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第77話 こうなったら殺してでも奪い取るぞ!

 


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーはついにウェストリア大陸の大地を踏んだ。



 港に到着したはいいが、ヘイスがドラゴンを運んでいると情報が回っていたようで、野次馬も合わせて大騒ぎである。

 その上、ガラの悪そうな冒険者らしき男たちがヘイスをどこかに案内しようとしていた。


「てめえには関係ねえ! 邪魔するな!」


「困りますね。私たちは人を待ってるんです。あなたこそ邪魔しないでくれませんか?」


「おっ、お前が連れか? それなら俺たちが待ち人だ。さあ、さっさと着いて来な」


「それではカードを見せてください」


「テメーッ! 俺が信用ならねえっていうのか!」


「信用も何も、名乗らずカードも見せない、あなたはそんな人間を信用するとでも言うのですか?」


 ナジャス、辛辣である。


「ぐっ……お、俺は依頼を受けてお前たちを迎えに来ただけだ。名前なんぞ関係ねえ。グダグダ言ってねえで黙って着いてくりゃいいんだよ!」


「だから、見ず知らずの人間についていくバカはいないと言ってるんです。大体、依頼と言ってましたが、どこのギルドからの、誰からの依頼なんですか?」


「知るか! ギルドはギルドだろうが! これ以上ゴネてると殺してから引き摺ってくぞ!」


 冒険者(暫定)のリーダーらしき男はとうとう剣を抜いた。そして仲間らしい3人も次々と武器を構える。

 成り行きを見守っていた商人たちや野次馬は慌ててヘイスたちから距離を取り始める。


「ヘイスさん、やりすぎましたかね?」


「大丈夫じゃないか? 待ち人も来たようだし」


「誰の依頼か、俺も聞きたいな!」


 ヘイスとナジャスが軽く相談していると、新たな乱入者があった。


「ぎ、ギルマス……」


「やべー、ギルマスが来ちまった」


「足止めしてるんじゃなかったのかよ……」


 冒険者(暫定)たちの呟きで新たな乱入者の正体がわかった。

 それはともかく、迎えがギルドマスター直々ということに少し驚いたヘイスだった。が、考えてみれば魔物大陸でも滅多に手に入らないドラゴンの素材丸ごとというのはギルドマスターを動かしてもおかしくないのだろうと自己完結するのであった。


「ヤスウ! 言ってみろ! 誰からの依頼だ? ああん?」


「ち、違うんだ。こ、これは頼まれて……」


「何が違うってんだ? ダンビラなんぞ振り回しやがって、ここも街中扱いなんだぞ? お前らを捕まえる理由が増えたな」


「くそっ! こうなったら殺してでも奪い取るぞ! お前ら! 覚悟を決めやがれ!」


「そ、そうだ! ドラゴンさえ手に入れれば!」


「ちくしょー! やってやる!」


 冒険者(暫定)改め強盗団4人はとうとうヘイスたちに襲い掛かってきた。


「ナジャス、下がっていろ」


「あ、はい」


「魔法使いごときが前に出てくるんじゃねえよ! 死ね! なんだっ!」


「なんだ! 見えない壁がある!」


 強盗たちが立ち位置を入れ替えたヘイスに向けて剣を振り下ろした。

 しかし、その剣はヘイスに届かず、空中で止まってしまった。


 これは、スキル《結界》の効果だ。

 ダンジョン探索では魔素吸収無双で、野営のときも結界の強度に不安があるため土魔法の壁を多用しているという、いらない子扱いである。

 何故ヘイスが使えるかといえば、ヘイスが趣味で色々なスキルを鍛えているから、としか言いようがない。


「ギルマス? こいつら、盗賊ってことでヤッちゃっていいんだな!」


「待て! 話は聞き出したい! できるだけ殺すな!」


「それはコイツらのレベル次第だな。おーい! 野次馬ども! 巻き込まれたくなかったら、もっと下がれ! ギルマスもだ! 10尋(18メートル)ぐらいな! 近くにいるヤツは盗賊の仲間と看做すぞ! 異論は認めん!」


