第59話 また厄介ごとだそうだな
新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。
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『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。
鈴木公平改めヘイス・コーズキーは3ヶ月ぶりにボルサスの街に戻ってきた。
ボルサス付近に転移の魔法陣を設置するのを忘れていたため、アスラルテア山から再び目視転移を繰り返す羽目になってしまったのはご愛嬌である。
それでも早朝と呼べる時間に東門に来ることができた。
冒険者になったのはやはり正解のようで、カードを見せるだけですんなりと通ることができた。税金もここで徴収されることはないので本当に楽である。
門衛にさりげなく今日は何日か聞くと、ちょっと意外な顔をされたくらいですぐ答えてくれた。
12月31日だそうだ。
アスラ神の情報が正しいか確認したのだ。
12月31日といえば、地球では大晦日だが、この世界では一ヶ月は32日で、特に12月は34日、閏年には35日であるのだ。
それでも年末であることには変わらず、街の様子はどことなく忙しそうに見えた。
ただし、ここは南半球なので、夏はこれからなのだ。しかもボルサスは位置的に熱帯地方らしいので街行く人々は薄着である。
ここら辺がヘイスには年末といわれてもピンと来ない点だ。
そんなちょっと特別感を出している街並みを歩き、ヘイスは孤児院を目指した。
今回はギルドは後回しである。
孤児院が、というより教会が見えてきてヘイスは緊張した。
『子供たちに忘れられてたらどうしよう』そんな気持ちもあるのだ。
肉親というわけではない。近所でよく顔を合わせる人ですらないのだ。
孤児院の門前で入るのを躊躇していたが、客観的に見ると、真夏にフードを被ったローブ姿の怪しい男がウロウロしているようにしか見えない。
これでは通報間違いなしだ。
ヘイスは覚悟を決めて門を潜り、ドアノッカーを叩く。
「どなたですか? まあ! ヘイスさん!」
ドアを開けて出て来たのはシスター・アネリアだった。
幸いヘイスのことを覚えていてくれたようで、とりあえず不審者として通報されることはないとホッとする。
シスター・アネリアは上機嫌でヘイスを招き入れた。
子供たちは食事中だそうで、食堂に案内された。
早く来すぎたかな、とも思ったが黙って従う。
「おじちゃん!」
ヘイスが食堂に顔を出すと、ミスティが椅子から飛び降り、ヘイスに駆け寄って抱きついた。
「ミーちゃん、ただいま」
「……おかえりなしゃい……」
ミスティはそう言うと泣き出してしまった。
ヘイスは黙って頭を撫でるだけである。
この涙は悲しいものじゃないはず。ひょっとしたら両親を思い出しての涙かもしれないが、再会を喜んでくれているならうれしいな、とヘイスは思っている。
「おじさん、ちゃんと来てくれたんですね?」
「ジェシーか。久しぶりだな」
「はい。でも、これでミーちゃんも元気になります」
「ん? 具合が悪かったのか?」
ヘイスは慌ててミスティに鑑定をかけた。
「いえ、そうじゃなくて、ミーちゃん、最近ずっとおじさんはいつ帰ってくるのかって皆に聞いてるんです。約束の3ヶ月はまだだから、もうすぐだってしか答えられないんだけど、ちょっと上の子がもう帰って来ないなんて言っちゃったもんだから……」
「……おじちゃん、ウソちゅきじゃないもん」
ヘイスはやっと泣き止んだミスティを抱き上げ、笑いかける。
「ああ。おじちゃんは嘘はつかないぞ? そうだ、もう一つ約束があったな?」
「もう、ひとちゅ?」
「なんだ? ミーちゃんは忘れんぼさんなのか?」
「む~。ミーちゃん、わすれんぼさんじゃないもん! えーと、んーと……あ、どりゃごん!」
「おー。ミーちゃんはちゃんと覚えてていい子だなー。その通りだ。ドラゴンだ」
「おじちゃん、どりゃごん、とってきたの?」
「勿論だ。見たいか?」
「みたいー!」
「「「「「「見たいー!」」」」」」
ヘイスとミスティの会話を聞いていた子供たちまでもが期待に満ちた返事をした。
「そうか、そうか。じゃあ……ここで出すのは無理だな。ジェシー、どこか広い場所はないか?」
