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第62話 ディスプレイ

新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。


 


 鈴木公平こと改めヘイス・コーズキーは年末年始をボルサスの街で過ごそうと考えてダンジョン攻略を中断して帰ってきた。


 手始めに孤児院にドラゴンを土産に持ってきたが、披露する場所がなく、仕方なく子供たちを連れてギルドの倉庫を借りた。

 そこで新たな依頼を受ける。

 年末年始の祭りでドラゴンをディスプレイするという依頼だった。

 どうせ子供たちに披露した後は売り払う予定であったのでその依頼を引き受けることに。


 今日は12月33日。祭りの初日だ。

 早朝、ヘイスはミスティほか何人かの子供を連れてギルドに向かった。

 子供の半数は先日仕事のためドラゴンを見れなかった年長組だ。小さな子供たちは年長組が面倒を看られる数に抑えた。あとで交替で見物するようで、残りの子供たちからも大きな不満は出なかった。


 ちなみに、祭りの時期では宿を探すのも一苦労だと言われ、シスター・アネリアの好意でヘイスは孤児院で世話になっている。

 たぶんドラゴンステーキに釣られたわけではないだろう。

 ちなみのちなみに、31日32日は孤児院で厨房を借りて料理三昧だった。これは、一宿一飯のお返しというのもあるが、3ヶ月前に買い込んだ食糧の在庫整理でもある。時間遅延100倍機能で3ヶ月経っても実質1日足らずだ。しかし、さすがに魚介類は生のままではもうタイムリミットである。そこで一旦調理しておけばさらに賞味期限が延びるという寸法だ。

 裏技で高濃度の魔素に汚染させるという手もあるが、ヘイスの琴線には触れなかったようである。


 ヘイスはギルドでイベント責任者と合流しディスプレイ場所となる中央広場に向かった。

 この中央広場は名前こそ中央であるが、ギリギリ中央区と呼べる、南西区との境に位置する。これは過去には正しく街の中央にあったため、外壁が拡張され街が大きくなった現在でもその通称が住民の共通認識なのだ。今後外壁がさらに拡張されて街が二回りほど大きくなり孤児院の辺りが街の中央にならない限りは改名されることはないだろう。


 ここには孤児院の隣にあるのとは別の教会もあるという。ヘイスとしてはあまり御近付きになりたくないところである。

 が、冒険者としての依頼なら仕方がないと割り切って、ついでに子供たちと祭り見物はするつもりだった。どちらがついでなのかは本人のみぞ知る、だ。


「おじちゃん、ひとがいっぱい!」


「そうだな」


 肩車したミスティと会話しながら広場とやらを見るが、ミスティの言う通り、結構朝が早いというのに混雑していた。


「ははは。そりゃ皆さんドラゴン目当てですからね」


 ギルド職員が答えを教えてくれた。

 ヘイスはなるほどと納得する。ギルド公式のイベントなので安全のため各方面と折衝して発表されたのだろう。

 先日ヘイスが思いついたようなゲリライベント的に突然街中にドラゴンが現れたらパニックが起きてしまう。祭りの時期だけに混乱も大きいだろう。


 ギルドの倉庫を借りてよかったと胸を撫で下ろすヘイスだった。


 広場では軽いセレモニーが始まった。

 ここは冒険者ギルド主体の街である。領主もおらず、経営はギルド職員に任せられている。一応トップはギルドマスターということになっていた。

 であるからして、セレモニーの挨拶はそのギルドマスターが中心である。ほかに隣の大陸の貴族が来賓として挨拶するくらいだった。


「では、これよりドラゴンを展示する!」


 祭りを開始する挨拶が終わると、ギルドマスターからイベント開始が告げられた。

 当のギルドマスターは演台を降りて行く。

 代わりにヘイスがこの演台にドラゴンを出すのだが、この演台、ギルドマスター一人が挨拶するだけにしては大きすぎた。もとよりドラゴンを展示するために突貫で作られたものである。

