ゾンビスタート
モテたい。
それも死ぬ程に。
俺の前世は非モテの陰キャだった。
当然その人生は年齢=彼女無し歴だ。
だから死の間際、強く願った。
生まれ変わったら次こそはモテたいと。
そしてその願いが天に届いたのか、俺は今、転生して異世界ハーレスに立っていた。
――ゾンビとして。
うん、全然届いてなかった。
「はぁ……」
俺は腐ってぼろぼろの自分の手を見て、溜息を吐く。
はっきり言ってゾンビは最悪だ。
腐り果て、生理的嫌悪感を感じさせるグロテスクな見た目。
鼻を突くような体臭。
吐き出す息に到っては、臭すぎてブレス扱いになる始末。
キモイ。汚い。臭い。腐ってる。
ゾンビはその4Kを兼ね備えた嫌われ要素の塊であり、モテる要素は皆無と言っていいだろう。
その為、俺のモテたいという願いは転生(転死)と同時に終わったと言えた。
ゾンビで女の子と付き合うとか、いくら何でもムリゲー過ぎる。
ざっけんな。
だがまあ、希望が全く無い訳ではない。
この世界には今とは別の存在へと進化する法則が存在している。
それを上手く利用出来ればキモイゾンビを脱却し、モテモテになる事も夢ではない……筈。
恐らくそれは辛く険しい道のりになるだろう。
だが俺はやり遂げて見せる。
「アヴァヴァヴァー!(絶対インキュバスになってモテ王になる!)」
俺は強い意気込みと共に拳を突き上げた。
そのまま天を見上げると、星々が美しく瞬いている。
その様は、まるで俺のサクセスストーリーを祝福しているかの様だ。
「あーぅーあー(よーし!やるぞー!)」
こうして始まる。
俺の成り上がりモテモテ計画が。