第58話 ウソツキおじさんの称号は御免だ
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鈴木公平改めヘイス・コーズキーは本来の任務、魔素回収のためダンジョンを攻略中である。
最初に選んだのは、ヘイスが8時ダンジョンと名付けたところである。
これは、アスラルテア山を中心にした半径400kmの円周上に時計の文字盤のように12のダンジョンが存在するのが由来だ。
さらに半径800kmの円周上には24のダンジョンもあり、合わせて36ダンジョンとヘイスは呼んでいた。
このダンジョン群はアスラルテア山ダンジョンが活動を始めた直後一斉に発生したものであり、アスラ神が異次元からの侵略だと考える理由でもある。
アスラ神の推測では、アスラルテア山ダンジョンを含めた37ダンジョンは魔素の噴出し口の役目があるらしい。
ダンジョンの成長に魔素は必要だが、100%利用することは不可能で大半が垂れ流しされるのだそうだ。
故に、ヘイスがこの36のダンジョンを無力化することは非常に大きな意味を持つ。
大本の次元の穴はアスラ神が塞いでいても魔素が漏れ出している状態なので、それはアスラ神の権能のレベルアップ次第だが、この世界に漏れ出す経路を潰すことは将来的に役立つだろう。少なくとも魔素の塊であるダンジョンコアの回収は重要だ。
ヘイスのアスラ神の使徒としての任務である魔素回収で絶対厳守なのがこの36ダンジョンのコア回収であるのはそのためだ。
よってヘイスは8時ダンジョンから攻略を開始したのだ。
順番に特に意味はない。ボルサスへ向かう途中の中継地点に近かったというだけだ。
しかし、8時ダンジョン攻略後、アスラ神と相談した結果、内側の12のダンジョンから先に攻略することに決まった。
これもそれほど特別の理由があるわけではないが、強いていうと人目の問題だ。
アスラ神はリソースの関係上頻繁に人間世界を観察することは出来ないが、それでも数十年単位で調査はしているようで、魔大陸が滅びてから36ダンジョンに冒険者などが立ち入った形跡はないという。
ただし、見逃した可能性はある。上級冒険者の中には変わり者がいて、わざわざ奥地のダンジョンを探索したがる人種もいるかもしれない。
しかし、この大陸には36ダンジョンのさらに外側にも多くのダンジョンが存在する。冒険者が攻略するにせよ資源を求めるにせよ、人類の生存圏に近い方を選ぶ確率は高い。
ヘイスは任務の遂行を知られたくないので、冒険者との遭遇の可能性の低い内側から攻めることにしたのだ。
8時ダンジョンの次は当然9時ダンジョンを選択。
位置は、アスラルテア山を中心に8時ダンジョンを含む円を描き、12等分すればよい。マップスキルがあれば簡単である。
ヘイスは、やはり魔素吸収で森林破壊したが、8時ダンジョンのときよりも早く9時ダンジョンを見つけることができた。
ちなみに9時ダンジョンと3時ダンジョンは赤道直下にあるが、ドラゴンローブ着用のヘイスはその暑さに気がついていなかったという。
ヘイスは行動を開始した。手順は8時ダンジョンと全く同じである。
今回の任務だが、3ヶ月を予定している。ヘイスが子供たちの前でカッコ付けすぎたのが原因で変更不可だ。
3ヶ月といえばこの世界では96日間。12月は特殊でプラス2日だ。
8時ダンジョン攻略に18日間かかったことを参考にすると、5個は攻略できそうだ。
しかし、あくまで参考である。
ヘイスとの相性が重要だ。
ヘイスにとって魔物の数、強さは障害にならない。ヘイスが苦労するのは階層の広さ、あるいは複雑さなのである。
目的はコアなのだから、階段が見つからなければ話にならない。
アスラルテア山ダンジョンの深層、雪原ステージ。あれが階段の位置がランダムだったら、と今でも想像するとゾッとするのだ。
よって、今回は4つのダンジョンで区切ることにした。
ともかく、潜ってみないとわからない。
「お? 8時ダンジョンと同じ?」
9時ダンジョン一層を探索したヘイスの感想だった。
その結果、ヘイスは体感で18日、実質20日で9時ダンジョンを攻略した。
これは、構造がほぼ8時ダンジョンと同じだったため、階段の場所が見つけやすくなったものの、105層あったせいでその分時間がかかったのだ。
