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ネズミ、リス、キツネ、タヌキ、シカ、ジャッカル、コヨーテ、ディンゴ、カンガルー、ガゼルより強い主人公

 それから俺は、猛烈な勢いで動物を狩る日々を続けた。


 ネズミ、リス、キツネ、タヌキ、シカ、ジャッカル、コヨーテ、ディンゴ、カンガルー、ガゼル。いまの俺が獲れる動物の幅はかなり広い。


 シカも、牝鹿だけでなく牡鹿だって問題なく狩れるし、カモシカというちょっと変わったシカも狩った。


 俺らだけじゃ喰いきれない肉は、いつも通り仲間の家族や集落のガキたちに喰わせてやる。そして一部の肉をおじさんに渡して、干し肉と塩漬け肉の研究に使った。


 失敗したのはよく火を通してから俺が喰った。


 それから仲夏を過ぎて、夏も終わろうという晩夏。


 俺ら若者組の七人は、いつものように森へ狩りに来ていた。


 ただし、いつもより森の奥へ、踏み込んだ。


 鬱蒼とした森の木々が太陽光を遮ってくれるおかげで、残暑も辛くはない。いつ猛獣が出るかわからないというデメリットを除けば、森のなかは過ごしやすい。


 今日の最初の獲物はカモシカだった。


 シカ肉は美味い。鹿肉は正義だ。もっとシカはいないかと探すと、俺らはソレを見つけた。


 シカだった。まぎれもなくシカだった。


 でも、そのシカを見て、俺の仲間たちが絶句した。


 理由は単純。


 そのシカはデカかった。


 俺らの知る牡鹿と比較すれば、倍はある。


 足も太く逞しいし、角も立派だ。


 仲間たちが、震える声で囁き合う。


「おいあれって、昔長老が言っていたやつじゃないか」

「エゾシカだろ? この森でいちばんデカいシカのヌシ様だ」

「大人三人分の体重があるって聞いたぞ」


 その話は、俺も聞いた事がある。いままで何人もの大人がエゾシカを狩ろうとして、ことごとく返り討ちにあっていることもだ。


 でも俺は口角を上げて、ためらうことなくエゾシカに立ち向かった。


 大声をあげながら襲い掛かる俺に気づくと、エゾシカは角を俺に向けて突進してくる。


 サイズが変わっても、俺がやることは変わらねぇ。

 ただ狩り殺す。

 それだけだ。


 エゾシカまでの距離が残り十歩というところで俺は跳躍。すぐ近くの木の幹を蹴って大きく跳び上がると、エゾシカの上を取った。


 エゾシカは頭を上げるが間に合わない。


 俺は槍の穂先を下に向け、エゾシカの背中に槍で着地した。


 俺の全体重と勢いをつけた槍はエゾシカの背中に突き刺さる。が、それも一瞬。


 流石の巨体と言うべきか、俺の世界が揺れた。


 エゾシカは激しく暴れ、背中の俺を腰で跳ねあげた。


 槍が抜けて、俺は空中に放り出される。


 俺は着地と同時に地面を転がり、勢いを殺すと、素早く体勢を立て直す。


 エゾシカは興奮し、怒りに任せて小癪な人間に再び突進。でも、その突進にはさっきまでの勢いがない。


 俺はエゾシカの角をかいくぐり、かがみこむと、その胸板に槍の穂先を叩き込んだ。


 アバラ骨の隙間から内臓に達した槍は、一撃でシカのヌシ様の命を奪う。


 エゾシカは二度、三度と体を痙攣させ、その場に倒れ込んだ。


「はっ、シカのヌシ様だかなんだか知らねぇが」


 俺は、その場で槍を天に突き上げた。


「俺の方が強い!」


 いつものように、六人が喜びながら俺に駆け寄って来る。


 仲間の惜しみない賞賛に、俺は手をあげて応えた。


 そのとき、変な奴が俺の視界に入る。

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