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第102話 ほらな?


 鈴木公平改めヘイス・コーズキーは苦節十数日、ついに依頼完了のサインをもらうことができた!

 これでやっと本来の、邪神の使徒としての任務を遂行することができる。

 だが、冒険者ギルドはそう簡単に解放してはくれないようだ。



「まあ、そんなに急いで結論を出すことはないだろう? 条件はできるだけ飲むようにする。お前はアレだ、金や名誉には全く興味がないクチだろ? それでも自由にあちこち行きたいもんだからギルドカードがあれば便利だし、ノルマの期間は長ければ長い方が面倒も少ない、とか考えてるだろ?」


「俺のような人間は多いのか? まあ、別に隠してるわけじゃないが……だが、わかってるなら強引な客引きは逆効果だってこともわかるだろ? 最終的にはギルドカードの便利さよりも自由を選ぶぞ? それに、ノルマは3ヶ月もあれば十分だ。まさか街と街の間が3ヶ月以上かかるところがあるわけじゃあるまいし、ついでに寄った街で短期の依頼を探せばいいだけだ。メシを食うために金も必要だしな」


 成り行きを見ているナジャスは、『ヘイスさんなら街と街の移動なんて一日もかからないんだろうな』と遠くを見る目になっていた。


「まあ、話は最後まで聞いてくれ。確かにノルマの期間は十分かも知れん。だが、知っているか? 上級冒険者になれば、色々な特典があるぞ? それがほしくないか?」


「特典?」


 ヘイスはその言葉に、思わずナジャスのほうを見た。


「いえ、私は受付担当ではありませんから。おそらく実際に上級に上がってから説明があるのでしょう。私も中級冒険者だった頃は噂くらいしか知りませんでしたし」


「興味はあるようだな。確かに具体的なことは実際に上級になってからだが、触りぐらいは教えてやれるぞ? といっても、上級冒険者には色々便宜を図るってぐらいだ。お前に必要がありそうなのは……ズバリ、情報じゃないか?」


「……情報、なあ……」


 ヘイスは一考の余地があるかも、と思ってしまった。

 そこをチャンスと見てセザルがさらにプレゼンを始める。


「そうとも。中級以下の冒険者には渡せない情報も、上級なら知ることができる。特に上級ともなれば貴族に関する依頼も増えるだろう。その時相手の貴族の情報を持っていると持っていないとでは雲泥の差だぞ? 知りたいことがあれば、秘密裏にギルドに調査を依頼することもできる。どうだ? お前にピッタリだと思うがな」


「んー……例えばだが、俺がある人物の情報をギルドに求めたとして、それは、『俺がその人物の秘密を知りたがっている』という情報がギルドに渡ることになるんだが、その情報の管理はどうなっている? これ幸いと他の冒険者や貴族、その人物本人に俺の情報を売ったりするんじゃないか?」


「そこはギルドを信用してくれ」


「この大陸で、ここを含めて3つのギルドを見てきた上で、とても信用できるもんじゃないって、そう言ってるんだがな……」


 確かに情報はほしいところだが、ギルドの信用性と天秤にかけるとデメリットの方が大きい気がしたヘイスであった。


「おいおい、どうしたらそんな結論になるんだよ。一体、何があったんだ?」


 ギルドが信用されていないと聞いて、セザルは慌てて理由を聞いてくる。

 仕方なく、ヘイスとナジャスはこれまでの道中での出来事を掻い摘んで説明してやった。


「……そうか、そんなことが……ユーブネの幹部たちの態度はともかく、アルマン王国や盗賊の件は本当に本当なのか? 本部ここに報告は? 俺はそんな話聞いてないぞ」


「ボルサスでアルマン王国の関係者が騒いだのは事実です。本部には、私は通信担当ではありませんから詳細はわかりませんが、伝えたはずです。でなければ、こちらでオークションを行う理由になりませんから。盗賊の件は、ケムールのギルドの裁量次第でしょう。背後関係を見極めてからの報告になるのか、あるいはドラゴン関係ということで既に報告しているか、まあ、護衛をキャンセルしたのですからその件で各ギルドに連絡はしたはずです。セザルさんもユーブネから到着予定が早まるって直接連絡を受けてくれたではないですか」


「……俺が聞いているのはドラゴンが納入されることと期日くらいだ。ユーブネからの通信だって正確な日時は聞いちゃいないだろうが」


「それは……」


「正確な日時を言わなかったのは盗賊対策だ。ルートを変えられないなら日程を秘密にするしかないだろう? おかげでユーブネからここまでは盗賊の一人も出なかったぞ?」


「勝手をしてくれたな。それは警備方の仕事だ」


「お前だって、ドラゴンが届けばそれでいいって言っただろうが」


「言ったかもしれんが、常識ってモンがあるだろうが!」


「そんな常識、ゴブリンにでも食わせろや!」


「まあまあ。お二人とも、そうケンカ腰にならなくとも」


 始めはヘイスに対するプレゼンだったが、いつの間にか売り言葉に買い言葉で空気が悪くなった。そこをナジャスが仲裁する。


「セザルさん。ドラゴンは本部にもう納入されたんです。喜ぶべきことであって八つ当たりすることじゃないでしょう? ヘイスさんも。もうサインはもらえたんですから。あとは通常の冒険者として振舞ってください。指名依頼されるのもヘイスさんの能力なら当たり前のことです。ギルド職員としては、そう頑なにならないで、前向きに検討してほしいんですがね」


「……ああ、悪かった。これから色々準備しなけりゃならないと思ったら、つい、な」


「前向きにっていっても、これ以上時間を取られるのはカンベンだぞ? ギルドも信用ならねえし……」


「セザル! ドラゴンが届いたとは、どういうことだ! おおっ! 本当にあるじゃないか!」


 ナジャスの仲裁が上手くいきかけたところに乱入者があった。


「ほらな?」


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