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吸血鬼のシリーズ

吸血鬼殺しの復讐

作者: 仲仁へび
掲載日:2022/03/17



 俺は、七歳で孤独な身になった。


 父も母もいたけれど、何よりも大切だった家族は、ある日吸血鬼に殺されてしまった。


 吸血鬼は化け物だ。


 強靭な体と高い回復力で、生き続け、たやすく人を殺してしまう。


 そんな恐ろしい人外の化け物が、ある日、俺の日常を壊してしまったのだ。


 その日から俺は、吸血鬼を殺して回る事を夢に見るようになった。


「父さんと、母さんの仇は、俺が絶対にとってやる」


 そして、どうすれば強くなれるか考え続けていた。


 子供だとか関係ない。


 無力なのは立ち止まる理由にならない。


 憎き吸血鬼を殺せるくらいになるために、様々な事をした。


「とりあえず、強い奴の元を訪ねていこう」


 良い案が思いつかなかったので、国で有名な者達を探し回る事になった。


 各地、各大陸で、相手の元を訪ねる。


 けれど相手にしてもらえなかった。


「身寄りのない子供を弟子に? そんな余裕はこっちにはないよ。遊びじゃないんだ。帰りな坊主」


 俺の様などこぞと知れぬ子供を育てる余裕はないそうだ。


 俺はすっかりやさぐれていた。


 教えてもらえないなら、一人で強くなるしかない。


 そう思って自力で修行に励んだけれど。


 一人で考えられる方法は穴だらけだった。


 うっかり猛獣の巣で死にかけたり、訓練の不注意で大けがを負った事がある。


 とてつもない猛獣に追いかけられた事もあった。


 もはやこれまで、そう思った事もあったが。


 死にかけていた場面で、通りがかりの人間に助けてもらう事ができた。


 運が良かったのだろう。


「ほう、ボウズのくせに、度胸だけはあるみたいだな。よし、気に入った。俺の弟子になれ!」


 しかも、その人物は、俺を弟子にしてくれるといった。


 どんな有名な人間なのかと思ったが、相手は名乗らない。


 しかし、そんな事はどうでも良かった。


 自分を応援してくれる存在が嬉しかった。


 それに、訓練もちょうど限界を感じていたところだった。


 だから名前が分からなくてもそれでもいいと思った。







 その日から俺は、新しい師匠の元で修行する事になった。


 師匠の仮の名前はダッシュビー。


 名前がないと不便だからときめた偽名だ。


 ダッシュビーンズという豆と、ハチの名前を一緒にしたそれは、少し間抜けな言葉にきこえた。


 俺は、師匠が組み立てた計画通りに、修行をこなしていった。


 たまに好物の豆をとりにいかされたり、酒を買わされたり、雑用を押し付けられる事があったが、


「こんなの弟子のする事なのかよ」

「がはは! たりめーだろ」

「嘘だぁ」

「なんだぁ、ボウズ。思ったようにかまってもらえなくて、むくれてんのか?」

「んなわけあるか! ばーか、くそじじい!」


 誰かに教えてもらって修行する事は、効率がよかった。


 ダッシュビーは各地を歩いて、気ままに旅をしているらしい。


 だから、必然的に俺もそのたびに同行する事になった。


 すると、各地で吸血鬼と対峙する事が多くなった。


 成長した俺は、かつては敵わなかったそいつを、着実に殺していく事ができた。


 これなら、仇の吸血鬼も殺せるだろう。


 そう思えていた。


 けれど、現実は非情だった。







 ある日、とてつもなく強い吸血鬼と出会った。


 そいつは家族の仇だった。


「お前が、父さんと母さんを殺したヤツ!」

「はん、いちいちそんな人間覚えてねぇな、食った人間の事なんてよお」


 勇んで飛び出した俺は、ダッシュビーの忠告を聞かなかった。


「よせ! おまえじゃ勝てん!」


 そしてすぐに、圧倒的な力量差を前にして、手も足もでなくなった。


 俺は、殺してやると考えていたそいつに、敵わなかったのだ。


 俺はこてんぱんにやられてしまった。


「へっ、弟子のしりぬぐいをしてやるのも師匠のつとめってな!」


 けれど、師匠が助けてくれたから一命をとりとめる事ができた。


 その後は、数か月かけて怪我をなおさなければならなかった。


 けれど、俺は怖くなってしまった。


 実力の差を知って、心が挫けてしまったのだ。


 一生敵わない事が嫌なのではない。