「くそーっ! シネッ! 死ねっ!」


 ヘイスはギルマスを含めた観衆に警告する。

 強盗団は愈々もって後がないと感じ、一層攻撃が激しくなった。

 諦めて逃げればいいものを。とヘイスは思ったが、やはりこの世界の人間の考えることはわからん、とヘイスのほうが説得を諦めた。


 しかし、ダンジョンではいらない子の結界も下界ではなかなか通用するようで、強盗団の攻撃は一切通らない。

 そして、その光景を見ていた野次馬たちはヘイスの魔法使いとしての力量の一端を知る。魔法使いならば攻撃魔法を使うだろうと判断し、剣や槍よりも近くにいては危険だと理解した。

 ギルマスも同じように判断したらしい。攻撃を受けている側にまさか反撃するなとは言えるわけがない。警告どおり野次馬たちを下がらせる方が建設的だと考えて実行した。


「下がれ! 下がるんだ! 魔法が飛んでくるぞ!」


「に、逃げろ!」


 ギルマスの人望は大きいらしく、野次馬たちは決して冗談や大げさなことではないとわかってヘイスからの距離をさらに開けた。


「よし、これぐらいでいいか」


 念のため《マップ》スキルでも野次馬たちの位置を確認すると、結界はそのままの位置に出したままナジャスを促して少し後ろに下がる。ヘイスたちの後ろにも野次馬はいたが、船が停められている方角なので、船員たちは船に逃げ込んでいる。


 盗賊たちはいまだに結界に攻撃を続けていた。


「メンタマひん剥いてよおっく見やがれ! 本邦初公開(特に意味はない)だ!」


「「「「ギャーッ!」」」」


 薄暗くなったと思った瞬間に全身に衝撃が走って意識がなくなった。


 もし強盗団が生きていれば、そう証言することだろう。


「どっ、ドラゴンだーっ!」


「ギャーっ! 食われるーっ!」


「ホントにドラゴンだ! 大金貨何枚だ!?」


「スゴイ! まるで生きてるみたいだ! 傷一つないぞ!」


 ただの野次馬と狙ってやってきた商人とでは反応が違った。


 そう。ヘイスは魔法を使ったわけではない。スキルといえばスキルだが、単純に強盗団の頭上にドラゴンをアイテムボックスから排出しただけである。

 殺すなと言われていたため、排出する高さをギリギリまで低くしたし、壊れたとはいえ結界も出しっぱなしにしておいたのはヘイスの優しさだろうか?


 もっと穏便な方法はないのかと聞かれれば、当然ある。

 これは一種のデモンストレーション。プラス、ロクでもないミッテン王国の歓迎に対する意趣返しでもあるが。

 実際に聞かれたら、『手の内は晒したくない。どうせドラゴンはお披露目するのだから、それを利用した』とでも答えるつもりのヘイスであった。


「おいおいおい、これ、どうしたらいいんだよ……」


 野次馬たちが騒ぐ中、ギルドマスター(暫定)が近づいてきた。護衛らしい人間も数人いる。


「ギルドマスターか? ドラゴンは確認したな?」


「あ、ああ……お前、何してくれてんだ。この騒ぎ、どうするつもりだ?」


「何、ギルドマスターにドラゴンを確認してもらいたかっただけだ。たまたま盗賊が巻き込まれただけ。何の問題もない」


「問題だらけだよ! アイツら死んでるだろう!?」


「さて? 冒険者でそこそこのレベルなら死なないと思うがな。確認したなら回収するぞ?」


「さっさとどかしてくれ!」


 ギルドマスターの悲痛な訴えでヘイスは再びドラゴンをアイテムボックスに収納した。

 野次馬も再び騒ぎ出す。特に商人たちは残念そうな悲鳴を上げていた。


 ドラゴンの下敷きになっていた盗賊団は虫の息だ。

 ヘイスが鑑定するとHPが10以下と出る。絶賛下降中だ。頚椎骨折に内臓も破裂している。


「おい! 生きてるか! どうすんだよ、この始末……」


「ふん、こっちの冒険者はヤワだな。ヒール……これで死にはしないだろう。あとは勝手に治療してくれ」


「治癒魔法まで使えるのか……とんだ規格外だぜ……」


 最初の意気込みに反して目立ちまくるヘイスであった。


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