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第67話 空耳じゃないのか?

新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。


 


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーは誘拐犯からミスティを取り戻した!


 ドサッと乱暴に男を投げ捨てる。


『なんじゃ? 戻ってきたと思うたら、それは土産か?』


「冗談はいいから、頼みがある」


 ヘイスが今いるのは古巣とも言えるアスラルテラ山ダンジョン、コアルームだ。

 誘拐犯の船から脱出した際、ボルサスの街には行かず、転移でこちらに来たのだ。ヘイスなりの考えがあったようだ。

 ヘイスは、ダンジョン攻略のために用意してあるベッドを取り出すと、誘拐犯への待遇とは全く違い丁寧に眠ったままのミスティをベッドに寝かせるのだった。


「コイツの頭の中、調べてくれ」


 ヘイスの考えというのはアスラ神に誘拐犯の背景を調べてもらうことだった。神頼みにしては内容が物騒だが、凡人のヘイスが警察の真似などできるわけもなく、尋問してもその答えが本当かどうか判断が付かないし、そもそも犯罪者の言動を信じられないのだ。

 だから手っ取り早くアスラ神を頼ったというわけである。


『そんなことにリソースを割くのはのう……』


「そんなこと言わないでさ、俺だって成果出してるだろ?」


 ヘイスのいう成果とはダンジョン攻略のことである。3ヶ月という短期間に六つのダンジョンを攻略、コアを回収していた。そのコアはまだアスラ神に神力変換されず、コアルームに転がっているのだ。


 これだけ実績があればアスラ神が必要なだけいつでも魔素を回収してくることは証明できる。僅かな神力をヘイスの希望通りに使ってもかまわないだろう、と理論武装した。


『尋問ぐらい、そなたにもできるであろう?』


「上手いやり方があったら今度教えてくれ。とにかく今回は頼むよ。コイツの人生全部見なくてもいいからさ。ピンポイントでコイツの所属、命令した人間、あの船にその上司がいたのかどうか、ああ、ほかに攫われた子供の奴隷がいるかどうかも知りたい。こんなところだ」


『ふむ。使徒としての任務とは関係ないが、人として暮らすなら避けては通れぬ道か。そのせいで任務に差し障りが出るのならば仕方があるまい。見てやろう。じゃが、これ限りじゃぞ? 次からは己で処理するがよい』


「おう。ありがとうよ。一応尋問の魔法も心当たりはある。まあ、最初はコイツに答えを聞いて、後からゆっくり試すつもりだ」


 ヘイスの言う心当たりとは、ラノベにも出てくる《闇魔法》である。実際その魔法を使った『奴隷の首輪』の現物も入手している。いざとなったら尋問する相手に嵌めてしまえばいい。魔法で効果があるならこの先も便利だ。


『ならばよい。では見てみるぞ……うむ。そなたの知りたいことはすべて判明した』


 さすがは神である。ヘイスが期待したとおり短時間で調べがついたようだ。


 わかったことは、このリーダーっぽい男の名前は『キタラス・ノジカ』。これはヘイスの鑑定でも出たが、身体検査して見つけたギルドカードに似た身分証には『アルマン王国第5騎士団ジョン・スミス』となっていたので偽名だとは思いつつアスラ神のお墨付きがほしかったのだ。