 敵わない可能性を受けいれてしまった事が嫌なのだ。


「俺の心は弱い。どうしようもなく弱い。こんなんじゃ、こんな弱い人間が勝てるわけはない」


 けれど、そこを師匠が励ましてくれた。


「最初から無敵の存在などいない。みな強い人間の背中を追いかけて、自分も同じようになろうと思って、強くなるのだ」


 師匠にだって弱い時があった。


 ダッシュビーはその話をしてきた。


 昔は俺の様に弱くて、たくさんの人を目の前でなくしたのだという。


 その昔話を聞いた俺は、再び立ち上がる事ができた。








 それからも、たくさんの修行をこなし、各地の吸血鬼を殺していった。


 吸血鬼は、血を吸った相手を眷属にして、味方にしてしまうから、生きている年数が多いやつほどやっかいだった。


 数人ならまだいい方で、村一つぶんの住人を、まるごと眷属にしていたやつもいた。


 しかし、それらにもどうにか勝利していった。


 白星は順調につみかさなっていく。


 最初の頃のように、自分一人で勝てず、師匠の助力を得ていた頃とは違っていた。


 一人でも戦える場面が増えていった。


「これならできる。きっと、あの吸血鬼にだって!」


 けれど、その時は訪れてしまった。


 仇の吸血鬼と再戦した時、師匠が吸血鬼にかまれて、眷属になってしまった。


「そんな! 嘘だ!」


 俺はなくなく師匠と戦わなければならなかった。


 元に戻す方法があればいい。


 しかし、今までの旅でそんな方法は耳にした事がなかった。


「ぐ、はやく俺を倒せ! もう自我が保てん」

「くそおおおお!」


 だから、倒すしかないのだ。


 俺は、師匠を超えるために、死力を尽くして戦った。


 そして、激闘の末に吸血鬼の心臓を拳でうちぬいたのだった。


「師匠、こんな方法でしか止められなかった。ごめん」

「何言ってやがんだ。最後に弟子が師匠を超えるところが見られたんだ、まったく贅沢なもんだ」


 長い間吸血鬼をやっているやつは、再生能力ですぐに体をなおしてしまう。


 しかし、なりたての吸血鬼は、体の一部を失っただけで、すぐに死んでしまうのだ。


 師匠は吸血鬼の弱点である心臓を疲れ、さらに片腕を失っていた。


 俺は師匠を人として死なせてやれたのだろうか。


 亡くなった師匠を埋葬して、逃げてしまった仇を追いかける事にした。








 一人の旅が始まった。


 とても悲しい旅だった。


 何をする時も、今までの師匠の影が頭にちらついて離れなかった。


 いつだって、師匠の影が頭にちらついた。


 けれど、挫けてはいられなかった。


 天国にいる師匠に笑われてしまう。


「俺、絶対師匠の仇もうつよ! 見ててくれ師匠!」








 そして数年後、俺はその仇を見つけた。


 燃えるような夕日の丘で、最後の戦いに挑む事になった。


「この戦いを最後にしたい。いや、するんだ。師匠の弟子である俺が!」

「ふん、脆弱な人間が調子にのりやがって」

「もう逃がさないからな!」


 吸血鬼はやはり強かった。


 しかし俺も、また強くなった。


「あの頃の俺だと思うなよ!」


 戦いは互角だった。


 けれど、相手の方には強い再生力という利点がある。


 だから、何度もこちらは倒れそうになった。


 しかしそのたびに、心の中で生きている師匠に励ましてもらった。


『倒れそうになった時は、心を奮い立たせろ。負けられない想いがあると、思い出すんだ』


 俺は今まで失って来た人達の事を頭に思い浮かべて、必死で戦った。


 そしてとうとう俺はその仇の吸血鬼に打ち勝ったのだった。


 弱点である聖なる水で濡らした拳で、心臓をうちぬき、吸血鬼は倒れていく。


「ばか、な」

「お前の負けだ」


 あんなにも強かった敵は灰になって、あっさりと消えていった。







 俺は師匠の墓に戻って、その事を報告した。


 そして、その後は吸血鬼によって家族を殺された者達の面倒をみながら過ごす事にした。


 師匠が亡くなった日には、ダッシュビーンズを買ってきて、お酒と共に毎年墓のお供えしている。


 今は、一人一人が討伐するしかできないけれど。


 いつか、この世界から吸血鬼の脅威で不幸になる人が、完全にいなくなってほしい。



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