カオス
カオス。
それはアンデッド系、最上級クラスの一つだ。
リッチとレイスの進化系に当たる訳だが、今一よく分からない謎のクラスだ。
その見た目は筋骨隆々の茶色い体をしており、額からは二本の角が生えていた。
手足の指から生えた爪は鋭くとがり、更に背中には蝙蝠の翼の様な物まで備わっている。
ハッキリ言ってアンデッドぽくない。
どちらかと言うと、悪魔系の見た目だ。
まあヴァンパイアなんかも見た目はそうなんだが。
但し見た目だけで、あっちは中身はゴリゴリのアンデッドだ。
それに比べてカオスは能力もアンデッドぽく無かった。
まず日の光や、聖属性といった弱点が完全に消えていた。
更に、ステータスの耐久力の表記がLCからHPに変わっている。
「おおお、随分かっこよくなったべや」
ベア子が僕の姿を褒める。
そう、僕はレベル60に達し、念願の最上級職へと進化したのだ。
それがカオス。
「ワオワオーン!」
「ポチが美味そうって言ってるべや」
それりゃまあ、アンデッドアンデッドした以前までの見た目よりは美味そうではあるだろう。
まあ一応誉め言葉として受け取っておこう。
「確かに上手そうだべ。どれ一齧り」
「いってぇ!」
ベア子が齧りついた瞬間、腕に痛みが走る。
久しく忘れていた感触に思わず声を上げてしまった。
つうか、アンデッドなのに何で痛み?
「あいだ!あいだだだだ!」
人が痛いつってんのに、ベア子は俺の腕をガジガジ齧り、肉を引き千切った。
こいつ容赦がないにも程がある。
見ると傷口から青い血が垂れていた。
痛みに血とか――青いけど――益々アンデッドぽく無いな。
「おお、こりゃ美味い。ポチも食べるべや」
「いやいやいやちょっと待て!痛いっつっただろうが!」
当たり前の様にポチに勧めるので、思わず待ったをかける。
正直、肉を噛み千切られた割にはそこまでの痛みはない。
鈍いのか耐性があるのだろう。
しかし痛いもんは痛い。
他に食う物がないならともかく、そうでもないなら勘弁してほしい所だ。
「アンデッドなのに痛みを感じるだべか?」
「ああ、どうやら特殊なクラスっぽい」
個人的に痛みなんて100害あって1利無しなのだが、ステータスを見る限りかなり強いし我慢しよう。
そうだ、この際ユニークスキルをスキルポイントで消費して取るのも悪くはないな。
こういう時の為に無駄遣いせずため込んで来たのだ。
ここはある程度放出して、ユニークスキルである痛覚鈍化を習得するとしよう。
「あいたぁ!」
足に刺すような痛みが走る。
見るとポチが俺の足をガジガジしていた。
刺さった牙は骨まで達しているのか、バキバキと大きな音を立てる。
「何やってんのポチ!?」
「ヴァウ」
「ベア子だけずるいって言ってるべ」
焼き餅か。
やれやれ、持てる男は辛いぜ。
って格好つけてる場合じゃないな。
やっぱ結構いたい。
俺は可及的速やかに、痛覚鈍化を習得するのだった。