 所属に関しては偽のカードどおりだが、思ったとおり暗部といえる部署らしい。

 命令したのはそこのトップで、この男の知る限り『ザンク・マーキス』と名乗る人物のようだ。残念ながらあの船には乗っておらず、このキタラスが実働部隊のトップだそうだ。

 アルマン王国といえば、今日聞いたばかりの名だ。商業ギルドとの関係も気になる。


 仕事が減らないと愚痴をこぼすヘイス。

 だが、たとえ暗部のトップがあの船にいたとしても、さらにその上の指示であったのは火を見るより明らかだ。


 そして、犯罪者どもより気にかかるのはミスティのように攫われた子供がいないかどうかだが、これは杞憂に終わる。

 どうやら今回の犯行はヘイスのドラゴンにのみ目標を定めていたようだ。


「おし! あとは俺が処理する。手間をかけさせて悪かったな」


『それはもうよいが、これからどうするつもりじゃ?』


「しばらくはダンジョン攻略しなくてもいいんだろ? もともと隣の大陸には行くつもりだったからな。ついでにコイツらの親玉を締め上げに行くさ」


『そなた、この世界ではひっそりと暮らすと言っておらんかったか?』


「……空耳じゃないのか? とにかく、そういうことだから! ナメられっぱなしだと後々面倒になるの! ファンタジー世界なんてそんなモンなの!」


『我にとっては現実の世界なんじゃがのう。まあ、そなたの好きにすればよい。じゃが、くれぐれも気を付けるのじゃぞ。使徒の換えはそうそう落ちてはこないからのう』


「好きで落ちてきたんじゃねえや! ま、今日は助かった。またすぐに来るからな」


 いつものようにアスラ神との掛け合いを済ませたヘイスは寝ているミスティを抱え上げ、ベッドを収納してコアルームを出て行こうとする。


『その男はどうするのじゃ?』


「おっと、忘れてた。う~ん、とりあえずコアルームの外に放り出しておくか。結界があるなら俺以外は入って来れないだろう。素材の山は見られたくないしな。この子を送り届けたらすぐに引き取りに来る。じゃあな」


 そう言って男をコアルームから引きずり出した。魔法で眠らされているからか、一切の反応はない。

 コアルームの外に出ると、そこはかつてミノタウロス(仮)が門番をしていた場所であり、リポップしなくなった現在はヘイスの転移魔法の目印となるプレートの設置場所だ。

 ヘイスは男を適当に投げ捨てる。万が一目を覚ましたとしても《空間転移》スキルのないこの男にプレートは使えない。自棄になって壊そうとしてもダンジョンの壁並みに強化されたプレートはそうそう壊れはしないだろう。安心して放置できるというものだ。


 ミスティを抱えたヘイスはプレートに乗りダンジョンの出口に転移する。標高1万メートルなので、ここに来るときもそうだが、気休めで風魔法でミスティを包んである。鑑定では異常は出ていないのでヘイスはホッとした。

 そして第一中継地点に跳ぶ。


「しまったな。ボルサスの近くにプレート置いとけばよかった」


 ボルサス再訪のときもそんなことを考えたが、いつの間にか忘れていたようだ。


 仕方なくヘイスは飛び上がる。高高度からの目視転移だ。

 暗闇の中で目視できるのか、という疑念はヘイスの中にもあったが、魔法はイメージ次第、という『神の教え』があるのだ。それに、ここからの転移は3度目である。失敗するイメージは湧かない。レベルが上がればいずれプレート無しでイメージのみで転移できるようにもなるだろう。


「お、明かりが見える。成功だ」


 恙無く暗闇の中の目視転移は成功したようだ。

 滞空しているヘイスの目に祭り最終日で不夜城と化したボルサスの街の明かりが映った。


 時間も時間なので門は閉ざされている。ヘイスはそのまま空から街に侵入し、暗くても独特の造詣の教会を難なく発見、路上に人がいないことを確認して着陸するのだった。


「ミーちゃん! よかったぁ……」


 孤児院のドアを叩くと勢いよくジェシーが飛び出してくる。ヘイスの腕の中で眠っているミスティを見つけて安堵していた。

 シスターも、まだ寝ていない子供たちもやってきた。


「ヘイスさん、見つけてくれてありがとうございます。でも、どうしてこんなことに……」


「シスター、詳しい話はあとで必ずする。今は休ませてやってくれ」


 ヘイスはシスター・アネリアに眠っているミスティをそっと渡した。そして立ち去ろうとする。


「ヘイスさん? どちらに行かれるんですか?」


「まだやることがある。朝には顔を出す」


「……そうですか。お気を付けて……」


 詳しくはわからないものの、ヘイスが孤児院のために何かしようとしていると感じたシスター・アネリアは黙って送り出す。

 ヘイスは軽く頷き、夜の街に消えていくのだった。



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