5・召喚組の場合。-魔術(魔法)召喚-
次に、魔術・魔法召喚の場合。(以下魔術召喚と呼ぶね!)
このパターンの帰還率は二割程で、神様召喚の時よりは下がる。
魔術と言う言葉通り、この方法は魔素とか魔力がある世界でしか行われない。
それらが存在しない世界でのなんちゃら召喚とかは様子のおかしな宗教団体が勝手に思い込んで、なんちゃらとかんちゃらを素材にこんな魔法陣で出来る! と、適当にやっているだけ。
ただ、そういう世界でも幽霊やら魂やら妖やら迷信じみたものがあるから、広く知られていないだけでそういう不思議な現象はあるのかもしれない。
というわけで、魔素があり魔力がある世界において、この方法は有効である。
前置きはさておき。
魔術召喚でも、ずば抜けた能力を持ち備えて召喚される事がほとんど。
神様が直接関わってないのになんでって思うかもしれないけど、神様がこういう世界にする! っていう設定を持って世界を作り魔素や魔力を存在させている。
基本、直接働きかけないし人が勝手にやらかした事だけど、理不尽に呼ばれてしまって申し訳ない……って感じで神様がこっそりばれない様に能力を付与しているんだとか。
その能力の付与も必ずしもつけるとは限らないらしいのだけど。
「基本」と言っている通り、ダイレクトに関わってくる場合もあるけど、それは本当に世界をどうにかしないと超困る……って場合なんだって。
ちなみに、能力付与作業の間は時を止めて行っているのだとか。
召喚の際、魔法陣が光ったり陣の周囲がぼやけたりしているのは、実はその作業中(付与したり付与が必要かどうかっていう審議をしたり)っていう裏話。
召喚の技術は、魔術や魔法のある世界の内八割では確率されていて、送還の技術が確実にあるのはその内の三割(隠蔽・失伝している物も含めて)。いかに一方通行な物が多いのかが良く分かる。
しかも、どんな理由であれ召喚出来てしまうのだから性質が悪い。神様の監視下の下呼び出されるわけではないので、人によっては本当にいい迷惑。
だから、呼び出されっぱなしが申し訳ないっておまけ(能力)を付与しているんだけどね。
こればっかりは、ノリ大好きな神様も、今は召喚技術がなくてもいずれ開発されるであろう世界の神様も例外なく、神様協定により、召喚の気配を感じたら「必要に応じて」その世界にとって必要な能力を付与する。
つまりちょっと上の方でもいったけど、必ずしも付与されるとは限らないって事。
そんな魔術召喚だけど、召喚側にとって外れだったり、極まれに能力なしだったり(求められる内容によるけど)、召喚者が全力で拒否ったり、返り討ちにしたり……色々。
まぁでも仕方ないよね。
その世界の人達の自業自得な部分だから。
そりゃそうだよね。
勝手に呼び付けるんだもの。誘拐だよ、拉致だよ!
ここまではまだいいとしても。
挙句に傲慢な態度とられて、不遜に扱われて、おまけに軟禁乃至監禁されたりされそうになったり、そりゃ怒るよね。
特に外れ能力。
外れになる理由なんてそんなにないでしょ。
例えば、よくある魔王討伐パターン。
魔族側として、むしろ人間に関わらない様にしていたりとか、人間が勝手に脅威に思っていたりとか、欲のために魔族の領土を手に入れようとか、非があるのにそれを魔族のせいにして民衆の目をそちらに故意に向けさせたり、そんなあれこれで戦争を仕掛けてくるのは人間で、魔族側からしてみればただ自国を守るために迎え撃っているだけで魔族側から仕掛けた事はないどころか、迫害された人間を保護している魔族がいる世界だってある。
そんな世界の神様にとって、醜態で醜悪なのは人間の方であって魔族の方ではない。
一方で、魔王=悪というテンプレ的な世界もあれば、倒しても数十年~数百年単位で復活する世界もある。
後者は、あまり人間をのさばらせてもいい事はない世界の場合によくある……らしい……。
ただ、魔王が長く居過ぎて魔族勢力が増すと、今度は人間存続がやばくなるのでその調整も必要で。
裏設定の一部を知って、うわー……神様やば……。って思った。
そんな世界では、人間が召喚を行わない・行えない場合、神様召喚なんだけど。
どちらの召還にしても、その場合はこれでもかっていう能力を与えるらしい。つまり、勇者であり聖女であり賢者であり……ですね……。
ご苦労様です……。
もう一つ例を挙げるとすれば、召喚者を掌握し世界の全てを手に入れようとしているパターン。
悪戯好きな神はいるが、その世界では存在すらしない魔神とか悪神とか仕立て上げて復活させ世界を手に入れようとか(存在すると思い込んでたりとか、存在しないと分かっていて敢えているように見せかける)、人族至上主義のおバカ(一概には言えないけど)が、召喚者を囲い他種族を廃そうとか、とにかくまぁ欲にまみれた人が定期的に現れ傍若無人に振舞っている世界。
