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第57話 ピッチピチじゃろ?

新作始めました。二作品あります。是非よろしくお願いします。


『鋼の精神を持つ男――になりたい!』 https://ncode.syosetu.com/n1634ho/ 月水金0時投稿予定。


『相棒はご先祖サマ!?』 https://ncode.syosetu.com/n1665ho/ 火木土0時投稿予定。


 


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーは又しても短期間でアスラ神のもとを訪れていた。


「なあ、これって本物のダンジョンコアなのか?」


 そう言って差し出したのは、8時ダンジョンとヘイスが名付けた、今まさに攻略中のダンジョンから持ってきた割れた水晶の如き物体だった。

 ヘイスが本物のダンジョンコアを目にしたのはアスラルテア山ダンジョンのコアが唯一である。それも暗闇でぼんやり光っている場面だけだ。


 無論ヘイスも鑑定で確かめたからこそ破壊して回収してきたのだが、どうも納得でいないでいる。


 何故か?

 一つはやはり鑑定スキルのレベルに自信を持てないからである。

 アイテムボックスは理論上レベルに限界がなくても納得できる。空間と時間は無限だからだ。それに明確なサイズ表示があるので使い勝手も悪くない。

 では、鑑定に限界はあるのか?

 あるとすれば、それは有名な『アカシック・レコード』というヤツだろう。

 だとすれば、レベル10など虫けらレベルかもしれない。或いは99で完全接続が可能かもしれない。

 要するに、アイテムボックスと違って明確な指針がないのが今一信用できないポイントだ。


 もう一つ、信じられない理由がある。


「このダンジョンコア、97層にあったんだぞ? 中途半端だし、階層が少なすぎじゃね?」


 そう。これが理由だ。


 おそらく一般の冒険者にとって100層のダンジョンは難易度の高い分類だろう。ヘイスもラノベ知識でAランクとかSランクとか見たことがある。

 しかし、異世界に転移して来た場所が1000層ダンジョンの最下層だったヘイスにとって100層などイージーのEランクだ。同じ深層という言葉でも100階層の深層部と1000階層の深層部では1フロアの規模が違う。ヘイスの中で階層のインフレが起きているのだ。

 ましてやアスラ神からピンポイントでダンジョン攻略に役立つチートももらっている。

 実際8時ダンジョンを攻略するのに、一日10階層縛りは途中さすがにきつくなって7層ずつ、5層ずつ、3層ずつとなってしまったが、16日でコアルームに到達している。後でアスラ神に時間を確認したところ、18日間だそうで、時計のないダンジョン内なら誤差の範囲だ。


 それはともかく、ヘイスは、この36ダンジョンは千年前にシステムを植えつけた侵略者が創ったというアスラ神の言葉が真実なら1000層ぐらいあっても不思議じゃないと思っていたのだ。

 それが実際に意気込んで潜ってみれば、まさかの97層。肩透かしを食らった気分である。


 だからこそ、このダンジョンコアはフェイクではないかという疑念が生まれたのだ。


『ふむ。何を思ってそう言うのかはわからぬが、それはダンジョンのコアで間違いない』


 だが、アスラ神からは間違いないとのジャッジが下される。

 ヘイスは任務達成できて喜ぶべきなのだが、やはり今一実感がない。


「何を思って、って、だから、97って中途半端だし、ここは1000あるのに、少ないし」


『ふむ。中途半端というのは気分の問題じゃな。そもそもダンジョンは魔物の一種じゃ。通常数年から数十年に一層増える生き物と思えばよい。

 それから、そなたが少ないと思うのは我のおかげじゃな。感謝するがよい』


「成長するのは忘れてたが、神サマのおかげってどういう意味だ? ここのダンジョンに慣れたからそう感じるってことじゃないよな?」


『慣れもあるかもしれぬが、理由は我が次元の穴を塞いでおるからじゃな。仮に魔素の流入をそのままにしておいたなら、この世界のダンジョンは軒並み1000層を越えていたじゃろう。このダンジョンとて2000層はおろか1万層になっていたやもしれぬ』


