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18・触れない様にしていました。

 一人で青くなったり赤くなっていると、どうしたの? 具合でも悪い? とお母さんに問われ、ハッと現実に戻った私はぶんぶんと首を振る。


 あー、恥かしかった。


「そう? ところでちぃちゃん? アルウィン君の服……皺になってしまうわよ? いつまで握っているの?」


 言われて右手の先を見る。

 長い服の裾の端を確かにぎゅっと握っている。


 ……うん。私いつから握ってるんだっけ……?


 バッと手を離したものの右手の所在の在処が落ち着かず、宙で無意味にグッパーしてみる。

 服が皺に。きっと手汗も吸い込んでる。


「えーっと……。いつから握って……た……?」


「わりと最初からだったような気がします……」


 美優ちゃんが少し視線を逸らしつつ教えてくれました。


 早く教えてー!?

 みんなが半目になってる!


「いえ……。嬉しいんだろうなぁってあえて触れない様にしていました……」


「うっ。アルウィン気付いてた!? 気付いてたよね!?」


「クスクス。可愛らしかったので、ついこのままでもいいかと」


 にこりと微笑まれて、ぐっと詰まる。


 うん、美優ちゃんの言う通り嬉しすぎて無意識に掴んでたんだろうなぁ。気持ちが前に出ていたかもしれない!

 うわあああ……。どこの乙女ー! 私がやってもイタイ子なだけ!


 しかも、未だに宙をさ迷っている右手を、大きな手で包み込んで、


「これなら皺にならないから」


 と宣います。


 うえーい。

 お父さん達の前で手を繋いでるぅ!

 違う、そうじゃない! そうじゃなくてぇっ!


 視線が痛くて辛い!

 お父さんの咳払いがワザとらしいよ!


「あーそのなんだ。アルウィン君達の事は後でじっくりと聞かせて貰う事にするとしてだね」


 アルウィンから手が解放されて、ほっと胸を撫で下ろす。くすくす笑っている様子から、絶対揶揄って遊ばれたよね。


「あー羨ましいなぁっ。アタシもそういう出会いが! 潤いが欲しかったー!」

「わたしもです!」


 瑠香ちゃんも美優ちゃんも、美人で可愛いから引く手数多だよ!


「僕としては、君達の話も聞いてみたい所だよ」

「いいですよー! その変わりアタシもアルウィンさん達の話を後で聞きたいでーす!」

「あ、俺も」


 なんて、これ公開羞恥プレイになるやつだよねぇっ? みんなの前で暴露するとか!

 でも、機転を利かせてくれて、自分達の事も話してくれる人を前に断れないやつ。

 みんながいなかったら、お父さんお母さん、アルウィンとユランを前に上手くここまで説明できたかも分からないんだもん。


 とはいえ、公開羞恥プレイかぁ……。

 胃が痛いよおー。


「それじゃあ、もうお昼だしご飯食べながらにしましょうか。少し休憩しましょ。ちぃちゃんがお話してくれた他にも新しい事沢山でお母さん少し疲れたわ」


「えっ、いいんですか?」


「いいわよー」


「あ、じゃあお台所貸して頂けるんでしたら、わたしが何か作りますよー!」


「んっ。じゃあアタシも手伝うよ! こう見えても結構出来るんだから! 綾深さん、ゆっくりしてて下さい!」


「あら、そう? じゃあお願いしようかな?」


「任せて下さい! あ、でもプロの方にお食事って……」


「ははは。お店の料理と家の料理は別物だよ。若いお嬢さんの手料理が楽しみだ。台所はこっちだよ」


「それじゃあ、私も……」


「千寿さんも! ここで! ゆっくりしてて下さーいっ」


 と、案内されて台所に向かう足音がパタパタと可愛らしい。


「うん、やっぱり女の子っていいわよねぇ……。華やかで」


 お母さん……。

 華やかなのは瑠香ちゃんと美優ちゃんだから、と言ってもいいですか? 涙。

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