第53話 またかよ!
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鈴木公平改めヘイス・コーズキーは開拓に精を出していた。
その一方では。
「モンドールさん。どうするんです? 材木の置き場」
「今それを考えています」
「どう考えても千じゃ利かないですよ。軽く万は越えるでしょうね」
「わかってる! だからこうして探してるんじゃないか!」
「もし街に運び込めたとして、誰が処理するんですか? 樵1万人探しますか?」
「それは……」
「もし樵を全員集めたとしても、その間開拓はストップしてしまうでしょうね?」
「こんなに早くなるとは思わなかったんだ……」
「この依頼、ギルド的には成功でしょうか、失敗でしょうか?」
「俺はこの目で確かめたんだが、整地は完璧だったぞ? 今すぐ耕作できそうなくらい、雑草一本なかった。だがなあ……」
「切った木だろ?」
「ああ。せっかく整地したところの半分以上に木と根っこが積まれてたぜ。あれじゃあ、元の森と大して変わらないな」
「それじゃ意味ないじゃないか。時間が経てば森に戻ってしまう」
「そもそもアイテムボックス持ちだからって、欲を張って今の開拓現場から離れすぎた場所を選んだのが失敗の原因なんでしょうね」
「そんなこと今更……待てよ。残り3つの場所はまだ手付かずじゃないか?」
「今から変更するのか? ヘソを曲げられたらどうする? 除名も脅しにならない相手なんだぞ?」
「今更計画を止めるわけにはいかない。もう上級冒険者として見るしかない。私が頭を下げます。いや、ギルマスにも下げてもらいましょう。開拓が進むのは間違いないですから」
「そんなことするなら最初から上級冒険者に依頼すればよかったんじゃないか?」
「それは話が違うだろう? 上級の連中には以前から打診はしているが色よい返事がないんだ。だからこそ事務長の話に乗ったんだろ? 今こうなってるのは俺たちのダンドリが悪かったせいだ。アイツはよくやってる。仕事に不備はない」
「もっと時間をかけて計画すればよかった……」
「それじゃアイツがあっという間に中級になってしまう。だから慌てて依頼することになったんだろうが」
「確かに、時間がありません。私はギルマスに話しに行きます。君は事務長とミゲールさんを呼んできてください。彼のことならアドバイスしてもらえるでしょう」
こうして開拓推進本部では新たな動きがあった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
異世界生活8日目にして開拓4日目。
正午も近くなったころ、ヘイスに意外な訪問者があった。
「おや? 皆さんお揃いで」
場所的に意外だったが、すべて見知った顔だった。
ギルドマスターを筆頭に、開発推進本部のモンドール、事務長のアンギラ、買取担当のミゲール、名前は聞かなかったが測量を担当したマップスキル持ちの元冒険者の職員。プラス護衛が10人ほど。
「こりゃ……話には聞いていたが、なんてスピードだ……」
「そ、そうですね。私もここまでとは……」
ギルドマスターとアンギラがヘイスの仕事ぶりを見て驚きの声を上げている。
実際に見たことがあるのはこの中では測量担当の職員とそのときの護衛だけである。それ以外の人間は声を出さずとも驚きは同じだった。
ヘイスはこれまでの三日間で開拓のペースを完全に掴んでいた。
一つのエリアを10等分して、その小エリアを一刻で開拓する。アイテムボックスの容量を基準にするとこのペースが一番効率がいい。
これで一日5刻、10時間労働ではあるが、二日で1エリアが完了する計画なのだ。
現在正午少し前。
ヘイスは小エリア3つ目に取り掛かるところであった。
整地した部分と切り株だらけ藪だらけのコントラストがシュールである。
「何の用だ?」
「ご相談があります!」
「ふむ……」
気合の入ったモンドール言葉にヘイスは少し考えた。
「わざわざここまで来たんだ。話くらいは聞こう」
そう言ってヘイスは大木の幹を2mほど切り取り、さらに縦半分に切った。
それを整地済みの地面に並べた。即席のベンチが二つできたわけである。護衛以外が座るのに十分だ。
ヘイスは一人切り株に腰をかける。
ギルドマスターとモンドールが二人で、残り三人で一つのベンチというように分かれた。
なんとなく誰がメインかわかる気がするが、考えてみれば当たり前だった。