だが、ヘイスにとっては誤差といえよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(……№10コアの消失を確認。マザー・システムへ報告……)
《・・・・・・・・》
(……マザー・システムより応答なし。マニュアルに従い待機……)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その後9時ダンジョンのコアを回収し、アスラ神のもとへ持って行く。
娯楽もないので休憩は最小限にとどめ、というかヘイスにとってダンジョン攻略がイージーモードのゲームみたいなもので、体力はレベルアップのおかげで元気そのものなので、特に時間をおかず、次の10時ダンジョン攻略に取り掛かった。
およその位置をマップで確かめ、森林破壊。入り口の捜索。
すでにルーチンと化した。
入り口発見後、転移の魔法陣プレートの設置、一階層の確認。
ここも8時、9時ダンジョンとそっくりだ。
ヘイスは余裕を持って、だが注意は怠らずに進む。
結果、8時ダンジョンとほぼ同じ構造、階層も同じ97層。よって、タイムは体感15日、実質16日を記録した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(……№11コアの消失を確認。マザー・システムへ報告……)
《・・・・・・・・》
(……マザー・システムより応答なし。マニュアルに従い待機……)
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ヘイスは3つのダンジョンを攻略したことで、36分の3なので10%にも満たないが、ある程度の確信が持てた。
この12の、おそらく36すべてのダンジョンがアスラルテア山ダンジョンの劣化コピーで構造も階層数もほぼ同じだろうと。
気持ちに余裕が増えたヘイスはダンジョン攻略中に魔素の回収も行なうことにした。出遭った魔物はすべて魔素吸収し、アイテムボックスが一杯になったら転移でアスラ神のところに置いてくる。
ルーチンにこの作業を加えたがペースが落ちることはなかった。
その上11時ダンジョンは91階層でさらに時間短縮できた。
調子に乗ったヘイスは予定を繰り上げ5つ目の12時ダンジョンまで攻略してしまった。
ここは87層とさらに少なかったので余裕で期限の3ヶ月に間に合った。
余禄としてアイテムボックスのレベルが12になった。
これはおそらくボルサスで原木を頻繁に出し入れしておかげで経験値が溜まっていて、今回魔素の回収も積極的に行なったからであろうと思われる。
今回のリザルトは。
8時ダンジョン97層。18日間
9時ダンジョン105層。20日間
10時ダンジョン97層。16日間
11時ダンジョン91層。14日間
12時ダンジョン87層。13日間
計81日間(アスラ神調べ)である。
攻略後の休息はコアルームで一晩ずつしか取っていないので実質タイムラグはない。
5級のノルマと子供たちとの約束の期限まで17日も残っていた。
「あれ? 約束……しまった! ドラゴン獲ってくるって約束したんだった!」
『なんじゃ? 突然』
「神サマ! 俺もう一件行ってくる! ドラゴン! 待ってろよ!」
このまま手ぶらでボルサスに戻ったら大惨事だったろう。ウソツキおじさんの称号は御免だとばかりにコアルームを飛び出した。
幸い時計ダンジョンの最下層には、テンプレなのかドラゴンがいた。単純にヘイスが約束を忘れていて魔素に変換してしまったいただけだ。
向かうは、ヘイスの予想では12時ダンジョンと似た位置関係の6時ダンジョン。予想通りなら13日間で帰ってこれる。7時ダンジョンでもよかったが、余裕は一日でも多い方がいい。距離は同じなのだから。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
(……№13コアの消失を確認。マザー・システムへ報告……)
《・・・・・・・・》
(……マザー・システムより応答なし。マニュアルに従い、5つ目のコア消失時の対応を検索……検索完了……これより《勇者召還スキル》の構築を開始……)
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