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第70話 対策を考える

 


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーは誘拐犯たちのリーダーから『勇者』の情報を得た!


「ま、ここでアレコレ想像しててもしゃーない。神サマ、調べられないか?」


『リソースがのう……』


「またそれか! 俺はヤダぞ、いきなり乗り込まれて殺されるのは! 神サマだって他人事じゃないんだから、情報集めようぜ?」


『そなたはともかく、神である我を殺せるとは思えんがのう』


「危機感がうっすいな! そんなんだから世界を乗っ取られたって自覚ないのか?」


『うぬっ……痛いところを……じゃが、我はこの星そのものじゃぞ? 星ごと破壊しようとでもいうつもりか?』


「それがわかんねえから情報集めようって言ってんだろ? 殺すって言ったのは例えばの話だ。テンプレで封印って手もある。今だって封印されてるようなモンだろうが」


『封印されておるのは我ではなく次元の穴なんじゃが……』


「だ・か・ら! 向こうの目的が何一つわかってないのが問題なんだってば!」


『ふむ。そなたは勇者とやらに相当危機感を感じておるようじゃな。そなたの知識では創作であったはずじゃが?』


「フィクションだと思ってた異世界に落っこちてきたんだ。勇者も実在するんなら相当理不尽な能力持ってるんだろうよ。リソース貧乏のどこかの神サマと違って、向こうはチート授け放題だろうからな。羨ましい話だぜ、全くよ」


『そなたら日本人の《チート》に対するこだわりはもはや信仰の域じゃのう……』


「そんな日本語の乱れを嘆く年寄りみたいなことはいいから、神サマなんだから俺の言いたいことぐらいわかってるだろうに」


 ヘイスは自分の語彙、表現能力の拙さを棚上げして相手に理解を求める。まさに他力本願、困ったときの神頼みというヤツである。

 ただしヘイス一人のせいではない。昨今の日本語のスタンダードなのである。語源も直訳も『ずるい』とシンプルだが、使う場面に正誤がある。流行し出したのはネットゲームからだそうだが、異世界モノのラノベで爆発的に広まった。

 正しくは『ゲームの規約に反する行為』なので、ルールになければチートとはいえない。

 だが、ルールというのが非常に曖昧だ。明文化された法律なら逆にチートという単語は使われない。只の犯罪だ。商取引などでも契約違反であってチートとは言われない。

 社会通念上の暗黙の了解ならどうだろうか。これもマナー違反でチートとはいえない。

 では、どんな場面で使われるのか。

 それはマイルールに他人が違反した場合、子供の癇癪ともいえる。例えば『○○ちゃんは足が速いからズルい』『新しいおもちゃを持ってるからずるい』『親が金持ちだからズルい』などだ。


 ぶっちゃけると『羨ましい』という気持ちが『恨めしい』に変わり『何故お前だけ良い目を見るんだ! 同じ人間、平等でなければならない! 自分にこそふさわしいのだ! お前にはふさわしくない!』といつの間にか相手が悪いと考えてしまう心理である。

 これをゲーム世界や異世界モノでいうと『稀少で高性能なスキル』いわゆる『ユニークスキル』や『エクストラスキル』が当てはまる。『高性能』がポイントだ。高性能であれば自分のスキルすら『チート』呼ばわりする日本人は多い。


 つまり生粋の日本人でライトオタクのヘイスが言いたいのは『勇者はヘイスより高性能なスキルをたくさん持っている』ということである。


『わかった、わかった。そなたの不安も一理ある。確かに我自身はともかく、そなたが殺されたり、次元の穴を開放されたりするとマズイのう。しばし待て。対策を考える』


「おう。早めにな」


 アスラ神が長考に入ったようだ。


 いつまでかかるか聞き忘れたことに気付いたヘイスだったが、呼びかけても返事がないので仕方なくコアルームに寝そべる。リーダーの男も一緒なのだが、徹夜明けで精神的にも疲れていたヘイスは気にも留めていない。

 本格的に睡眠を取るつもりはないが、自然にまどろんでくる。

 そのまどろみの中、ヘイスは今までのこと、これからのことを取りとめもなくぼんやりと考えていた。


『我が使徒・ヘイスよ。方針は決まった。起きよ』


「ふわっ、寝てないぞ」


 自然な反応だったが、結果お約束となったヘイスだった。

 アスラ神は気にすることもなく話を進める。ヘイスにとってはありがたいことである。


『方針とは言ったが、情報を集めるのはそなた頼りになる』


「……は? 神パワーでちょろっと調べられなかったのか?」


『うむ。忸怩たることこの上ないが、出来ぬものは出来ぬよ。千年前、あるいは侵略者どもの監視がないと確信できれば一瞬で全世界の情報を得ることもできるのじゃがな。

 先ほど警戒に警戒を重ねて試してみたが、人間一人ずつしか対応できぬ。これでは勇者本人はおろか勇者の情報を持つものを引き当てるのにどれだけの時間がかかるか神にもわからぬ。しかもタダではないのじゃ。無駄にリソースは使えぬ』


「やっぱりそこに戻ってくるわけだ……で? 俺が自分で勇者を探せってか?」


『うむ。いきなり勇者本人でなくとも情報を持つ者を探し、召喚をしたという国がわかれば調べる範囲も狭まるというわけじゃ』


「……まあ、情報もなく勇者サマに近づきたくはないしな。この男の話だとアルマン王国が召喚した(呼んだ)んじゃなさそうだし、そこから地道に調べるしかないか。居場所くらいはすぐにわかるだろう。ついでにケジメを付けさせる必要もあるからな」


 ミスティを誘拐され、ヘイス自身をも奴隷にされそうになったことを思い出すと、この男を許す気にはとてもなれない。そして指示した人間もだ。

 今後ヘイスを狙う人間が現れる可能性は高い。が、可能性だけで怪しい人間を処分するつもりはヘイスにもない。しかし、この男とその上司は実際に手を出してきたのだ。報復でもあるが、大事なのは二度と手を出せないようにすること。

 問題はその根っこがどこまで伸びているのかだ。この男の上司の独断なのか、さらに上役がいるのか、あるいは国ぐるみの犯行なのか。

 やはり現地に赴いて調べなければなるまい。


 近いうちに別の大陸に渡る予定であったのでついでといえばついでだ。

 それに、孤児院のこともある。誘拐犯に狙われるようになるまでヘイスと深い関わりがあると周囲に認識されたのは拙かった。

 出来るだけ早く街を離れて無関係をアピールした方がよい。四六時中ヘイスが警備するわけにはいかない。ヘイスがこの世界でしなければならないことは孤児院経営することではなく、ダンジョンを攻略して魔素を回収することなのだから。


 だが、ヘイスはジレンマを抱える。

 ヘイスが孤児院を離れたとしても、それを信じないアホがいるかもしれない。

 そんなアホから孤児院を守るためにギルドなどに警護を依頼したら、やはり関連があると勘繰られてますますアホを引き付けることになる。

 間を取って秘密裏に警護を依頼してもいずれバレてしまうだろう。

 まさにジレンマだ。


 だが、結局はダンジョン攻略で離れなければならない。孤児院は教会で自力で守ってもらうしかなかった。



 ヘイスはそんなことを考えながら誘拐犯の最後の一人であるリーダーから魔素を吸収し尽した。

 慈悲はない。

 せいぜい仲間と同じ場所に埋めてやる程度だ。あくまでヘイスの心の安定のために。


【作者からのお願い】

「面白かった」「続きが読みたい」と思われた方は下記にある【☆☆☆☆☆】で評価していただけますと、執筆の励みになります。


新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。

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