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第100話 準備不足にもほどがある

100話達成!

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


――――――――――――――――


鈴木公平改めヘイス・コーズキーはついにギルド本部でドラゴンを納品した!

だが、責任者からは更なる頼まれごとがありそう!?



「そんなこと言わずに、話だけは聞いてくれないか?」


「断る、と言っている。どうせアレだろ? オークションまで預かっておけって話だろ? 誰がやるか! お断りだ、お・こ・と・わ・り!」


ミッテン王国・冒険者ギルド本部・買取部門部門長であるセザルは、これまでこの国でヘイスが出会ったギルドの幹部たちよりはよほど話がわかる人物だと、そう思っていた。

だが、実際にドラゴンを目にして、急に小物っぽくなった気がする。


「まあまあ、ヘイスさん。話だけでも聞いてみましょう。断るのはそれからでも遅くないでしょう?」


同じギルド職員としてナジャスが助け舟を出すが、断ることが前提となっている言い回しなのは、ヘイスの思考パターンに慣れてしまったからだろう。


「……じゃあ、一応聞いてやるが、期待はするなよ? 俺はすぐにここを離れるつもりだからな」


「待ってくれ。頼みたいのはお前の予想しているとおりのドラゴンの保管だ。だが、オークションまでとは言わない。他のアイテムボックス持ちの手配が終わるまででいい。何とかならんか?」


「そこはかとなく、済し崩しにオークションまで働かせられる未来が見える気がするんだが、今日中に見つかるんだろうな?」


「無理だ。元々の予定だと一ヶ月後、ユーブネから通信を真に受けたとしても10日後にドラゴンの受け入れを考えていたんだ。今日明日でアイテムボックス持ちが見つかるかは運次第だ」


「ここは王都で本部なんだろ? アイテムボックス持ちなんて掃いて捨てるほどいるんじゃないのか?」


「そんなにいるわけないだろうが。お前、自覚のないタイプか。それでいて高レベルかよ。扱いにくいヤツだな」


「俺が扱いにくいタイプなのは自覚してるよ、これでもな。そんなことはどうでもいい。いつなら見つかるんだ? 明後日か? 明々後日か?」


「わからん。見つかってもそいつが信用できるか調査は必要だからな。せっかくのドラゴン、持ち逃げされたら大事だ。だからお前さんに引き続き頼みたいんだ」


「俺こそ信用ならないタイプだろうが」


この暑い地でも薄汚れた(ように見える)ローブを着て、フードで顔を隠している。誰がどう見ても不審者だろうというのはヘイスも自覚している。


「何を言っている? このドラゴン、お前の物だろう? 嫌がらせや報復のため以外に持ち逃げする意味はない。こっちもお前になら持ち逃げされても実害はない。当てにしてた利益がフイになるのは腹立たしいがな」


「……ある意味信用されてて涙が出るぜ……一応ボルサスに売ったはずなんだがな?」


「書類の話だ。金はまだ動いちゃいない。こっちに瑕疵があればすべてが白紙に戻る。それはギルドも望んじゃいない。そういうわけだ、もうしばらく何とかならんか?」


「……いつまでと確定しているならともかく、そんな曖昧な話においそれとは乗れんな。そもそも解体して売るんだから、アイテムボックスは必要ないんじゃないか?」


「ああ。最初はそのつもりだった。通信じゃ売り物の状態は確かめられないからな。無傷とは聞いていたが、ここのギルドの連中は俺も含めて話半分だった。どうせ高く売ろうとして話を盛ってるんだろう、ドラゴンを倒したにしては傷が少なめだから無傷と言い張ってるんだろうってな。解体して売り出すんだから、大物になれば傷の有無はそこまで査定に影響しない。そう考えて無傷云々については気にしてなかった。さっきコレを見るまではな」


セザルはドラゴンの死体を見上げて、嘆息する。

そして再び話を続けた。


「確かに解体してオークションにかける予定だった。それならオークション前日まで倉庫に保管しておけば問題ないだろう。だが現物を見てそうもいかなくなった。ありえないだろう? 言葉通りの無傷ってのはよ。なにか? コイツは病気か寿命で死んでたのを拾ってきたのか? それとも毒か? ドラゴンに効く毒って何だよ!?」


セザルは次第に興奮し出し、最後の方は誰に対するかわからない理不尽に吼えていた。

そして、理不尽の代表であろう、邪神の使徒は口を噤んでいた。『魔素吸収』が病気でも寿命でも毒でもない、正に理不尽の体現なのだから、正直に教えるわけにはいかないのだ。


「……というわけでな、このドラゴンの売り方は改めて検討をしなきゃならん。丸ごと買いたいって連中もいるしな。さぞ高く売れるだろうよ。だから、せめて会議の結論が出るまでかアイテムボックス持ちが確保できるまで待っててくれないか?」


部門長という肩書きでありながら、セザルはギルド側の事情を一般冒険者に明かし、協力を求めてきた。

その一般冒険者のヘイスはというと、不機嫌な表情のままである。


「話はわかった、といってやりたいところだが、何一つ情報が増えてないな。いや、逆にくだらん裏話を聞かされた気分だ。話半分で聞いてた? 改めて検討? 本部ってのはバカの集まりなのか? 今日いきなり持ち込んだわけでもあるまいし、準備不足にもほどがあるだろう。こっちは親切にボルサスからだけじゃなく途中のナントカって街からも予定より早く着くって連絡してやったよな? 何日経ったと思ってる? 到着即日オークション開始しろとは言わないが、せめて受け入れ体制を整えておくぐらいはしておけよ。これなら、大陸上陸と同時に襲ってきたアルマンのほうがマシってもんだ」


ヘイス、全力のダメ出しである。

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