電子レンジに捧げる
ショーウィンドウに灯るオレンジ
ターンテーブルの上に飾られた
主役の頬がなぜか冷たい
時が来たのだ
硬い鈴の音が無情に響く
タイプライターにも似た音で
最期の印字が打鍵される
おお
電子機器よ
あなたがたは
付喪神には成れぬのか
友よ安らかに
故郷を離れ
初めて一人を生きる朝から
おまえは常に共に居た
別れの日のあることなど
露にも思わず
毎日々々回るに任せ
心に留めさえしなかった
幸福とは
不幸から見る過去である
我々は穴の空いた絵を眺め
欠けた幸福を夢想するしかないのだ