お菓子(後)
「お、いたべ」
少し東に飛んだ所で目標を発見。
私はその真上で翼を畳み、重力に任せて落下する。
「!?」
枝葉の隙間を抜け、冒険者と魔物との間に着地した。
私の急な登場に、魔物と冒険者。
両方の動きが止まる。
魔物の数は5匹。
内二匹はワイルドベアだ。
「うせるべ」
「ぐおぉぉぉぉ!」
元同族のよしみで警告してやったが、聞きやしない。
体が小さいから弱いとでも判断したのか、ワイルドベアは雄叫びを上げて私に襲い掛かってくる。
相手の強さも分からないとは……この森のワイルドベアは弛んでるとしか思えない。その元同族の間抜けな判断に小さく溜息を吐き、私は肩を竦めた。
「あぶない!」
背後から、悲鳴に近い女の叫びが響く。
どうやら冒険者の女も見た目だけで強さを判断している様だ。
良くその程度で、こんな場所で狩りをしようと思ったものだと呆れてしまう。
「間抜けばっかだべ」
「ぐぎぁ」
四つん這いで突進して来たベアの頭を片手で掴み、そのまま力を籠めて容易く握り潰してやった。
脆いものだ。
その際、生暖かい血飛沫が勢いよく飛び散り、私の顔や体を汚す。
サラ辺りは汚いとか言ってきそうだが。
私自身は、こうやって血を浴びるのは嫌いではない。
自分が強者であると実感できるからだ。
頭部を粉砕された魔物の巨体は大きく揺れ、どさりと音を立てて私の目の前で地面に崩れ落ちる。
その様を見て、背後の魔物達も実力差がハッキリと理解できただろう。
私は背後の魔物達に再度警告を放つ。
「まだやるべか?」
その言葉に、残りの4匹は文字通り尻尾を巻いて逃げていく。
全部倒して経験値にしても良かったのだが、私は一刻も早くお菓子を食べたい気分だった。だから今回は見逃してやる。
「ひっ!?」
振り返ると女が悲鳴を上げる。
冒険者全員、私を見るその表情が恐怖で強張っていた。
まあ小さな子供がいきなり空から現れて、上位の魔物の頭部を握りつぶせばその反応も仕方ない事だろう。
「あ、ありがとう。助かったよ。所で君は……」
冒険者の1人――リーダーらしき男が恐る恐る前に出て礼を言う。
私の事を聞いてきたが、興味がないので手を突き出して要求だけ伝えた。
「お菓子よこすべ」
「へ?お菓子?」
「助けてやったんだ。よこすべ」
「え?あ、ああ……そんなもので良ければ」
私に言われ。彼らは慌ててバックパックを漁りお菓子を取り出す。
それを素早くひったくり、私は上空に飛び上がる。
これさえ手に入れば、もはや彼らに用はなかった。
ひょっとしたら、森を出るまでにまた魔物に襲われてピンチになるかもしれないが、そこまで面倒を見る気はない。
精々頑張れ。
「ん~、上手いべぇ」
私はそれを頬張りながら、鼻歌交じりに帰途に就くのだった。