「で? 話とは何だ?」
ヘイスは間違いなくモンドールの方を向いて話を促した。
「じ、実は開拓する場所の変更をお願いしたく……」
「俺からも頼む! この間はすまなかった! このとおりだ! 話を聞いてやってくれ!」
モンドールの話の途中でいきなりギルドマスターが口を挟み、頭まで下げ出した。
だが、ヘイスには何の感銘も受けなかった。
日本でサラリーマンをしていると、こんな場面何度も目にすることがあるのだ。その当時は色々な柵からちゃんと相手をしなければならなかったが、この世界で茶番に付き合う必要はあるのだろうか? いや、ない。
そうヘイスは思っていた。
「頭を上げてくれ。話は聞くといったが、茶番に付き合うとは言っていない。早く本題に入ってくれないか?」
「ぶっ!」
「ミゲールさん、不謹慎ですよ」
ミゲールが思わず笑い、ギルドマスターは苦々しい表情で顔を上げた。
「え、えーと、お願いしたいのは開拓する場所を今の開拓現場の近くに変更してほしい、それだけです」
「それは、俺に何のメリットがある? また測量からやり直しだろう? 時間の無駄だな」
「待ってください! ちゃんとメリットは考えてあります!」
「……聞こうか」
「中級の、6級から5級に昇級出来るだけのノルマです!」
「ほう? 考えたな」
ヘイスはアンギラとミゲールを見た。
二人とも頷いている。
「だが、そんなマネ、許されるのか? 後で問題になるくらいなら地道にノルマを稼いだほうがマシだぞ」
「問題ない」
太鼓判を押したのはギルドマスター。
「依頼のランクを決めるのはギルドの責任だ。今後問題になったとしてもそれは許可した俺の責任で、冒険者には関係ない。そもそも単独で魔大陸の森の開拓を下級冒険者に依頼する方が問題になる可能性が高い。中級どころか上級の依頼でも通じるな」
「ふむ……」
ヘイスはこれを聞いて考え込む。
ギルド側は黙ってヘイスの答えを待っていた。
そもそもヘイスの目的はこの世界の魔素回収である。ギルド登録はその合間の人間的生活に便利だから選択肢の一つとして見ているだけだ。
「……5級になるとノルマは3ヶ月に一回だったな。いいだろう。前向きに考えておこう。だが、時間は有効に使いたい。変更点を詳しく説明してくれ」
「あ、ありがとうございます! そ、それでですね……」
モンドールだけでなく全員がヘイスの意図を汲み、意見を出し合い、そして話がまとまった。
新たな依頼内容は、
面積は残りの3エリア分、半町×半里で現開拓現場近くの北、東北、東を開拓する。開拓途中の現在地は放棄、というか根っこ置き場の一つとする。
開拓済みの北エリアに置いてある原木は3つの新エリアに分散して、旧北エリアを完全な更地にする。これは森林拡大と魔物を食い止めやすくなるからである。
以上だ。
ヘイスにとって肝心の報酬はというと、
依頼達成料は6級の平均100回分。これはギルドにとって十分有利だ。
ノルマは5級昇格分と看做す。これがヘイスにとっての最大の利益であることは、この場の人間も理解し始めている。
少し問題になったのが、元々の報酬である、8級から6級までの昇格ノルマはどうなるのか、ということだった。
「ああ、それは問題ない」
そう言ってヘイスはアイテムボックスを解放した。
「うわっ!」
誰が叫んだかはわからないが、ヘイスがありったけの魔物の死体を取り出したせいである。
「あと2、3日でノルマは達成できそうだ。始めっからこっち狙いにすればこんな面倒は起きなかったんだよな」
「そんな、今更断られても困るんですが……」
「今更断らんよ。また依頼を変更するなら話は別だが……」
「も、もう、依頼の変更はありません! ええ、ありませんとも!」
「そう願いたいね」
それで目出度く話はまとまった。
一行は北側の新エリアに向かった。
そこからは既存の開拓地が垣間見え、斧で木を切る音ばかりではなく人の話し声も聞こえる距離だった。これなら近いうちに開拓地が繋がることだろう。
ここでギルドの職員は測量担当を残し街に帰還する。護衛も半数は戻った。
残るヘイスたちは、またヘイスが食事を用意し、改めて測量を開始する。
面積は同じだが、街に近くなった分移動距離が短くなるので測量時間も減ると思われる。
今日は孤児院に行けそうだな。
ヘイスは森を歩きながらそんなことを思っていた。
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