第二章 第一話 「遠山雅の憂鬱」
私は何でこんなにイライラしているのだろうか。
実験がうまく進んでいないからか。そんなのはいつものことだ。じゃあ何で。
「光のことがそんなに気になるのか?」
先ほどから、ペットボトルのお茶をちびちびと飲んでいる目の前の藤木廉は、ニヤニヤしながら話しかけてきた。
「は?何言っているの?あんな奴、妄想の彼女と一緒にこのままどこか行っちゃえばいいよ」
私は、図星を突かれてよりイラっときて、目の前のニヤつき顔を軽く小突いた。
そう。わかっている。
私は二宮光にイラついているのだ。
だって彼が悪い。
彼は最近、研究室の風見教授と共に、訳の分からない実験を行い、死んだはずの元恋人に夢の中で会いに行っているとかなんとか。
てんで馬鹿げている。
「ねえ廉。男はそんなに過去の恋愛を引きずるものなの?」
「そうだな。人によるとしか言えないけど、そういう人もいるだろうな。まあ俺だったら過去の女なんかより目の前の美しい女性を優先するけどな」
廉はまたわざとらしく、嫌味っぽくそう言った。
ああ、無性に腹が立つ。
大体、風見葵って何者なの。気になって仕方がない。
風見教授に似ているのなら見た目は整っているのかもね。
「そんなに気になるなら調べてみない?風見葵のことを」
廉は相変わらずのにやけ顔を口だけ動かした。
二章開幕です。
ここから主人公が遠山雅にチェンジします。
そして事件の真相に進んでいきます。
よろしくお願いします。