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ハイエナより主人公VSダチョウ

 今日の狩り場は、森の南の平原だ。


 春や夏のときは森での狩りが多い俺らだったが、最近は平原が増えて来ている。


 俺らの集落は平原にあって、東に狩り場となる森がある。


 平原はその森の南にまで広がっていて、そこまで行くと、森よりも大型で強い動物が多いのだ。


 今日の獲物は、一見すると弱そうだが爪が鋭くて危険なアリクイと大型のオオアリクイ。


 それから、シマハイエナという中型のハイエナだった。


 ハイエナは毛皮の色も鳴き声も汚い動物だ。イヌ型だけど、体はディンゴやコヨーテ、ジャッカルよりも大きくて力も強い。


 似たような動物で、リカオンという動物も狩った。


 ハイエナもリカオンも捕食者側、肉食動物だけど、いまの俺の敵ではない。


 しかしながら、この狩りで思わぬ問題点が浮上した。


 リカオンは二〇頭ほどの群れだった。でも俺がオスのリカオンを三頭ほど殺したところで、他のリカオンたちは逃げ出してしまった。


 すぐにアオイたち弓使いが矢を放って、さらに二頭のリカオンを仕留めた。けれど、残りは遠くまで逃げてしまった。


 決してアオイたちの弓がはずれたわけではない。

ただ単純に、矢が届かなかったのだ。


 せっかくの飛び道具がそもそも届かないんじゃあ、いくら弓の腕前をあげても意味がない。


 アオイたちはあそこまで遠くに逃げられたら仕方ない、と笑っていた。


 でも俺は、なんとかしてもっと遠くまで矢を飛ばせないかと思案した。


 俺自身は弓での戦いを好まないが、それは俺の好みだ。


 狩りは本来、食糧調達のための大切な仕事だ。


 収穫量を増やすには、弓使いの射程距離を伸ばす必要があった。


 そうやって頭を悩ませていると、アオイが俺の手を引いた。


「ねぇアギト、あれって鳥だよね? ダチョウ? それともヒクイドリ?」

「え?」


 見れば、俺らよりもデカイ巨大鳥が数頭、木々の影から出てくるところだった。

 一部の鳥は羽を広げて、近くの鳥に何かをアピールしている。

 たぶん、求愛のダンスだと思う。


「首と頭が白いからダチョウだな。ちょっと行ってくる」

「行ってくるって、蹴り殺されちゃうよ!」


 慌てるアオイを置き去りにして、俺はダチョウへまっしぐらだ。

おじさんの話だと、ダチョウの蹴りは一発で人間を殺せるらしい。


 でも、いまの俺には関係ない。


 全力疾走をする俺に、ダチョウたちは鳴き声を上げながら威嚇。


 向こうも俺に向かって走って来た。



 ダチョウは、人間の倍の速度で走れる。


 でもそれは、接近戦の速さに必ずしも直結しない。


 ダチョウは全力疾走したまま右足を振り上げる。


 俺は体をひねってかわすと、全力疾走の勢いを殺さず槍に乗せ、ダチョウの胸板を刺し貫く。


 苦痛に呻く一羽目を無視して、俺はすぐさま次の獲物に駆けだす。


 二羽目のダチョウも、バカの一つ覚えのように蹴りを繰り出すので、俺は華麗な跳躍で上にかわし、飛び蹴りをダチョウの顔面に叩きこむ。


 目をやられたダチョウはのけぞり、のけぞったダチョウの首を掴んで引き寄せ、俺はその背中に槍を突き立てた。


 穂先から伝わる鼓動が破裂して、ダチョウは平原に倒れ込む。


 逃げ出す他のダチョウは、あえて放っておく。


 これ以上は、どうせ持ち帰られない。


「アギトー、だいじょうぶ?」


 すぐに俺を追いかけていたのだろう。アオイがすぐに走ってきて、俺に抱きついてくる。

 そのまま、俺がどこも怪我をしていないかどうかを調べはじめる。


「だいじょうぶだいじょうぶ。どこも怪我なんてしていないよ」


 俺はアオイの頭のなでながら抱き寄せ、アオイの感触を楽しんだ。


 すると、俺はアオイの違和感に気づいた。


 アオイの肌はすべすべでさわり心地が良くて、ぷにぷにとやわらかい。


 ただ今日のアオイはなんというか、いつのまにか……

 そこへ、追い付いてきた仲間たちが一声。


「今日は気合はいってんなアギト。やっぱ祭りが近いからか?」

「ん? おう。何せ秋は、狩猟祭だからな」


 俺は大きく頷いた。

   

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