16・結構恥ずかしいです。
「君達はタイプは違う様なのにこうして一緒にいるというのは不思議だったけど、そういう事だったんだね。だけど、普段は関わったりしないみたいだけど」
「先程も少し触れましたが、基本、帰還者は大っぴらにそのことに触れたり、帰還者同士が意味もなく触れ合ったりするわけではないんですよ。ここにいるオレ達でも、事情は色々ありますから。余り信じて貰えないというのもありますが、帰還者同士でいうと大きく分けて二種類います。成功した者かそうでないか、です。少なくともここにいる帰還者は成功した部類になると思います。心象が悪かったりすると、異世界というワードだけで発狂したりする人もいるので、特に成功者からの接触は滅多にしないのですが。ちなみにそういった感じも、なんとなくですけど分かりますね。ただ、今回は……」
「うん、今回は……だなー」
あ、はい。
私とアルウィンとユランのせい、ですよね! なんかスミマセン!
「写メで見た通りの、日本……だけじゃないよねー。この容姿、特に髪色とか目とか! 染めたりカラコンとかじゃないとあり得ないやつ! 染めてもあそこまで綺麗にならないし、日本だったから余計に違和感だし! 帰還者だからすぐ分かるよねー。あ、この人異世界の人だって。そんな人が急に現れて、往来で目立ってちゃ大騒ぎだもん」
「変に噂が流れて大事になったら大変と思って慌てて、なんか強引な感じで申し訳なかったんですけど確保したって感じなんです、よね。思わず飛び出したら、わたし以外にも同時に出て来てくれた方が思いの外いて驚きましたー……」
「それそれ! アタシもびっくりしたよー。そもそも、あの限定された範囲にあれだけ揃ってるとか滅多にっていうか初めてだよね!」
「正直な所、わたしだけじゃなくて少しホッとしました。とにかく、これから先もこちらで生活するのであれば、明らかに千寿さんやアルウィンさんユランさんが困ると思ったのもありましたけど、わたしも含めてあまり表沙汰になりたくない帰還者が多いですから、そういう打算もあって飛び出したんです」
「本人目の前にして言う事じゃないけどさ。上にいる人ってそういうの無頓着な人多いんだよなぁ……。俺がいた世界もそういうの多かったなぁ……」
「分かるー。関わった内の一人や二人や三人や四人は必ずいるんだよねー」
瑠香ちゃん、増えてる増えてる。
分かるけど!
「ふふっ。皆さんも経験あるんですね。わたし、往来で盛大に告られた事とか神様でもないのに往来で崇められたりとか普通にあります。日常茶飯事レベルで。かなりドン引きしましたけど。アルウィンさん、わたし達日本人のほとんどはそう言うのに慣れてないですから、気を付けて下さい。結構恥ずかしいです……」
ちらりとアルウィンに目を遣れば、少し気まずい様子でそっと視線を外している。
それでも絵になるってどうなの。
イケメンは何やってもイケメンに見える法則はどうかと思う。
「仰る通りですね。特にアルウィン様、よく聞いておいて下さいね」
そんなユランの言葉に、軽く笑いが起きた。
「肝に銘じます……」
苦笑しながら忠告に答えるアルウィンの顔は、少し赤い。
「ふふふっ。これ以上苛めるのは可哀そうですからこの辺で。大分話が逸れましたけど、そんなわけで色々と不都合がありましたから、やむなくという所です。本当に普段こんなに狭い範囲で大勢の帰還者が見えるのは滅多にないんです」
そう考えると、あれだけの帰還者さん達がいたのは凄く運が良かったと思う。
あのままだと、動揺したまま口をパクパクさせているだけだったと確信している!
本当に帰還者の皆様ありがとう! 感謝しています!