「んん? どういうこと?」


『ダンジョンは魔物じゃと言ったであろう? 大量の魔素で急成長するのじゃ。我が抑えていてもダンジョンも魔物も増え続けておる。36のダンジョンはここに近いゆえ20年足らずで一層増えておるが、我が魔素を抑えなんだら1年に一層増えたかもしれんということじゃ』


「オウ、アメイジング……俺、一応悪い方の想定で36のダンジョンが全部1000層だったらどうしようって考えてたけど、実際にありえたかもしんないのか……で、でも、つまりこの世界のダンジョンは100層ぐらいってことでいいんだよな?」


『うむ。誤差はあろうが、その認識で間違いない。この場所に近ければ近いほど成長が早いはずじゃな。36のダンジョンも出来たばかりのころは30層前後だったはずじゃ。どれだけ成長が早くとも200層はあるまい』


「だから、そういう情報は早く言ってくれって……ところで30層って、侵略者にしてはショボくないか? ここ1000層なのに。同じ侵略者だろ?」


『うむ。これは我の推測なのじゃが、階層は後々急激に増えることを見越して最初はダンジョンの数を重視したのではないかのう?』


「質より量ってやつか」


『うむ。おそらくこのダンジョンのすべての魔素を一気に吐き出して36のダンジョンを創り、そこで魔物を四方八方に流出させたのじゃろう』


 ヘイスは、1000割る36は……と呟きながら、納得する。


「それが千年前のスタンピードか……ま、確かに神サマのおかげで100層程度で済んだんだな。この世界のヒト、もっと神サマに感謝するべきだよな?」


 ヘイスは、1000層クラスのダンジョンの梯子(はしご)は正直勘弁してほしかった。1000層ダンジョン一つ攻略するより100層ダンジョン10個攻略する方が仕事量的にも精神的にも楽である。

 何より、まだ36分の1ではあるが、8時ダンジョンを攻略して、あのダンジョンがアスラルテア山ダンジョンの劣化コピーであることがわかったので、強くてニューゲームの気分だ。

 1フロアに何日もかかるステージもなかったことも安心の理由だ。勿論ヘイスのチートがダンジョン探索向けというより、ハッキリ言って『ダンジョン殺し』なのも関係しているが。


 ヘイスは日本に帰るため仕方なくアスラ神の使徒になり魔素回収の任務を引き受けたものの、これ以上1000層ダンジョンを攻略しないでいいと聞き、心底ホッとした。

 そして、それがアスラ神が魔素流入を抑え続けていたためとわかり、珍しく感謝するのであった。


『ふむ、そう言ってもらえてうれしくはあるが気にすることはない。そなたの知識にあるような人間の信仰が我のかてになるなどという設定はないからのう』


「設定て……じゃあ、気にしないことにするが、今の説明で思ったんだが、それって思いっきり侵略者の邪魔してるよな? 侵略者は何か別の攻撃はして来ないのか?」


『ふむ……ヤツの考えはわからぬ……が、一つ言えるのは侵略者も我と同じかそれ以上の神であるということじゃな』


「いや、俺は神じゃないから、もっとわからん」


『そなたは、我が思考誘導したのもあるが、3年、千日間一人であることに耐えたであろう? 神なれば千年はどうということはない。ヤツも同じであろう。様子見でもしておるのではないかの?』


「……なるほど、スペックが違うのね? 俺は千日様子見は無理。会社ならすぐクビだし、貯金はなくなるだろうし、ああ、寿命の比率が違うんだろうな。3年っていえば人間の30分の1だし。そういえば神サマは何歳なんだ?」


『我か? そうじゃな、そなたの知識でいうガイア理論からするとこの惑星が我自身になる。35億年というところか。じゃが、我に意思が芽生えたのは生命発生直前のことじゃから10億年というところじゃ。ピッチピチじゃろ?』



「ピッチピチって、桁が八つ違うんじゃないか?」


『女性の年齢を茶化すでないぞ?』


「女性って、神サマ、女なの!? ああっ女神様なの!?」


『母なる大地というではないか』


「かあちゃんだったのか!」


 珍しく冗談を言うアスラ神であった。

 これもヘイスが36ダンジョンを攻略した影響なのかもしれない。





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