成長と皇太后
季節は変わり、冬。外ではしんしんと雪が降り、辺りは真っ白だ。
僕は産まれて8ヶ月が経過した。最近は首が完璧にすわり、後ろに倒れる事も少なくなった。たまに倒れる事はあるけど。赤ちゃんって頭が重いから。あと、ハイハイももう少しでできる気がする。父は執務室にベビーベッドを置いたり、僕がハイハイしてもいい様に机の角を丸くしたりしていた。こんな事言ったら悪いけど冷酷無情な父がここまでするとは何を考えているか分からない。
「あーあーあぅ」
僕は暇で足を手で触ったり、天井に手を伸ばしたりして遊んでいた。
「どうした?」
「あう」
父が声を掛けてきたが特に何も無いので適当に返事をしておいた。
「暇なのか?ふむ」
父は僕を抱っこして床に下ろした。床はふわふわのカーペットが敷いてあるから痛くはない。
「遊んでろ」
やった!暇すぎてすること無かったしよくわかってる。さすが父親。
僕はおもちゃを手に取り振ったりしていた。音が出るタイプで振る度にシャラシャラと音が出る。それが結構楽しい。おもちゃも飽きて、僕はハイハイの練習をし始めた。
(よし、ここまでは順調。あとは足を前に出してと)
もう少しで前に進めそうな所で扉が大きな音を立てて開いた。
「ぎゃっ」
僕はびっくりして仰向けになってしまった。もう少しでハイハイできたのに!誰が入ってきた?座って確認してみると
「ハーロルト!」
入ってきたのは顔は美人だけど強気そうな女の人が入ってきた。その後ろには侍女やら護衛らしき人が着いている。女の人は僕を見ると顔を歪めた。
「この!」
パンッッ!!
そして手を振り上げると僕の頬を叩いた。僕はその衝撃で倒れ、頭をぶつけた。
ーーあんたが居るせいで私は不幸なのよ!!あんたさえいなければ!産まなきゃ良かった!!
前世、そう言われて頬を打たれた。それが頭によぎりパニックになってしまった。
「あうぎゃぁぁ!ヒックあぁ!」
床に転がり泣きわめいていると、体が浮き、筋肉の着いた硬い腕に包まれていた。
「ハドリー、落ち着け」
目を開けてみると、相変わらず無表情だけど僕を見つめている父の姿が....。
「母上、俺の息子に手をあげるとはどういうことだ?」
父から殺気が溢れ出した。それが怖くてさらに涙が出てくる。
「あ、あなた!皇帝としての自覚はあるの?!毎日毎日あの女が産んだ子供に付きっきりで!後宮に通って世継ぎを作りなさい!」
「世継ぎならもういるが?」
「まさか、この子供を皇太子にしようとしているの?!そんなのダメよ!皇后も居ないのよ!」
「皇帝である俺に歯向かうのか?それにお前は自分の姪である第1皇妃を皇后にして権力を強くしたいんだろ」
「なっ!母に向かってお前など恥を知りなさい!」
父と女の人は言い争っている。母上って言ってたから皇太后?とにかくこの争いつ終わる?
「あぁぁ!ヒック」
「ハドリー。はぁ連れて行け」
そう言うと女の人は連れていかれる。扉が閉まるまでギャーギャー言ってたけど力ずくで連れていかれた。
「ハドリー、痛いか?少し赤くなってる」
「うぅぅ!」
「はぁ、あの女...!おい、冷やす物をもってこい!」
しばらくすると頬にひんやりとした物が当てられた。前世では殴られたりした時何もしてなかったからびっくりする。そして泣きやみ、落ち着いてきた。さっきの女の人は皇帝の母親、つまり皇太后。皇太后は自分の姪を皇后にして権力を強くしたいらしい。でも姪の第1皇妃は妊娠せず僕が別の皇妃から第一皇子として産まれたから邪魔な存在だそうだ。
父は僕が皇太后から叩かれた事で夜は一緒に寝る事になった。前世では母と一緒に寝るのは夢のまた夢だったから少しだけ嬉しかったのは秘密だ。