でもありなのかこんな形状も出来た。
結界内を一周しつつ動画を撮影する。
新種やユニークな種を報告するだけでも報酬が出るシステムがあるらしく、余裕があれば撮影しておくといいらしい。
動物園の陸亀を見ている気分になってくる。
ロックタートルがおもむろに口を開く。
口の中に水が溜まっていき、噴出する。
結界に当たり、ヒビが入る。
走って射線から離れる様に移動する。
追尾はしてこなかったが結界のヒビが大きくなっている。
変鉄を大量に呼び出し、結界を解除する。
「行け」
変鉄を脚に絡め拘束する。
口も開けないように拘束しておく。
変鉄を身にまとい近づいていく。
そっと甲羅に触れた。
レベル:5
スキル:水操作[III]
-生成
-変形
-射出
-威力強化
-貫通力強化
-ブレス化
レベルは低いがスキルレベルは高い。
さっきの攻撃はブレス化というやつだろう。
空中に水の球が浮かび始める。
結界を張り、結界を変鉄のドームで包み備える。
ボゴッ
いたる所でドームが凹みだす。
ドームを補強しつつ、耐える続けると攻撃が止んだ。
変鉄で剣を作り、首へ向かい振り下ろす。
スパン
首が切り下ろされ、血が溢れる。
少しするとロックタートルの体が消えていく。
変鉄を剣状にし、振動させることで切れ味を出してみたのだが剣を使ったことの無い俺でも綺麗に切断することが出来た。
首が甲羅に入らないように口を拘束した時に首も拘束していてよかった。
ロックタートルが消えた場所には青に緑が混ざった様な球が残されていた。
ハートの結晶
スキル:魔岩亀の器[I]
-水操作[III]
呼び出すことが出来るようになれば心強い仲間になるんじゃないだろうか。
ブラックドッグと同様に従魔の腕輪のデバック待ちだが楽しみだ。
ついにレベルも上がった。
3日目にしてやっとレベルアップだ。
レベル:2
1しか上がっていないがそれでもレベルアップをすることが出来た。
5倍もレベル差があったことを考えるともう少し上がって欲しかったが仕方ないだろう。
スキルレベル5のせいなのか、成長の指輪のおかげでレベルアップ出来たのか分からない。
だが、強度が足りてなかったら死んでいたと考えると割に合わない気もする。
魔装具を充実させていかなければいつか取り返しのつかない状態になるかもしれない。
反省は帰って考えよう。
ハートの結晶を回収し、先に進む。
マップにあった通り、通路の穴が空いてあり、底が見えない。
変鉄で蓋をし、進んでいく。
ところどころで穴が空いている通路があるがどんどん進む。
マップの未開地区が更新されていく。
T字路や十字路は通らない道も少しだけマッピングして進んでいく。
全然、魔物に出会わないがどうなっているのだろう。
壁を這える魔物や飛べる魔物は確認されているがなぜ出ないのだろう。
そうこうしていると行き止まりに着いた。
行き止まりには宝箱が置いてあった。
単純な木箱で1Lペットボトルくらいの大きさだろうか。
レベル:10
スキル:罠[II]
スキル:アイテム[I]
これも魔物なのか。
レベルが高い上にスキルを2つも所持している。
スキルの能力が見れないのはどうしてなのだろうか。
変鉄を使い宝箱を持ち上げる。
簡単に持ち上げることが出来たが特に何もしてこなかった。
回収しようとしたが回収出来なかったので変鉄で包み持って帰ろう。
今回の目的である収納の指輪の整理を行おう。
土をひとつ出してみる。
バケツ1杯分の土が出てきた。
変鉄でふるいにかけながら土を穴へと落としていく。
どんどんと土を出していく。
時々、浴槽を埋めれそうな量の土が出てくるが特に問題も起きずに処理が出来ている。
ミミズや小さな虫が出てくるが一緒に穴に落としていく。
生き物も収納出来る様だが宝箱が入らなかったことを考えると大きさに制限があるのだろうか。
土を全て出し終わった。
木片やペットボトルのキャップの様な小物が引っかかっていたがゴミとしてまとめて収納する。
腐った食べ物はそのまま穴へと落としたが大丈夫だろう。
変鉄で道を作りつつ引き返していく。
分岐路が見えて来た。
マップを埋めるためにそのまま出口とは違う道を進んだがスグに行き止まりだった。
今日の探索を切り上げ、来た道を引き返し、入口まで戻ってきた。
何も出会うことなく入口まで戻れてしまった。
こんなものなのだろうか。
変鉄で包んでいた宝箱を取り出し、慎重に蓋を開ける。
ネックレスのようなものが入っていた。
チェーンにレンズの様なものが付いている。
遠見の首飾り
スキル:望遠
-拡大
-
どうなのだろうか。
偵察には使えると思うがダンジョン内は入り込みすぎてあまり意味はない気もする。
残った宝箱を変鉄を使い壊す。
溶ける様に消えていき灰色の魔球が残った。
ハートの結晶
スキル:誘箱の器[II]
-罠[II]
-アイテム[I]
魔球が残りやすいのだろうか。
買取受付に行きドロップしたものを提出する。
魔球は買い戻し、首飾りは買い取ってもらった。
ピッという音がし、カードに振り込まれる。
受付から離れようとすると少し引き止められた。
「昨日ぶりです」
誰だろう。
偉い人が集まっていたあの場にいたということだと思うのだが。
「えっと、何かありましたか」
「指名依頼の件です。奥についてきてください」
そのまま後ろに着いていくと倉庫に辿りついた。
階段を下っていたので地下に素材を保管しているのだろう。
色んな素材が置かれており、何人か従業員らしき人がいる。
目の前の棚に黒い塊が入った箱が3箱置かれていた。
「加工前の鑑定石を用意したので持ち帰れるだけ持ち帰ってください。今用意出来るものを出していますが常駐依頼として発注しているので入荷しましたら今回の様に持って帰ってもらう予定になっています」
「この箱を貰っていきますね」
意外と重い。
「重いですね」
「それぞれ10kgずつ入ってますからね。台車使いますか。台車ごと3箱持って帰れますよ」
「一気に出来ないので3箱持って帰ってもスグに納品出来ないですよ。収納の指輪っていうものを持っているので収納してもいいですか」
「あの欠陥品ですか。まさか、取り出しも出来る様になったのですか」
「そんな感じです」
探幻堂と探協は繋がっていると言っていたし、取り出すための実験をしていたりして知っていたのだろう。
1箱収納し取り出してみせる。
「凄いですね。買取価格は1億円ですがやっぱり手放せないですかね」
「今はこのまま使いたいですね」
「ですよね。探幻堂へ連絡しますけどよろしいですよね」
「大丈夫です。では、開示石が出来たら持ってきますね」
収納の指輪が使える様になったことを連絡するようだ。
隠して使わなくて済むと考えれば安いものだと思う。
何か類似品や魔装具の依頼が来たりするかもしれない。
何かあればその時はその時だ。
地上に戻り、窓口でカードを読み取り、帰宅する。
戦いも上手くいったし、初の収入も入った。
余裕が出来たら魔装具を買いにいきたいな。