4話 天界の扉
冥王は不敵な笑みを浮かべ、天使が来るのを待ち構えていた。
異変を感じて天空の城から3人の天使が様子を見に出たが、冥王に近付くに連れ、ただ事でないと感じ始める・・
「この気配・・嫌な感じだ・・」
1人の天使がスピードを緩め・・
「おい、待て!この気配を知っているぞ!」
その言葉に、2人の天使が気配を探って同時に思い出す!
「セイランだ!」
声が揃って、互いの顔を見合わせた・・
「どうやって天界に・・」
「こいつは大変な事になったぞ!また、天界で暴れるつもりだ!」
冥王は、かつて天使として天界で暮らしていたが、退屈な生活から他の天使との不和が生じ、天使全員を相手に暴れ回り、天王の怒りを買い、冥界へと追放されたのだった・・
その時の事を思い出した天使の1人は、恐怖で近付けない・・
「仕方ない・・お前は応援を呼んできてくれ」
「すみません・・」
2人で冥王の元へ向かう・・
天使が来るのを待っていた冥王は、中々来ない事に苛立ってくる。
「ったく!呑気な奴等だな!」
苛立つ気持ちを紛らす為か、手に力を込め、溜めた力を天空の城へ解き放つ!
一筋のエネルギーの塊が天界を切り裂くように飛び、2人の天使のすぐ側をかすめ、天界に浮かぶ島を破壊し、天空の城の一部を吹き飛ばした!
城の一部が吹き飛び、慌てて大勢の天使が飛び出す!
「クックック・・面白くなってきた!」
冥王が更に力を解放すると天界が暗闇に包まれ雷鳴が鳴り響く、稲妻と共に激しい嵐が炎となって巻き上がり、天使の前に渦巻いていた!
天界が一変し、たじろぐ天使に冥王の攻撃が襲い掛かる!
頭上から矢のように光が降り注ぎ、触れた物を切り裂く!天使達が必死で避け続けると空間が引き裂かれ、中から冥界のマグマが嵐と共に襲い掛かって行った!
必死で逃げ回る天使を嘲笑いながら、冥王は天界の扉を目指して飛んで行く・・
2人の天使が後を追い掛けたが、冥王は扉を越え、門番の目の前で天界の扉を閉じてしまう・・天使が天界から扉を開こうにも開かない・・そして、冥界の扉が静かに開き出した・・
「貴様ァ!何をする!」
門番は目の前で扉が閉められ、怒りを露に槍を突き出した!
冥王は槍を掴み、門番を引き寄せると
「久しぶりだなザクドム!まだ、門番をやってるとはな!」
「きっ貴様は、セイラン!なぜ天界に・・」
冥王が天使だった頃にザクドムも天使をしていた。かつては親交があり、久しぶりに顔を合わせた2人だが・・天界で暴れたセイランを思い出し
「貴様を冥界に叩き返してやる!」
槍を振り回し冥王に襲い掛かる!
門番の勢いに押される冥王・・思うように力が出せない・・門番は冥王を槍で押し込み
「どうだ!天界と違って力が出せないだろ!ここは地上と同じ、貴様の思うようにいかんぞ!」
天界や冥界ではイメージを力に変えて戦う事が出来たが、地上ではそれが出来なかった・・
門番は、素早く力の入った攻撃で冥王を攻め込み、弾き飛ばすと天界の扉を開きに向かう。
「そうはさせるか!」
冥王が門番の背中に体当り!
門番は踏ん張って堪えると、冥王をブン投げ天界の扉にブチ当てた!
