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【2】ドラゴンナイト 『創生』  作者: 生丸八光
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6話 魔防壁

メイランドの西にそびえ立つ魔防壁は、魔物が冥界の扉から攻めて来ると言う恐怖から、何度も増築と補強を()り返し巨大な砦となっていた。

岩壁と岩壁の(あいだ)(つな)ぐ5階建てで、中央の門は3重になっている。


魔物の襲撃を受けて兵士達は、暗がりの中、槍や松明(たいまつ)を手に右往左往に走り回っていた・・・そこに王子が駆け付けて来る。馬から飛び降り

「魔物は、どうなってる!」

矢を両手いっぱいに抱え、ヨロヨロしている兵士に声を掛けた。

「あっ!王子っ!・・大変です!壁の向こうは魔物でいっぱいで・・・ここは危険ですから早くお逃げ下さい!」


王子は、兵士が抱えている矢を半分担ぎ上げると

「この矢は何処へ運べばいい?」

「え?おっ屋上ですけど・・」

王子は屋上の松明の灯りを見上げ

「私は戦うために来た!ここに全軍を集結させ魔物共を返り討ちにしてやるぞ!」


そう言って、魔防壁の階段を駆け上がって行き、クモキとソラキも後に続く・・・


最上階に登った王子は、矢を置いて壁の向こう側を見下ろすと、魔物で溢れ返っている。


100人程の兵士で迫り来る魔物を必死で防いでいたが、魔物は3階まで埋め尽くし4階に迫っていた。


王子は、隊長のベルンを見つけると、弓を手に下に降りて行く!


隊長のベルンは、3本の矢を一度に放ち、立て続けに魔物に命中させていたが、魔物の勢いに押され少しずつ後退していた・・・


「ベルン!苦戦しているようだな!」

「王子!」

王子が矢を放ちながら近付いてくるのを見て、笑顔で応えると


「怪物共がウジャウジャわき出てキリがねぇ!おまけに矢を食らっても平気な奴までいやがる!困ったもんだゼ!」

と言いながら、矢を放ちまくる!


「ベルン!全軍をここに呼び寄せた!それまで何とか(こら)えるんだ!」

「へぇーっ!そいつはありがてぇ話だ!」


笑みを見せる隊長の元に1人の兵士が駆け寄る!

「隊長!そろそろ限界です!」

「そうか・・よぉーし!全員上に引き上げろ!」


隊長の指示で、兵士達は4階へと駆け上がって行くが、王子は

「まだ戦える!」

と剣に手を掛け斬り込もうとする!ベルンは素早く王子の肩を掴み!

「王子、無茶は禁物ですゼ!これも作戦なんですから!」

「作戦!?」

「奴等の足元をよく見て下さい。」


王子は魔物の足元に目を走らせた!


(あぶら)か!」


魔物の足元には油が()かれていた。油は足元だけじゃなく2階や3階の床や壁にも撒かれ、兵士達は油を撒きながら少しずつ後退して行き、魔物達は密集し油にまみれながら攻め上がって来ていた。


王子と兵士全員が4階に上がると、ベルンは鉄柵を閉めて駆け上がり、更に上から油をぶちまけ、次々に火矢を放つ!


火矢が油に突き刺さると燃え広がり、瞬く間に魔物の体に燃え移って行った。


更に、兵士達が上から火矢の雨を浴びせ、炎は大きく燃え上がり、魔物の大軍は一気に壊滅してしまう。


屋上から見ていたクモキとソラキは、100人程の兵士で五千を超える魔物相手に勝利を収めた事に、顔を見合わせ信じられずにいた・・・



真っ黒い煙が立ち込める中、隊長は(すす)で黒くなった顔で微笑み

「魔物は人間を食うって聞いて、俺は逆に奴等を食ってやろうと思ってたが、こうも黒焦げになっちまったら、不味くて食えねぇゼ!ハッハッハッハッハッ!」

と高らかに笑い、兵士も王子も笑っていた・・・



一方、岩影から1人洞窟を見張っていたサツキは、緊張と恐怖の中にいた・・・新たに魔物が、続々と洞窟から出て来ていたのだ!先程の数を遥かに超えて・・・


『どういう事なの?・・まだ出て来る・・しかも、さっきより大きくてヤバそう・・・』


絶望的な恐怖心に自分がどうすればいいのか分からない・・・と、そこに場違いな者がいることに気づいた!


ズラリと並ぶ魔物の前に人がいるのだ!


黄金の鎧を着た魔物と話している男・・・サツキも知っている男だった・・・


『なぜ、サイラスが・・天界に行ったんじゃ・・』


サツキが2人の様子を見ていると、そこに傷を負った魔物が駆け込んで来る!


「ギムグル様~!みんな()られちまったでゲス!全滅でゲス!」

それを聞いた黄金の鎧のギムグル

「ほーっ!人間もなかなかヤるじゃないか!これなら、少しは楽しませてもらえそうだな!」


そう言うとギムグルはサイラスに

「どうする、お前も行くか?」

「えっ?私は、戦いはちょっと・・ここで冥王様をお迎えします・・」


「そうか!わかった!」

と応えると、魔物の大軍に向かって


「よーし!(とむら)い合戦だ!行くぞぉー!」


魔防壁に向かい、ゆっくりと進軍して行く・・・



魔物の大軍を見送って、一息付いたサイラスの目の前にサツキが姿を現した!


「サイラス!どういう事なの?なぜ魔物と一緒にいたの・・・」


「サツキさん・・・」


サツキは、サイラスをキツく睨み付けた・・・












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