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レベリング道場再び

ずりずり……ずりずり……

ずりずりずりずり……ずりずずず……


腹を地に着け。

両手足と体の動きだけで進む。

所謂匍匐前進(ほふくぜんしん)と言うやつだ。


ずりずりずり……


あ、言っとくけど股間を地面に擦り付けて楽しむ特殊プレイじゃないから悪しからず。

この行動は特殊性癖を満足させるためではなく、安全に移動する為だ。


湿地を抜け既に二日。

辺り一面、背丈の低い植物に覆われた草原が広がっていた。

そんな場所を、ゾンビが昼間立って移動するのは余りにも目立ち過ぎてしまう。

見つけた冒険者に退治してくれと言っているようなものだ。

だから日の出ている内はこうして周りから見えない様、身を屈めて前進しているのだ。


ずりずりずり……


ん?

何か落ちてるぞ?

こんな場所に何だ?


草をかき分けていた指先に何かが当たり、ペタペタと触って確認する。

ザラザラとした毛の感触。

大きさは子犬サイズだ。


というか子犬っぽい。

恐らく犬型の魔物(ウルフ)の子供だろう。


死体かと思い、邪魔なのでどけようとしたその時、か細い鳴き声が耳に届く。

どうやらまだ死んではいない様だ。

だが(ぞんび)に良いように触られて反応できないって事は、もう先は長くないだろう。

死にかけなのにあっち行けされるのは流石に可愛そうだと思い、俺はそいつを避ける様に迂回する。


ずりずりずり……


くぅ~ん


ずりずり……


きゅー


ずり……


俺は軽く四つ這いになり、辺りを見回す。

人影は見当たらない。

それに気づけば日も大分傾いてきている。

これなら余程目の良い奴以外には見つからないだろう。


俺はおもむろに立ち上がり、先程の子犬(ウルフ)の元へと戻る。

ぱっと見、外傷は見当たらない。

恐らく空腹による餓死寸前なのだろう。

おれがそっと頭を撫でると、そいつは俺の手をぺろりと舐める。


「うーあー(腐ってるから舐めたりしたら腹壊すぞ)」


まあもう死にかけているのだ。

今更腹の一つや二つ、壊れた所でどうって事は無いだろう。

昔、餓死はとても苦しい死に方だと聞いた事を思い出す。


俺はおもむろに自分の腕の肉を食い千切り。

それを手に取って犬の口元へと近づけた。

すると子犬は俺の腐肉を一舐めしてから、堰を切った様に肉に貪りつく。


よほど腹が減っていたのだろう。

腐った肉でも構わないと思える程に。


見る間に食い終えたので、再び肉を食い千切り与える。

必死に生きようと肉に食らいつくウルフを見ていると、涙が出て来た。

こいつはもう助からないだろう。


所詮は腐肉、半分毒の様な物だ。

餓死寸前の弱った体でそんな物を口にすれば、どうなるかなど考えるまでも無い。

だがそれでも飢えて死ぬよりは幾分かましかと思い、俺は足をウルフに差し出してやる。


「うぁうー(最後の晩餐がゾンビの肉で悪いが、せめて腹いっぱいくえ)」


本当は止めを刺してやるのがこいつにとって、一番楽な死に方なのだろう。

だが昔犬を飼っていた思い出があるせいで、とてもではないが俺には出来そうもなかった。


許せ……


そんな風に灌漑に浸っていると、気づけば死んでた。

いや、最初っから死んではいたんだが、どうやら食われ過ぎてデッドしてしまった様だ。

匍匐前進でダメージが蓄積していたのもあるが、まさかロスト状態まで貪り尽くされるとは。

子犬恐るべし。


「キャンキャン!」


ウルフは腹いっぱい食って元気になったのか、俺の体が消えた辺りを尻尾を振りながらくるくると回っている。

どうやら腐っている肉でも問題無かった様だ。

流石魔物、強靭な胃袋をしてやがる。


まあでも良かった。

折角生き延びたんだ、強く生きろよ。


因みに俺の体はLCが無くなると消滅する。

今は霊魂の状態って奴だ。


「キャンキャン!」


しかしいつまで回ってんだ?

ひょっとしてこいつ、俺の魂見えてんの?

試しに手を振ってみる。


「きゃうん!」


あ、返事した。

まじか。

俺の魂が見えるって事は、こいつユニークスキル持ちって事か?


ウルフはいつまでも纏わりついて離れようとせず、ごろんと寝転がり俺に腹を見せる。

どうやらお代わりを求めている様だ。


この先、こいつ一人で生きていくのも大変だろう。

俺を食い殺せば食事のついでにレベルも上がるし一石二鳥だ。

そう思い、俺はリポップする。


「うぁうあうー(レベルリング道場再び!とくと味わうが良いわ!)」


こうして俺はウルフのレベルを上げてやるのだった。

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