ゾンビの夜は早い
ゾンビの夜は早い。
日が沈むと同時に獲物を求めて彷徨い出す。
「ヴォエヴォエ(ふぁ~あ。良く寝た)」
欠伸と共に起き上がり、瞼を擦る。
まあ瞼無いんですけどね。
生前の習慣というのは中々抜けない物だ。
やる必要も無いのに思わずやってしまう。
因みにアンデッドは基本眠る必要が無かったりする。
寝た所で、整える体調など無いのだ。
もう死んでるわけだし。
ではなぜ俺が寝っていたのか?
それには2つの理由がある。
一つは、日の出ている時間帯だとアンデッド系はステータスが下がってしまうからだ。
それでなくてもゾンビは弱い。
そこから更に弱ってる状態でうろついて等いたら、冒険者に美味しく狩られてしまうのは目に見えていた。
だから暇潰しがてら寝ているのだ。
起きててもやる事ないし。
まあ別にやられても直ぐリポップできるから、デメリット自体はほぼ無いのだが。
俺を倒す事で他の誰かが楽して得をするのが気に入らない。
自分が必死こいてレベル上げしてる横で、楽して経験値を稼いでる奴いたら腹立つよね?
つまりはそういう事だ。
そしてもう一つの理由なんだが……
それはおっぱい。
じゃなかった、女神様と会うためだった。
女神様は時々俺の様子を見に、夢の中に現れてくれる。
そのふくよかな胸は、南国の果実を思わせるかの様に艶やかであり。
その豊かな膨らみには世の豊穣が詰め込まれ。
その母性の象徴たる双丘は、未来への希望を思わせる。
つまり――とにもかくにも胸がでかいのだ!
正に問答無用の破壊力!!
え?顔?さあ?
胸しか見てないから良くわかんないや。
まあとにかく、デカ乳女神がいつ表れてもいいように、俺は夢の中でスタンバっているという訳だ。
「あーうーーー(はぁ~、やる気でねぇなぁ)」
これから狩りに出かけるのだが、余りテンションが上がらない。
理由は至って単純。
ここ数日、夢の中に乳神様が姿を現してくれていないからだ。
あれを拝まない事にはやる気が出なかった。
だがまあ仕方ない。
今のままでは永遠にゾンビを続ける事になってしまう。
それは嫌なので、俺はだるい体を引きずりながら日課の狩りに出かける。