そんな世界のそんな時代のそんな場所へ召喚された人には、執行者にとっての外れ能力、召喚者にとっては優良チートをプレゼント、らしい。
ちなみにそんな能力は異世界の人間にとっては常識で、ちょっと考えれば実はこれすげー能力じゃん? と気付けるものだったりする。
多少振り回されても構わないけど後に気付けばそれでよし。
召喚されてすぐに問答無用で隷属の契約をかまされたり、逆らえなくて流されるままだったり、故意に協力したり、挙句逆に世界を乗っ取ろうと画策したりする人もいる様で。
強制送還が出来ない世界では、前者二パターンの場合、どうにかして救って上げることが出来る人材で、且つ阿呆な独裁者を始末して世界を救ってくれそうな人材をあの手この手で探し出し、後者ニパターンの場合、召喚者と阿呆の二人を始末してくれそうな人材を探し出し送り込む。
集団召喚なんてものもある。
その場合、この人なら対抗できそうで大丈夫だという者を一~数名を選出し、それとは分からない様にあれこれ弄って隠蔽したり、その人だけに分かる様に表示させたり。
この集団召喚をされると神様は大忙し。神様自身が召喚するわけじゃないからね。
当事者たちにとっては一瞬だけど、実際の所少しだけ時間を止めてあれやこれやと弄っているわけで、不自然にならない程度の時間でそれらを終わらせないといけない。
おかげで普段から忙しい神様だとガチギレしているらしい。
そうでなくても面倒臭いのに余計な手間増やしやがって! と血管切らせているらしい……。
とにかく神様は忙しい。
外れ能力でだいぶ長くなったけど、極まれにある能力なしの場合。
魔力がなくとも、もともとその人がその世界にとって必要な知識を持っているのだから、それにちょっとだけその知識に関する見解をさらに深く掘り下げられるようにしたりとか。
そのパターンの人が呼ばれる世界では、貧困過ぎて……技術がやば過ぎて……政治の仕組みが……経済が……等々。
とにかくそっち系で切羽詰まった人が目的に見合う人を呼ぶのだから、当然もともとその知識が豊富、或いは万能、或いは考えが柔軟、もしくは回転が速い、そんな人が現れる。
かと思えば、本当に平凡な人が呼ばれる事もある。
非凡すぎて当たり前のことに気付けずどうしたらいいか逆に分からなくなっているのだ。
そういう所に現れた異世界の知識を持った平凡な人は、新鮮そのものに映るであろう。
原点を思い出させるそんな存在である。
ただ、それだけだと狙われた時命の危険すらあるわけだから、能力なしと言っても全くないわけじゃないらしいんだよね。
普通に言語理解の能力もあるし(そういう能力はなくても大抵道具やなんらかの方法はある)、人よりは多少魔力が多い場合もあるし、人よりは多少身体能力が高い場合もある。
後者二つがない場合でも、知識という武器がある。
そこに集まる人達が自然と周りを固めてくれる。
まぁとにかく胡散臭い(特に目とか口元)、誘拐しといてなにその横柄な態度、自分と関係ない世界をなんで助ける必要が?、実際目にしたこと以外信じない、とかとか、偏屈さんや穿ったさんに多いパターンで、そんな人は大抵与えた能力を確認する前に直感的に「あぁっ!?」って思うらしい。
このほとんどが執行者にとって外れ能力パターンに該当する召喚を受けた人の行動ではあるけど、偏屈で穿った見方をしつつも、真剣な目をし真摯に対応する人に対しては、まぁ話を聞いた上で判断してやろう的な態度できちんと時間を取る人が多いみたい。
神様は、召喚しょっぱなにそんな苦境に陥った人(執行者)を見て「ざまーwww」とか思って机叩いたり拍手しているんだって。
神様……。
で、一番最初に戻ってなんで帰還率がこんなに少ないのかと言うと、最初の方でちらっと言ったけど送還技術が確立されている世界が少ない事と、神様が直接召喚したわけではないからというこの二つが大きな理由で、他には帰還出来るけど居ついちゃったのとか元の世界に戻りたくないのとか、後は色んな理由で死亡が原因とか。
他には帰還のヒントに気付いていても、探し出す事に意外と苦労するらしく諦めちゃう人もいるし、帰還方法が確実に分かっていても隠蔽していたりとか。
目的果たしたら強制的に戻る事も稀にあるけど、ね。
隠蔽されていたり失伝していたり伝承の類をかき集めても期間に必要な最後のピースが見つからなかったり。
それでもどうにかこうにか帰還出来た人の中には十年単位でやっと……と言った人も。
これ、帰還先の時間が元の時間にならなかった場合悲惨な事に。下手したら数百年後とか巻き戻り過ぎて最初からとか、生まれる前の何十年前とかってのもあり得るんだから。
というか、神様関わってない系の異世界組には、割とよくあるやつ。
可哀そうすぎる……。