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 俺は、こいつよりも強い。


 俺と同じ初狩り組のふたりと、一部のおとなたちが俺に殺到し、俺を褒め称えた。


 今度の賞賛は、素直に喜べた。


 俺は強い。俺は賞賛を浴びるだけのことをしたという自負が、俺の胸を満たしていた。


 遅れて、リーダーと残りの大人が駆け寄ってくる。その手には、しっかりと仕留めた牝鹿と小鹿の死体が抱えられていた。


「運がいいのか、天才なのか、とんでもないやつだな……」

「将来のリーダー候補だな……」


 リーダーたちは賞賛するというよりも、ただただ感心しているようだった。


 こうして、俺の初狩りは終わりを迎えた。


 夕方前。集落へ帰ると、当然ながら俺は今日の主役だった。


 集落で待っていた大人だけでなく、ガキたちも『アギト兄ちゃんすげぇ』と、俺に羨望も眼差しを送ってくる。


 俺もああやって、大物を仕留めて来た大人たちに憧れた時期があった。けど、もう俺は憧れられる立場のようだ。


 そう思うと、なんだか感慨深いものがある。


「アギト♪」


 可愛らしい声が駆け寄ってきて、振り返るとアオイが俺に跳びついてきた。


 アオイは、何度も『すごい』と言いながら、俺に抱きついて離れない。


 アオイはやや小柄だけど肌がやわらかくて、抱きしめているととても気持ち良い。


 他の、同年代の女の子たちが、俺とアオイを見ながら囁き合っている。その一部が聞こえたが『次期リーダーのお嫁さん』という単語が飛んでいた。


 いくらなんでも、それは気が早過ぎるだろう。


 それから集落では、火が落ちる前に男たちで獲物を解体、それから火を起こす。女たちが肉を切り分け、自分たちが獲ってきた茸と一緒に肉を焼き始める。


 狩りのあとの飯は、集落の中央でみんなで食べる。


 食糧は無駄にはできない。毛皮を剥がすと、肉も内臓も脳味噌も食べ、骨を割って骨髄も吞むと、骨は道具作成に使う分を除き、石で粉状に砕いて吞みこんだ。


 今日は久しぶりの牡鹿ということもあり、集落の誰もが笑顔で騒いだ。


 アオイは食事のあいだ、ずっと俺の隣に座っていた。


 美味しそうに鹿肉を食べるアオイは可愛くて、アオイの笑顔が見られて俺も満足だ。


 飯が終わると皆で後片付けをして、俺は牡鹿の後ろ脚を、まるごと一本持って帰ることを許された。


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