扉に寄りかかり立ち上がる冥王・・
「強くなったな・・門番になって数千年・・相当鍛えたな・・」
冥王がそう呟くと門番は
「とっとと冥界に帰れ!セイラン!」
と近付くが、冥王は
「そうはいかない!しばらく居させてもらう!」
「貴様の目的は何だ!」
「最近、魔物が増えて冥界が狭くなったんで、地上を戴く事にしたよ!」
冥王の言葉に門番は槍を突き出し
「その為に天界の扉を閉じたか・・思い上がったな・・地上は簡単には落とせぬぞ!」
冥王は、不敵な笑みを見せ
「今頃、魔物共が地上に攻め込んでるだろう・・そして、ザクドム!貴様を倒せば地上は手に入ったも同然だ!」
「私を倒す!」
呆れた門番は、冥王を睨み付け
「数千年に渡り、この扉を守って来た私を倒すだと!」
声を荒らげた門番に冥王は
「フッ・・貴様が不老長寿の実を食べ、いくら鍛えたところで不死の私には勝てまい!貴様に勝ち目はないぞ!ザクドム!」
と言って腰の剣を抜く!
黒い靄の中で鋭い光を放つ剣!風が吹き込んで来るのを感じた門番は
「魔剣か・・」
冥王は門番に向け、何度も魔剣を振り降ろす!
すさまじい風が巻き起こり、幾つもの刃となって門番に襲い掛かった!
門番は力強く両足を踏ん張らせ、槍を高速でブンブン振り回し、風の刃を力尽くで掻き消す!
冥王の攻撃は通じなかったが、ニヤリと微笑み
「魔剣は使える様だな・・」
余裕を見せる冥王に門番は、自分を奮い立たせる様に槍を地面に打ち付け、『何処からでも掛かってこい!』と仁王立ちで冥王を迎え撃つ!
それを見て冥王の目付きも変わる!
何度も魔剣を振り降ろすと、素早く左右に動き、更に魔剣を振り込む!
風の刃を打ち砕こうと、踏ん張り、槍をブン回す門番!
風の刃と槍が激しくぶつかり、踏ん張る門番の背後に冥王が姿を見せた!
門番の背に走る戦慄!
冥王の剣が背後から門番を貫く!
「まっ、こんな処だな・・」
門番は血を吐き出しながらも、振り向き様に槍を突き出すが、冥王はサッっと後ろに下がって間合いを取り、離れた所から激しく魔剣を振り下ろした!
血を吐きながら槍を振り回し、風の刃を迎え撃つが、次々に襲い掛かる刃に門番は、両腕を切り裂かれ槍もろ共吹き飛ばされた!
冥王は剣を納め
「勝負あったな・・」
血を吐き、両腕を失いながらも踏ん張って立ち上がる門番・・冥王を睨み付け
「私を倒した処で地上は手に入らんぞ!人間を甘く見るな!貴様の思う様にいかん!」
「試す価値はあるさ!貴様にも見せてやりたかったが残念だ・・人間共を引きいて、この扉を越え天界に攻め込む処を・・」
「てっ・天界を攻めるだとぉ!貴様ぁ!」
怒りで目玉をひんむき、歯を食いしばった勢いで、切られた両腕から血が噴き出す!
「ぬおおぉ~っ!思う様にしてたまるかぁーっ!」
激高した門番は、力の限り両足を踏ん張らせ、その勢いのまま、渾身の頭突きを地面に食らわす!
「ゴツン!」
鈍い音と共に地面が揺れる!
門番は、地面に頭をぶつけ歯を食い縛り、目を見開いたまま生き絶えていた・・
「フンッ!」
冥王が一息付いた時・・
「ピキッ・ピキピキッ・・」
門番の頭を中心に地面にヒビが広がって行く!
ヒビは、どんどん広がり階段の所まで到達すると、音をたてて崩れ出す!
冥王は、階段の所で崩れる様子を伺っていて、足下が崩れ出すと階段を飛び降り地上へ降り立つ。
瓦礫と共に崩れ落ちて行く門番・・
地上まで落ちた瓦礫は小さな山を築き、その中に門番は埋もれてしまう。山の頂上には、槍が真っ直ぐに突き刺さり墓標となっていた・・
天界と地上を繋いでいた階段は全て崩れ落ち、天界の扉だけが空中に浮かび、もう地上から天界に行くことが出来なくなってしまった・・