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VSジャッカル

 次の日の午前。みんなで狩りへ行ったが、残念なことに今日は鹿が見つからなかった。


 兎や狸、狐は獲れだけど、獲物の量は昨日よりも少ない。


 今日はアオイに、お腹いっぱいご飯を食べさせてあげられないな。


 俺はちょっと肩を落とした。


 午後になって集落へ帰る途中、メンバーの一部が水を欲しがったので、昨日とは違うルートを通った。


 森と集落の間には、背の高い草が生えた地帯がある。俺よりも背の高い草むらのなかを、リーダーに率いられて進むと、大きな湖に出た。


「よし、一度ここで休憩だ。しっかり水飲んどけよ」


 リーダーの指示通り、俺らは背中に担いだ獲物を下ろすと、みんなで湖の水を飲み始めた。ここの湖は安全だが、集落の長老によれば、世の中には危険な生物の住む湖もあるらしい。


 リーダーを含めて数人の大人たちは辺りを警戒している。


 この湖にも危険な動物がいるのかな?


 俺は湖に顔をつっこみ、十分に水を吞むと、槍の点検をする。石槍は、鋭く削った石を丈夫な木の棒にヒモで縛りつけたものだ。


 ヒモが弛んでいないか、石が欠けていないかは重要だ。俺が自身の槍の健康ぶりに満足すると、突然悲鳴があがった。


 急いで槍を構えて立ちあがる。


 草むらから現れたのだろう。


 大人たちの前に、三匹のジャッカルがいた。


 何度か遠目に見たことがある。狐に似ているが、狐よりも大きくて、凶暴そうな面構えだった。


「マズイ、全員逃げろ!」


 リーダーの指示で、大人たちは逃げ出した。俺と同年代の奴も逃げ出して、体力に自信のある奴は下ろした荷物、今日の獲物をしっかりと脇に抱えてから逃げ出した。


 肉食動物で、俺らが獲物にしているのはせいぜい狐まで。


 ジャッカルは危険だから、基本的には見つけ次第逃げるよう言われている。


 なのに、俺の頭に最初に浮かんだのは逃亡じゃなかった。


 こいつら、牡鹿よりも強いのか?


 チリチリと、昨日の興奮が蘇る。


 ジャッカルを倒せば、俺はもっと強くなれる。そんな予感を穂先に乗せて、俺は槍を握りこんだ。


 三匹のジャッカルが一度吼え、俺に跳びかかって来た。


 俺は最初の一突きで一匹のジャッカルを撃退。素早くしゃがんで、残る二匹をかわした。


 最初に一匹は仕留めたと思ったが、致命傷ではないらしい。


 肩から血を流しながらも起き上がり、吼えて威嚇してくる。


「マジかよ」


 心地よい緊張感を吞みこんで、俺は両手で槍を握り直そうとした。


 殺気を感じて振り返る。


 背後から迫るジャッカルに俺は戦慄。


 これが多対一だ。


 敵は、常に視界にいるとは限らない。


 俺は反射的に、無我夢中で槍の穂先を向けるが間に合わないだろう。何せ俺は槍を握り直そうとして指を緩め、ちゃんと槍を握れていないのだから。


 冷たい死の風に首筋をなでられ、俺の槍がジャッカルの腹を刺し貫いた。


「え?」

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