 誰かさんが大量に切ったおかげで有り余っている木材を詰め込んで土魔法で周りを固めただけのシンプルなものでドラゴンが乗ってもビクともしない、はずである。

 もはや演台というよりステージだ。


 ヘイスはわざわざステージに登る必要はないので、ステージの下でアイテムボックスを解放した。それも目立ちたくないとの理由でギルド職員たちにまぎれてである。


 ドラゴンがステージ上に現れると観衆から大きな歓声が上がった。

 祭りのボルテージが一気に上がる。


 ここからが祭りの本番だ。



 三日間の祭りでは、ヘイスに特筆すべきことはなかった。

 相変わらず孤児院で寝泊りし、子供と遊ぶ。朝晩はドラゴンの展示と引取りの仕事があったが、それ以外の時間は、年長組と交替しながら小さい子供を連れて街を見物した。中央広場のドラゴンブースも祭り後半には空いてきて、子供たちもゆっくり見物できるようになった。

 買い物に関してはシスター・アネリアから厳しく買い食い禁止が言い渡されているので、テイクアウトして孤児院で振舞った。

 そういう意味ではないとシスター・アネリアにお小言を食らったが、年に一度のお祭りだからと言い訳する日々であった。


 年が明けて1月1日。ヘイスは気にならなかったが、統一暦というものがあり、今年は『神聖天声暦998年』だそうだ。

 アスラ神が何度も千年千年と言っていたことが実感できた、それぐらいの感想だった。


 その祭りの最終日夕方、依頼の最終工程でもあるドラゴンの回収のため中央広場に行くと数人の男たちに囲まれた。

 ヘイスは内心舌打ちする。

 幸いなのは、今日はこの後ギルドでドラゴンの買取についての打ち合わせがあるので、ミスティは連れてこなかったことだろうか。


「あなたがこのドラゴンの所有者だそうで……」


 集団の代表らしき男が話しかけてくる。

 ヘイスより年上に見える。冒険者らしくはないので商人かと当たりを付けた。まさか貴族ではないだろう。


「誰から聞いたかは知らんが、そういうことはギルドに言ってくれ」


 サラリーマン時代はアポなしの飛び込み営業もしたものだ。目の前の商人(仮)がヘイスに突撃をかけたのも理解はできる。

 しかし、ヘイスが話を聞いてやるかどうかは別問題だ。


 ヘイスは素っ気なく対応し、囲みを擦り抜けようとした。

 が、囲みはさらに狭まり、ヘイスを先に行かせまいとする。


「そう急がず話だけでも聞いてくれませんか?」


「……ドラゴンを回収するのはギルドからの依頼だ。それを邪魔するというのならギルドに敵対するってことになるが、いいんだな?」


「敵対などと。私は話がしたいだけで」


「ギルドに言え。さあ、これで話は終りだ。どけ」


「いいえ。話はこれからです」


「おい! そこのギルドの職員! 依頼遂行に邪魔が入った! 排除してくれ!」


 ヘイスはまともに話すことなどないとばかりに、ドラゴンの警備をしていたギルドの職員に大声で呼びかけた。

 ヘイス自身が暴力で排除するのは論外として、転移魔法や飛行魔法、単純なステータス任せで囲みから抜け出すことも出来たが、手の内を晒す必要はないと判断し、職員に任せたのだ。


 ヘイスの声が聞こえたらしい職員は何事かとヘイスたちに近づいた。


「……後悔しますよ?」


 商人風の男はそれだけ言うとヘイスの返事も待たずに、もとよりヘイスは相手にしていなかったが、護衛たちに合図するとその場から立ち去った。


 囲みが解けたことでヘイスの姿を確認した職員が話しかけてくる。


「何かありましたか?」


「いや、祭りともなると頭のおかしな連中が出るんだな」


「は?」


「気にするな。コイツを回収していくぞ」


「はい。これで私の仕事も終わります。いきなり警備の仕事を振られて大変でしたよ」


「俺が言うのも何だが、ご苦労さん」


 ヘイスは職員の愚痴を聞きながら手早くドラゴンを回収する。


 その後は再び面倒くさい連中に捕まらないように足早にギルドに向かった。

 ドラゴンを提出しさえすれば商取引でヘイスが煩わされることはないだろう。

 そう考えるとヘイスの心は幾分か軽くなった気がしたのだった。



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