三つ指
「はぁ!」
無造作に突っ込む。
そこに聖王女が手にした黄金の剣が振り下ろされた。
ごつい体つきだけあって、なかなかの速さだ。
だが、いくら何でもこの程度で聖王国最強はないだろう。
アッシュの言葉は、上役に対する只のよいしょだったという訳だ。
深読みするなら、俺もそれに合わせてちゃんと手を抜けとのメッセージともとれるな。
だが断る!
「ふん!」
姫様の振り下ろした剣を、俺は人差し指と中指の間で受け止めた。
よいしょしないのには、理由が2つある。
1つはポーチが見ているからだ。
彼女の前で無様なプロレスごっこを晒すつもりはない。
もう1つは――胸がほとんど揺れないからだ!!
王女の鎧が胸の下半分をがっちり固定してしまっている。
その為か胸が全然揺れない。
幾らデカいとはいえ、躍動感を感じられないなら勝負を長々と引き延ばす意味はなかった。
「ほほう。やるな」
聖王女はにやりと笑うと、俺の指の間から力尽くで剣を引き抜き大上段に構えなおす。
どうやら彼女はまだやる気の様だ。
普通に考えて指の間で剣を受けられたら、その相手には絶対に勝ち目がないと思うのだが……
まあその程度の判断も出来ない辺り、ごつくても所詮我が儘に生きて来たお姫様だと言うのがよく分かる。
「次は本気だ」
王女の目つきが鋭く変わり、目の奥に闘志の様な物が宿る。
それと同時に場の空気が変わった。
恐らく、何らかのスキルを使用したのだろう。
それが肌で分かる。
どうやら、本気という言葉はハッタリではない様だ
「はぁっ!!」
俺は素早く体を半身に動かす。
先程まで俺のいた空間を王女の剣が断ち、その豪剣が巻き起こす旋風が俺の頬を撫でた。
「成程。聖王国最強は伊達や誇張じゃない訳か」
人間とは思えないほどの剣速と剣圧。
生半可な腕前なら、今の一撃でその命を容易く刈り取られていた事だろう。
だがそれは人間相手の話だ。
「ふん!」
再び王女が剣を振り下ろす。
俺は再度その一撃を指と指の間で挟んで止めて見せた。
流石にこれで諦めっ――
「ぬっ!?」
腹部に衝撃が走る。
王女が受け止められた剣を迷わず手放し、俺の腹に一発ぶちかましてきたのだ。
完全に虚を突かれて真面に喰らってしまった。
地面を2-3度転がった所で、格好を付けて勢いよく跳ね起きる。
そのまま不敵に笑い、何事も無かった様に体に着いた土を払った。
うむ、我ながら完璧なリカバリーだ。
これなら吹っ飛ばされた間抜けな姿はチャラになるだろう。
たぶん。
「私の拳をもろに受けてなお、平然と立つか」
王女が俺の姿を見て楽しげに笑う。
見た目通りの脳筋思考らしい。
「ならば、これはどうだ」
王女が膝を落とし、左手を地面に着く。
彼女はその姿勢から、まるで放たれた矢の様な速さで突進して来た。
どうやらタックする気だ。
躱す事は容易い。
だが俺は力の差を見せつける意味を込めて、それを正面から受け止めた。
右手の指三本で。
「馬鹿なっ!?」
王女が驚愕の声を上げる。
パワーには相当自信があったのだろう。
それを指三本で止められるとは、流石に夢にも思っていなかった筈だ。
「まだ続けるか?」
「いや、私の負けだ」
ひょっとしたら鞭でも取り出すかと思ったが、そんな事は無かった。
「認めよう。お前の強さを」
そう言うと、聖王女は屈託のない笑顔で左手を俺に差し出す。
俺はその手を握り握手する。
王女の手はごつごつとして、触り心地はあまり良くなかった。
個人的にはごつごつした手等ではなく、その豊満な胸と握手したかったが、ポーチも見ているしまあしょうがない。
後でこっそり触らせてくれんかな?
駄目かな?




