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アギト十三歳 身長一四〇センチ 戦闘力:人間並 評価:E

「よしガキ共! 今日からテメェらもガキを卒業だ! 狩りへ行くぞ!」

『おおおおおおおおおおお‼』


 大人のなかでも特別に強い男、この集落のリーダーの言葉に、俺を含めた六人は槍や弓を突き上げて歓喜の声を上げた。


 大人たちに囲まれるなか、俺を含めた三人は、産まれた時期が十三回めぐり終えた男だ。


 この集落では、男は十三歳になると狩りの参加が認められる。そこで獲物を取れば、晴れて大人の仲間入りだ。


 雪が溶けて、森に新しい命が芽吹くこの初春は、俺が産まれた時期なのだ。


 周りの大人たちは、笑顔で俺らの肩や背中を叩き『頑張れよ』『お前らもとうとう大人か』と激励してくれる。


「アギトはいいなぁ。わたしもそっちに混ざりたい」


 大人たちのあいだから、羨ましそうな顔で俺を見上げるのはアオイ。やわらかい小鹿の毛皮で作った胸当てと腰巻が良く似合う、目の大きな可愛らしい女の子だ。少し長めの髪を頭を右側で縛った、ワンサイドアップという髪型が特徴的だ。


 両親が死んでいる俺は、彼女の家で一緒に暮らしている。


 アオイも俺と同じ十三歳だが、女のアオイには別の仕事がある。


「仕方ないだろ。狩りは男の仕事なんだから」

「そうだけどぉ……わたしだって弓は引けるのに……」


 アオイは軽く頬を膨らませると、足の指で地面をこづいた。


「男は狩り、女は森で採集って決まっているだろ。まぁまずないとは思うけど、森のなかで猪でも出たら、アオイの弓で追っ払っておばさんたちを守ってくれよ」

「ちぇっ」

「そんな顔するなよ、ほら」


 俺が頭をなでてやるとアオイは、ぱっと笑顔になる。


「えへへ、じゃあおいしい木の実とキノコ、いっぱい採ってくるから、楽しみにしていてね♪」


 むぅ、やっぱり可愛い。


 はっきり言って、アオイは可愛い。集落の女の子たちのなかでも、絶対に一番可愛い。


 でも、その感情を表に出してはいけない。


 男は女に惚れさせても、自分が惚れていることを悟られてはいけないのだ。って、昔おじさん、アオイの父親から聞いた。


 好きな女の子に気に入られようと媚びを売る男がいるけれど、そうすると結婚したあとが大変らしい。おじさんはおばさんと仲の良い夫婦だから、きっと別な人の体験談だろう。


「じゃあアオイも、俺の獲物を楽しみに待っていろよ」

「うん♪」


 俺らの別れが済むと、リーダーは号令をかけて出発した。

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