調合
――――Tips――――
魔王とは、異世界人の成れの果ての姿である。
1000年前女神アイルーが1人の人間を転生させる。
その人間――魔王はコンプ癖の強い人物であった。
その為、魔王は全てのクラスをコンプリートせんと精力的に活動し、レベルを上げ続ける。
だが変異には大きな落とし穴があった。
それは種族単位の変化であるため、価値観が大きく変容してしまう事だ。
魔物が人へと変異すれば、それまで食料としていた人間を同族――仲間や家族――として見るようになり。
また逆に人が魔物へと変異する事で、人間が美味しそうに見えるようになったりする。
この様に、変異は精神に大きな影響を及ぼすものであった。
とは言え、生物には状態や環境に順応する力が備わっている。
その為、それが自身の根幹すら覆す大きな変化であったとしても、時間をかけてゆっくりと慣れていき、最後には多少のしこりを残しつつも折り合いをつけて順応する物だ。
――だが魔王は違った。
魔王にも勿論順応力はあったが、彼女は神から与えられたチートと、経験の蓄積により効率化され続けたレベル上げと収集により、それを遥かに超えるスピードで変異を行ない続けた。
その結果、彼女の精神は度重なる変異により汚染され。
最後の変異を行なった時、彼女の自我は崩壊する。
後に残ったのは、けいけんちを求め続ける一匹の獣。
それがこの世界の魔王の成り立ちである。
―――――とある研究室―――――
強い閃光が眼球を刺し貫き、思わず瞼を閉じる。
それをあざ笑うかの様に光は瞼すら貫き、私の視界を白一色に染め上げた。
次いで爆音。
肌を焼くような熱風が全身を煽り。
強烈な震度が辺りを震わせる。
周囲には焦げ臭い匂いが充満し、私はその匂いに顔を顰めた。
実験は失敗だった。
瞼を開けると、実験室にはもうもうと煙が舞い。
壁には煤が張り付いている。
「何故だ!何故上手く行かない!」
英知の探求に研鑽する私だが、未だその成果は上がっていなかった。
研究とは積み重ね、失敗と挑戦の連続だ。
それは分かっている。
だが遅々として進まぬ現状に、私は思わず声を荒げた。
「一刻も早くあれを完成させなければ……」
私には大きな夢があった。
それは全人類に福音を齎す大いなる――正に希望と呼ぶに相応しい奇跡であり。
それが齎す祝福は世界をバラ色に変える事だろう。
世界の為。
平和の為。
何より人類の新たな一歩を紡ぎだす為。
私は成し遂げなければならないのだ。
「諦めてなるものか」
棚に並んだ無数の薬品や鉱物、薬草類を無作為に机の上に並べ。
そして大きく深呼吸する。
焦りは禁物だ。
実験には私のスキルが必要不可欠であり、残念ながらその待機時間はまだ解けてはいない。
故に、次の挑戦までにはまだしばしの間がある。
私は目を瞑り、思いを馳せた。
何もない痩せた草原。
そこが大きく隆起し、やがて大きな山を形成する。
山と山の間には深き谷が生み出され、それは全てを包み込む包容力を内包していた。
その幸せな光景に思いを馳せ、眦に涙がうっすらと浮かぶ。
私はそれを指でふき取り、余韻を楽しんでからゆっくりと目を開ける。
気付けばクールタイムはとうに過ぎていた。
迷わずスキルを発動させる。
右手に半透明の球状の器が現れ、そこに複数の素材を放り込むもうとした時――
コンコンと扉がノックされ、集中力が乱されてしまう。
「誰だ?入れ」
少々煩わしく感じながらも、私は返事を返した。
木造の重厚な扉が開き、一人のメイドが姿を現す。
「カオスさん。お昼の準備が出来ましたよ」
オッパイメイド――ニーアが微笑む。
いつ見ても素晴らしい乳だ。
その豊かな胸を押し上げるアンミラ風メイド服も、凄く良く似合っている。
100点!
「ああ、すまない。今行くよ」
全人類巨乳化計画の要たる豊胸薬の完成は急務だ。
だがそれよりも、もっと大事な事がある。
それは仲間との――オッパイ鑑賞だ。
俺は研究者ごっこをやめ、食卓へと向かう。
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