「ほ、ホントにドラゴン獲ってきたんだ……あ、えーと、この辺じゃ、ちょっと……ギルドの訓練場か解体倉庫ぐらいしか知りませんね。あとは街の外になっちゃいます」
「そうか。じゃあ、後でギルドに行ってみるか。ジェシー孤児院代表で一緒に来てくれ。子供をギルドの中に入れていいか聞いてみる」
「えっと、これから仕事が……年末は稼ぎ時なんです」
「ん? もう決まった仕事があるのか? じゃあ、しょうがないな。誰かほかの……」
「ミーちゃんがいくの!」
「……うん。ミーちゃんと誰がいいかな?」
「じゃあ、ジョンを連れて行ってください。私と同じ12歳で、今日の『おうち当番』なので、ちょっとギルドに行くぐらいなら大丈夫ですから」
ジェシーから紹介されたジョンは食事を取りつつも手を上げてヘイスに合図した。
『おうち当番』というのは小さな子供の面倒を見たり家事をしたりするのだろう。
「さあさあ。ミスティもジェシーも早く食べてしまいなさい。遅刻しますよ?」
「「はーい」」
シスター・アネリアから指摘され、すでに心配事のなくなったミスティも素直に席に戻って行った。
ヘイスも空いている椅子に腰を下ろして子供たちを見守る。
食事の時間が終り、少し休んだ後、早速ヘイスたちは孤児院を出た。
ミスティはまだ体力がないので、ヘイスと手を繋いだり、抱っこされたり、肩車されたりで、楽しそうだった。
ギルドまでの道すがら、ミスティだけでなくジョンからも色々話を聞けた。ジェシーと同じく9級の冒険者登録をしていてギルドの斡旋で様々な雑用をしているのだとか。
そのほかの話題の多くは直近の祭りについてだった。
なんでも、12月は他の月より2日多いので、それと1月1日の3日間が祭りの期間だそうだ。閏年には4日間になるので楽しみらしい。
祭りといっても、子供にとっては具体的に何をするかわからないそうで、街のあちこちで普段は見られない屋台やパフォーマンスが行なわれるそうだ。教会でのお祈りも特別なんだとか。
それを聞いたヘイスも、世界は違っても祭りは似たようなものだと思ったのだった。
程なくギルドに到着する。
ヘイスはミスティを抱っこしたままである。
「……どこへ聞けばいいと思う?」
「さあ?」
「……よし。アイツにしよう」
子供を抱きかかえたローブ姿ということで注目を集めていたが、全く気にすることなくヘイスは足を進める。
やってきたのは買取コーナー。
「お前、ヘイスか?」
早朝なので利用者はほとんどおらず、すぐにミゲールはヘイスの姿を見つけたようだ。
「よお。しばらく」
「いつ戻った?」
「先ほどな」
「……その子供は? 二人か?」
「ああ、その子供の件で相談がある」
「……言ってみろ」
「実は、ドラゴンを子供たちに見せたいのだが、場所がなくてな。訓練場か解体倉庫をちょっと借りられないか? それで子供たちも中に入れたいのだ」
「ちょ、ちょっと待て! なに? ドラゴンって言ったか?」
「ああ、ドラゴンだが?」
「おまっ……」
ミゲールはそれっきり言葉が続かないようだ。
「それで、子供たちを連れてギルドの中に入るには誰の許可が要るんだ? 事務長か? それともギルマスか?」
「……ちょっと待ってろ。今聞いてきてやる……」
ヘイスの心底大したことがないという態度に、ミゲールは諦観した表情で建物の奥へ行ってしまった。
「ヘイスさん。俺、何でここにいるんだ?」
「説明はこれからだろう? たぶん子供が何人来るとか、保護者はどうするとか、俺が勝手に決められないだろ?」
「ああ、なるほど……でも、仕事で見られないヤツもいるからなあ……」
「別に今日じゃなくてもいいさ。なんなら皆が揃ってるときに街の外に出てもいいだろ? その辺をギルドと打ち合わせしてくれ」
「……わかった。やってみる」
「おじちゃん、ミーちゃんもおてちゅだいすりゅ!」
「そうか。ミーちゃんは偉いなー」
「えへへへへ」
ヘイスがミスティとじゃれていると、ミゲールが戻ってきた。二人の人間を連れて。
「お久しぶりです。ヘイスさん」
「また厄介ごとだそうだな」
ヘイスのリクエストどおり、事務長とギルドマスターの二人だった。
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