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第115話 呼ばれもしないのに押しかけてきたんだろ?

 


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーは教会関係者から『勇者』並びに『邪神』の情報を聞き出そうとし、教会側がある程度の確信を持っていることがわかった。やはり情報収集は大事だと思ったヘイスなのであった。



「英雄殿。ドラゴンの寄進には感謝しますが、このような場でふざけるのは感心できませんな。何故勇者様が何十人などという侮辱をするのですか?」


 大司教はヘイスの質問に対し憮然とした態度で答えた。勇者と言えば一騎当千。そうでなければ神に選ばれることはない。そう素直に信じているのだ。


「侮辱? おいおい、戦いは数だっていうだろ? 多いに越したことはないと思うがな」


「勇者様をそこらの兵士や冒険者と一緒にしないでいただきたい」


「そうか? 尚更数がいたほうが戦力になると思うんだがな。それに、ドラゴン丸ごとほしがるってことは、それだけ素材が使われるってことだろ? 全身鎧を作ったとしても、二十人分以上は取れそうだしな。骨や爪なんかも使えるとしたら100人分はあるな。で? 結局勇者サマは何人なんだ?」


「ぐ……さ、3人です……」


「へぇ~? 3人……ドラゴン丸ごと装備に使おうってことなら、勇者サマってのは身長が10尋(18メートル)ぐらいあるのか?」


「う……」


 大司教はヘイスの言いたいことがわかってしまったので、嫌味とわかっていてもこれまでのように地位を笠に着た物言いができなくなっていた。


「……違うみたいだな。3人分の装備ならドラゴン丸ごとは必要ないんじゃないか?」


「だ、だが、勇者様には最上級のものを差し上げたい。そのためにはやはり素材をすべて吟味しなければ」


「そう来たか……ったく、メンツと利益、どっちも寄越せってがめつ過ぎんだろ……」


「なっ!」


 平民にここまでハッキリと言われたことはないだろう神官たちは、このヘイスの発言にギョッとしていた。

 ドラゴンの入手が勇者を理由にされて絶望的になっていた王国の代表者と商人ギルドの代表者たちは内心小気味よく思っていた。


「あー……ホントはもう関わりたくなかったんだが、このまま延々と付き合わされちゃたまらん。ギルマスの爺さん、俺が口出ししてもかまわねえだろうな?」


 ここでヘイスは冒険者ギルドのトップにお伺いを立てた。口の利き方はアレだが。


「今更だな。ワシも辟易しておる。この場の人間が納得するならそれでかまわんよ」


「よし。爺さんの言質も取れた。さっさと決めちまおう。先に言っておくが、俺の提案に文句があるなら、ボルサスはドラゴンの権利を完全に放棄する。ドラゴンが腐ってダメになるまで話し合いでも戦争でもしてろ。ナジャスもいいな?」


「は、はい。それでかまいません」


 返事をしたのはナジャスだけだった。

 しかし、その他の出席者も、ドラゴンが手に入る可能性があるのならばと、ヘイスの物言いはともかく、反対はしなかった。


「よし。じゃあ、まず冒険者ギルドは王国にドラゴンを丸ごと売ってやれ」


「おお! 英雄殿、感謝しますぞ!」


 ヘイスとは接点がなかった王国の使者だが、いきなりの当選に驚いたものの、満面の笑みでヘイスを持ち上げる態度になった。

 他のメンバーはしかめっ面である。だが、ヘイスの『まず』という発言に気付いて、次の内容を待とうとしている。


「あまり喜ぶなよ。売るって言ってるんだ。献上じゃねえ」


「そ、そこは一つ、国に対する貢献を……」


「ああ、メンツが要るんだろ? だったらケチくせえこと言わずに高く買ってやれよ。そのほうがよっぽどメンツが立つってもんだろ?」


「それは……」


「じゃあ、次は国が商人ギルドにドラゴンの解体やらオークションの手配やら依頼するんだ」


「おお! それは願ってもないことですな」


「ま、待て! 解体はともかく、何故すぐに手放さねばならんのだ!」


 ヘイスは困惑する国の使者を無視して話を続けた。

 次に喜びの声を上げたのは指名された商人ギルドの代表者である。

 だが、国の使者は、無視されたことはともかく、ヘイスの提案に納得がいかないようであった。

 ヘイスは再び国の使者に顔を向ける。


「国がドラゴンをどう扱いたいかは知らん。だが、独占は悪手だな。この国に何人貴族がいるのかも知らないが、恨まれるぞ? アンタだって貴族なんだろ?」


「う、うむ……」


「じゃあ、剥製にして飾るなんてバカなマネしないで、素直にバラ売りすればいい。少しは手元に残しても元は取れるかもしれないしな。それに、冒険者ギルドと商人ギルドが儲かった分、税金も取るんだろ? 真っ先に買い取ったって事実で満足じゃないか?」


「うむむむ……」


「ああ、それから、話は前後するが、オークションの前に一番いい素材で勇者用の装備作って教会に寄付でも寄進でもしてやれ。それこそ国の面目が立つぞ?」


「何だと!? それでは我々だけが損するではないか!」


「だから、メンツか利益か選べって言ってるんだ。それによ、教会に恩を売るのは、見方を変えれば大層な利益があるんじゃないか? 知らんけど」


「天声教を代表しまして感謝いたします。ミッテン王国の献身につきましては必ずや教会本山に報告いたしましょう」


「あ、いや、まだそうと決まったわけでは……」


 ドラゴン丸ごとの入手は難しいと判断した大司教は、タダで最高品質の勇者装備が手に入るのならそれでも構わないと考えたのか、先んじて礼の言葉を述べた。

 国の使者はその大司教の切り替えの早さにしどろもどろになっている。


「んー、そんなに損した気分になるんなら、勇者装備は国と冒険者ギルド、商人ギルドの三者で負担すればいいんじゃないか? 勇者の支援っていう世界への貢献度もその分減るがな。ああ、逆にやっかみも減るから、いいんじゃね?」


「うむむむ……」


「ワシはよいと思うぞ。利益の大半はボルサスに渡すとしても、労せず儲かったわけだしな。ま、心労は大きいがの」


「私も乗りましょう。ドラゴン一体分のオークションともなれば手数料だけでも莫大なものになります。喜んで勇者様の装備費用の一部を出しましょう」


 ヘイスの新たな提案に国の使者は渋い顔をしていたが、冒険者ギルドと商人ギルドは乗り気の発言をして来た。


「も、持ち帰って検討したいのだが……」


「ダメだ。呼ばれもしないのに押しかけてきたんだろ? せっかく大物が集まってるんだ、この場で決めていけよ。ああ、もし誰かがこの場を抜けるってことになったら、ソイツにはドラゴンは渡さないことにしよっかなあ~」


「「「なっ!」」」


 ヘイスの、ブラフとも本気とも取れる発言に三勢力は驚くのだった。


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