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ジャッカル殺し

「え?」


 俺は思わず、間抜けな声を上げてしまった。

なんだ今の感覚は?


 ちゃんと槍を握っていないのに、槍が有り得ない速度で切り変えられて、穂先が一瞬でジャッカルへ向いた。


 俺は自身の手元を見下ろす。


 果たして、俺の両手は親指と人差し指を緩め、残り六本の指で槍を握っていた。


「もしかして……」


 死んだ仲間の死体に動揺しつつ、残る二匹のジャッカルが俺に牙を鳴らして襲い掛かる。


 俺は試しに、握り方を変えずに戦ってみた。


 するとどうだろう。槍が面白いように速く動く。


 俺はジャッカルたちをあえて殺さず、槍でさばきながら考えた。


 確かに、槍はただ振ればいいというものではない。


 俺は子供の頃から、大人たちに槍の突き出し方を教わった。


 腕の力だけで突かず、足や胴体の力も使って、体重を乗せて突き出さなければ、動物の分厚い筋肉は貫けない。


 だから槍で突く鍛錬をしっかりと積むよう、俺らは大人たちに言われた。


「なら、突くだけじゃなくて振るうのも全身を使えば」


 槍を手元だけではなく、足で、腹筋で、肩で、全身を使って槍の動きを補助する。


 俺はジャッカルの爪と牙を槍で防ぎ、さばき、受け流し、二匹のジャッカルを翻弄した。


 すげぇ。これすげぇ。


 全身の筋肉と関節、それに槍が、ぴったりと連携する気持ち良さに、俺は震えた。


 最初は、俺もジャッカルの爪に引っ掻かれ、体にはいくつもの傷を負ってしまった。けれど、ジャッカルの爪は徐々に俺から遠ざかる。


 やがてジャッカルは俺に触れられなくなってしまう。


 槍を振るえば振るう程、突けば突く程。俺の槍は速度と精度を増していく。


 ジャッカルとの戦いが進む程、俺は強くなっていると実感できた。


 できるだけこの戦いを長引かせたいという気持ちはあったが、それはすぐに終わった。


 俺の成長も打ち止めというか、ジャッカルの攻撃パターンはわかると、俺の動きも単調になっていった。


 ジャッカルとの戦いで可能な成長はこれまでか、と俺は一匹のジャッカルの喉を貫き、もう一匹は槍の柄頭で地面に叩き伏せてから、カカトで首を思い切り踏み砕いた。


 俺の足下には、ジャッカルの死体が三匹分。


 大人たちが、危険だからと逃げた相手を倒した。


 気づけば、俺はまた、勝利の咆哮をあげていた。


 俺の声に気づいたのか、リーダーたちはすぐに戻ってきて、ジャッカルの死体を目にして言葉を失っていた。


 俺と年の近い連中は諸手を挙げて喜び、また俺を賞賛してくれた。それは一部の大人でも同じだけど、また一部の大人たちがどよめいていたのが少し気にかかる。


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