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【2】ドラゴンナイト 『創生』  作者: 生丸八光
7/10

7話 再び・・・

サツキに(にら)まれサイラスは、黙っていた・・・


黙ったままのサイラスにサツキは


「ゼノン様に会いに、天界に行ったんじゃないの!なぜ魔物と・・・話しなさいサイラス!」


サイラスにとって、サツキは世話になった数少ない人間の1人・・・


「天界には行って来ました・・・」

サイラスは口を開く・・・

「天界で冥王様を呼び寄せ・・地上に・・・」


「・・・冥王様?・・どういう事・・何をいってるの?」


意味が分からなかったサツキだが・・・


「冥界から魔物が出て来た事に、あなたが関わっているのね・・・」


と言うと、サイラスは静かに頷いた・・


「何故そんな事を・・・」

「私は、魔物も地上で暮らせるようにしたいのです!」


サイラスの言葉に驚くサツキ!

「魔物が地上で暮らす!そんな事が許される分けないでしょ!」

「何故です!何故、魔物が地上で暮らす事が許されないのですか!」

「そんなの決まってるわ!魔物は人間を食べるの!一緒には暮らせない!」


サイラスは小さく溜め息を付くと

「サツキさん!人間は都合の悪い者は受け入れず、気に入らない者は排除する。そうやって地上を支配してきた・・・その中で苦しんでいる者には目を向けずに・・でも、魔物はそんな事はしない!魔物はどんな者でも受け入れてくれるんです!私は地上をそんな世界にしたいのです!」


「あなたがやろうとしている事が理解出来ない・・魔物に取り込まれてしまったとしか思えないわ・・地上に魔物を呼び寄せ、何がしたいの?世界を闇にして人類を滅亡させたいわけ・・・」


「滅亡・・・それはそれで仕方のないことです・・人間は元々滅び行く種族なのです・・・もうすぐ、冥王様がおいでになる。私は、この地上を冥王様に(おさ)めて戴きたいのです!冥王様に(ささ)げたいのです!サツキさん!」


「サイラス・・・あなた、いつからそんな考えを・・」


悲しげにサイラスを見詰め、覚悟を決めた!

「知ってしまった以上、このまま、黙って見過ごすわけには行かない!」

サツキは素早く動き、サイラスの腹部を金属の杖で突き刺す!溢れ出た血がボタボタ落ちる!


「あなたは、取り返しのつかない事をしたの・・」


そう言い残し、サツキは走り去って行く・・・



サツキの背中を見詰め地面に倒れ込むサイラス・・傷口を押さえるが、ドクドク溢れ出る血・・・薄れ行く意識と痛みの中、懐から不老長寿の実を取り出し飲み込んだ所で力尽きた・・・



馬に飛び乗り魔防壁に向かうサツキ!


魔物が進軍している列の横を一か八かで駆け抜けて行く!



魔防壁では、魔物に勝利したことを知らせる伝令を走らせ、祝杯をあげていた。

クモキとソラキも酒を飲む事はないが、(すみ)に座って一緒に勝利を祝っている・・・兵士の1人が


「いやぁーっ!隊長の作戦は大成功でした!さすがです!」


「まっ!当然の結果だな!ハッハッハッ!」

ベルンは、上機嫌でジョッキを持ち上げ一気に喉に流し込む!隣にいる王子もご機嫌な様子で酒を飲み


「メイランドは、ここにいる兵士全員のお陰で救われた!王に代わって私から礼を言わせてもらうよ!ありがとう!」


「王子!我々には、勿体ないお言葉です!我らは、当然の事をしたまでです!」


そこにサツキが飛び込んで来た!祝杯ムードを一変させる差し迫った表情で・・


「みんな逃げて!魔物の大軍がすぐそこに迫ってる!」


隊長のベルンは、すぐに立ち上がり壁の向こう側を見に走る・・・音もなく静かな暗闇が広がる中に、魔物の嫌な気配・・匂いを感じ取る・・・そこに、王子も駆け寄って来た・・・


「王子・・飛んでもない奴等が、わんさか居やがるゼ!」


すぐに伝令を走らせ、魔物の襲撃と全軍集結の要請を出した・・・が、サツキは


「王子!撤退するべきです!魔物は本気で地上を侵略するつもりです!サルタン王国と力を合わせ対向しましょう!」


王子の手を取り、説得しようと試みるサツキ・・・


「サツキ・・・我々が撤退する事はない!」

王子はそう言うと

(あか)りを入れろ!奴等が攻めてくるぞ!」

臨戦態勢を整える!



魔防壁は、かがり火で暗闇の中に赤々と浮かび上がり、兵士の闘志も再び燃え上がった!


魔物の大軍は、無気味にゆっくりと、静かに進軍を続けて来る・・・



洞窟の前で気を失っていたサイラスが目を覚ます!刺された傷の血は止まり傷みも感じない・・・傷口も綺麗に治っていた・・・


『不老長寿の実で助かったのか・・』


サイラスが立ち上がった所に、魔獣の戦車に乗った冥王が現れた!


「どうした?サイラス!そんな所に突っ立って!」


「冥王様!」

サイラスは膝間付き

「冥王様をお待ちしてました!」


「そうか!お前も一緒に乗って行くか!」


「はい!喜んで!」


戦車に乗り込んだサイラスの目は輝いている!冥王の隣に腰掛け、未来への希望に溢れていた・・・













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