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繋がる炎

夕焼けの雫と久場アキが出会ったのは初心者講習でのことだった。

リーダーになってここまで衝撃的な展開が起きたのは久しぶりだろう。

ソラが暴走し、契約違反であるレベル1の状態での初心者講習の終了。

その後、会食をしたがスキルレベル5ということを聞かされ、驚愕したものだ。

そして、今日、スキルの拡張というレベルの表示以上の出来事に遭遇した。

いや、スキルについての相談があると聞いた時から色々と想像していた。

スキル拡張後は知っていることを聞いて納得した。

スキルレベルが3や4になると道具にも影響を与えるようになる。

さすがにレベル5ともなると当然の様にスキルを

道具に駆使出来るのだろう。


そして今、トップパーティー『探幻』を前にし、久場君の到着を待っている。

探幻は6人パーティーと言われているがここには1人しかいない。

今、地上にいるもう1人のメンバーが呼びに行っているそうだ。

40歳くらいだろうか、緑色の髪を短く揃え、サングラスで目が隠れている。

甚平のようなスーツのようななんとも言えないものに身を包み、手にはいくつかの指輪をはめ、杖を持っている。


ウイが探協に戻り連絡すると東京支部の統括に話がいき、探幻が出てきたらしい。

統括と探幻、各部門の部門長クラスが集まるという事態まで発展していた。

俺たちが戻り詳細を説明すると意見を求めるために久場君を待つということになったのだ。

今回の件は3年前に米軍が初級ダンジョンを攻略し、レベルが開放されたことと同等かそれ以上の事態なので仕方ないだろう。


「お待たせしました」


20代くらいだろうかカッターシャツにパンツを着こなしている女性が扉を開け入ってきた。

その後ろにラフな格好をしている久場君が入ってくる。

この女性がもう1人の探幻なのだろう。

ブロンドの髪を後ろで一つにまとめており、ぱっちりとした瞳で可愛らしい顔立ちだが、強者特有の空気感が違和感でしかない、そんな雰囲気の女性だ。


「では開示石とはどの様なものなのでしょうか」


軽く自己紹介をした後、統括が核心を聞いた。

俺も聞いたが詳しい内容ははぐらかされたのだ。

だが、統括は権限を持ち出して聞いていた。


「ちょっとだけいいですか」


スマホを取り出し、許可を求めてきた。

統括が許可を出すとその場で電話をかけ、社長と呼ばれる人と話す。


「今、探協にいるんですけど、探協の偉い人に開示石について聞かれてるんですけど言っちゃって大丈夫ですか」


フランクな感じで話しているが恐らく機密情報なのだろう。

社長からの許可が出たみたいだ。


「開示石ってこれなんです」


久場君はポケットから探索者カードを取り出した。

話を聞くと鑑定石にスキルを使うと実は開示石という名称で開示石だったらしい。

開示石は使用している状態で他人に触れたモノのステータスを見ることが出来、ダンジョンのモニュメントにもステータスがあることがわかったのだそうだ。

そこからは俺たちが知っての通りらしい。

試しに久場君のステータスを見せてもらったのだが少し聞いていたものとは違っていた。


レベル:1

スキル:デバッグ[V]

-バグ感知

-バグ走査

-バグ修正

-遠隔走査

-並列走査

-高速走査


スキルの能力は10個あるはずなのだが、6つしか見れない。

ここで自身のスキルレベルに依存した情報しか見れないことが判明した。

探協はスキル拡張を行う際の確認や探索者管理のために使いたかったらしいがレベル依存であれば難しいだろう。


「登録の時に使った読み取り機なら読み取れるんじゃないですか」


その言葉に探索者管理部門の部門長が会議室から駆け出していった。

恐らく、読み取り機を取りに行ったのだろう。

今はそんなのあるのかと驚きつつも話は進む。


「言い出しにくいんですけど、スキルのおかげで能力が開放されたので今持ってこられても確かめられないと思うんですよね」

「時間がかかるのか」

「これは1週間近くかかりましたよ」


統括の呟きにも律儀に反応を返していた。

スキルを使い一時的に道具に影響を与えるのではなく、長時間影響を与え続けることで定着させているのだろう。

俺の持つスキルでは剣に炎を纏わせることが出来るが効果は纏わせている時間だけだ。

しかし、非戦闘スキルの場合は影響が残り続けるのか。


「依頼という形でお願い出来ますか」

「余裕があるときでいいなら出来ますけど、急ぎとかなら厳しいかもしれません」

「では、指名依頼を出しておきます」


指名依頼は一定以上の信頼できる探索者に発行される依頼で指定された個人やパーティーのみが受けることが出来る依頼だ。

通常の依頼よりも報酬がいいこともそうだが信用度やランクの格付けが上がりやすいとも言われている。

ランクは一般探索者、初級探索者、中級探索者、上級探索者でランク分けがされている。

信用度は確認できないが受付や探索者アプリでランクの確認を行うことが出来る

探幻は上級探索者、夕焼けの雫は中級探索者に分類されている。

俺達はまだ指名依頼を受けたことはない、そのくらい珍しいことなのだ。


そんな風に話を聞いていると出ていった部門長が戻ってきた。

手にカゴを持ち、カゴの中に多くの機材が入っている。

ノートPCをカゴから取り出し、読み取り機と繋ぐ。


「さぁ、よろしくお願いします」


部門長の言葉に空気が凍る。

ついでに熱操作で室温を1℃程下げてみる。


「ごほん、そのな、スキルを使っても効果が出るまで時間がかかるらしいのだ。指名依頼にて開示石の作成を行ってもらうことになった。今すぐには出来ないということだ」

「そんな」


探索者管理部門の部門長は絶望したような状態になっている。


「いえ、少しお待ちください」


開発部門の部門長が声をあげる。

突然、工具を取り出し、読み取り機を分解し始める。

カバーが外れ、基盤が見える。


「ここにカードをおいて動作確認くらいは出来るのではないでしょうか」


鑑定石を取り外し、そう言うと統括を見る。


「そういうことです。頼めますか」

「わかりました」


統括からの言葉をうけ、久場君はカードを渡す。

カードを受け取った開発部門の部門長が機材に設置した。

そのまま、開示石を触り、読み取りを始める。


「どうだ」

「自分でもスキルが確認出来ますし、読み取りも成功しています。スキルレベルの表記はありますが能力表示はないのでそこは要検証ということでしょう」


誰ともなく拍手が起こった。


「久場君、指名依頼の件、よろしくお願いします」

「はい」


統括が再度念押しし、解散ということになった。

これから各部門への指示を出すのだろう。

久場君は探幻の2人にどこかへ連れていかれていた。

そのまま、俺たちも解散するのだった。

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