乳神様
「クラスチェンジおめでとう」
「ありがとうございます」
俺は感謝の言葉を口にする。
素敵な乳を拝ませてくれた事に対する、感謝の言葉を。
「ぶれないわねぇ」
人生の目標。
俺の生きる――死んでるけど――意味だ。
早々簡単にぶれるわけがない。
これが俺の生き様だ!
「ああ、そ」
呆れた様に乳神様が溜息を吐く。
例え神とはいえ、女性に男のロマンを理解しろというのが土台無理な話なのだろう。
まあそんな事よりも。
「新狩場オネシャス!」
「狩場ねぇ……ここからは少し厳しくなってくるわよ?」
厳しく。
必要経験値が跳ね上がりでもするのか?
上位職になっても、特にそれ程急激に必要経験値が増えた様な気はしないのだが。
「問題は必要経験値じゃなくて、敵の強さよ。あんたのガールフレンド達、レベル的に上級職を狩らないともう殆ど経験値が入らないでしょ?」
ゆくゆくはと考えてはいるが、面と向かってガールフレンドと言われると照れ臭いな。
何だかこそばやくて、体をもじもじさせてしまう。
「人の胸ガン見しておいて、この程度で照れてるんじゃないわよ」
それはそれ。
これはこれだ。
だいたい、乳神様の胸は極まれの夢でしか見れないのだ。
照れている暇などない。
一秒でも多く眺めて、脳内メモリーにがっつり保存しておかないといけなかった。
「まあいいわ。候補は二つよ」
乳神様は右手の人差し指と中指でピースサインを作り、此方に突き出す。
それが視線を遮って彼女の胸が見ずらくなるので、さっさと引っ込めて欲しい所だ。
「……一つは北にあるアスカロンの丘よ」
俺の心の声は聞こえている筈だが、無視された。
手は此方へと突き出されたままだ。
「アスカロンの丘はアンデッド。それも上位のデッドマンとかが出る狩場よ。正直敵はかなり強いわね。でもアンデッド系は経験値が多いから、狩れれば美味しい筈よ」
口振りからすると、狩る事自体がきつそうに聞こえるな。
俺は不死身だからいいけど、ポチやベア子に万一の事があったら一大事だ。
きつい狩場は出来れば避けたい。
「もう一つは東の山ね。こっちのモンスターはアンデッドに比べれば大した事はないわ。でも数が少ないから、レベル60を目指すには大分かかると思うわよ」
安全だけど時間はかかる……か。
まあかかる時間次第ではあるかな。
数十年とか言われたら、流石にシャレにならない。
俺はアンデッドだから平気だけど、ポチ達が皺くちゃのお年寄りになってしまう。
ガールフレンドが老婆とか絶対嫌だ。
「心配しなくても、流石にそこまで掛からないわよ」
なら東の山に決まりだ。
「アドバイスありがとうございます!」
「ま、精々頑張りなさい」
乳神様がやる気なさげに手を振ると、そこで俺の意識は途切れた。




