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野望

 日が沈むと、俺は毛皮の寝床で横になっていた。右隣にアオイ、その隣におばさん、おじさんという順で、ちょうど男ふたりで女ふたりを挟む形になっている。


 俺はなかなか眠れなかった。

 昼間の興奮が抜けないんじゃない。

 我が家の食糧事情について考えているのだ。

 我が家に限らず、この集落の連中は、基本的にお腹がすいている。

 女たちが森で集める木の実や茸には限りがある。

 男たちの狩りが上手くいって、特別大猟だったときや、大物が獲れた日はお腹いっぱいになれるが、そんな日は稀だ。


 この村の人口は一五七人。

 ネズミやリスじゃあ腹はいっぱいにならない。

 ウサギや狸でも、三人から五人で食べればなくなってしまう。

 集落のみんなが毎日お腹いっぱいご飯を食べる。それは流石に夢物語だ。


 でも、この家だけなら……


 食糧分配のルールを簡単に説明する。まず、集団で狩りを行った場合、獲物は集落全体で分ける。それでも、獲物をしとめた本人は、多めに肉を貰える。それは今日、俺が鹿の足を家に持ち帰ったことを見ればわかるだろう。


 ただし、集団の狩りに参加せず、一人で狩りをした場合は、全ての肉がその人個人のものになる。 


 首を倒して、俺はアオイの寝顔を見つめた。


 子供の頃からアオイだけでなく、俺らガキ組はいつもお腹をすかせて、集落のすぐ近くで食べられる草を探したりした。それでも足りないけれど、まだ狩りには行けない俺にはどうしようもなかった。


 でもこれからは、俺の頑張り次第で飯の量は変えられる。


 俺の働き次第で、アオイをお腹いっぱい食べさせてあげられる。


 おじさんとおばさんも喜ばせられる。


 より多くの肉を得るには、俺が単独で獲物を捕まえなくてはいけない。


 今日の牡鹿は、みんなで狩りをしている時に獲ったものだしな。


 実際、俺ひとりなら、牡鹿と牝鹿を同時に相手にしなくてはならなかったかもしれない。そうなれば、俺に勝ち目があったとは思えない。


 明日もたくさん獲物が獲れたらいいな。あと、早く単独で獲物が獲れるだけ強くなりたいな。そう思いながら、俺は眠りについた。

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