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帰還

 三匹のジャッカルは俺の総取りだ。俺のひっかき傷からの出血が止まるのを待ってから、俺らは集落へ帰った。


 ジャッカル三匹分の肉があれば、アオイたちもお腹いっぱいになるだろう。


 アオイの笑顔を想像して、俺は軽い足取りでアオイの姿を探した。


「おーい、アオイー」


 俺がジャッカルを掲げながらアオイの名を呼ぶと、大人たちに混じってアオイが駆け寄って来る。そして、俺を見るなり悲鳴をあげた。


「アギト、その怪我どうしたの!?」


 笑顔どころか、アオイは目に涙を浮かべて俺を見上げた。


「え? ああジャッカルと戦った時にな。それより見ろよ。これ俺ひとりで獲ったんだぜ。今日はジャッカルの肉いっぱい食えるぞ」

「そんなことより怪我! 早くこっちきて!」


 アオイには珍しい、強い口調だった。あまりの迫力に圧されて、俺はアオイに言われるがまま、ジャッカルをその場に置いて、アオイと一緒に家に帰る。。


 俺が傷口は湖で洗ってきていることを言うと、アオイはおばさんと一緒に薬草をすりつぶして、俺の体に塗っていく。


 これはおじさんが見つけた薬草で、これをすりつぶして傷口に塗ると、治りが早いらしい。


 ガキの頃、怪我をしたときはよく塗ってもらったものだ。


「もうアギトってば、あんまり無茶しちゃいやだよ」


 不安そうな顔のアオイに言われて、俺は申し訳なく『ごめんな』と謝った。でも、俺の行動はアオイに認めてもらいたい。アオイに心配をかけないように弱い相手としか戦わないなんて男が廃る。


 俺はアオイに謝る一方で、主張すべきところは主張させてもらう。


「でも、アオイにお腹いっぱい肉喰ってもらいたかったから」


 アオイは目をしばたたかせた。


「わたしの……ため?」

「うん」


 俺が頷くと、アオイは硬直したまま、カーッと顔を顔を赤くなっていく。その赤身が耳まで広がると、アオイは両手で顔を隠したまま、その場にうずくまってしまう。


 甲羅にもぐった亀のように動かないアオイに、おばさんが意味深な笑顔を浮かべた。


 おばさんの笑顔が気になるけれど、やっぱりアオイは可愛いなぁ、と思う。


 アオイは恥ずかしがり屋の赤面症で、赤くなった顔をすぐに隠してしまう。


 こうなると俺もイタズラ心をくすぐられて、ちょっと意地悪をしてしまう。


「どうしたアオイ? おーい」


 うずくまるアオイの顔を下から覗き込もうとしたり、顔を隠す手をどけようとしてみたりする。


 可愛いなぁ、未来の俺の嫁。


 アオイを見ていると胸が熱くなって、腕のなかで可愛がりたくなる。

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