12・ワクワクしてしまうわ。
お店じゃなく家にいる時は大将じゃなく「お父さん」と呼ぶ。もちろん、女将さんの事も「お母さん」と呼ぶ。
「千寿は今日からうちの娘みたいな……違うな……娘で家族だな。家に住むんだから遠慮もいらないよ」
バイト始める時に、私が孤児だって事情を知っていたお父さんがそう言った瞬間から家族になった。
お母さんも、うんうんと頷いて「子どもがいないからあなたが私達の初めての子どもよ」と、私の事をぎゅっと抱きしめてくれた。
「母さん、千寿がお客様連れて来たぞ。何か話があるみたいだ」
お母さんも呼ぶと、
「あらあらあら、いらっしゃいませ。ちぃちゃん、この方達はお友達? ちぃちゃんがお友達連れて来るなんて初めてね!」
お父さんと同じように目を細めて、にこにこと嬉しそうな顔をする。
「え、えっとね、色々と事情があって、実はこの二人以外はついさっき知り合ったばっかりでとりあえず自己紹介から、いいかな?」
居間に通して落ち着いたところで、まずは自己紹介を始める事にする。
「初めまして。私は花咲千寿です。みんな、さっきは助けて頂いてありがとうございました。それから、こちらが父の宮川福都、こちらが母の宮川綾深です。」
「初めましてだね。父の福都です。苗字で気付いた通り僕達は本当の家族ではないけども、千寿は僕達の娘なんだよ。これからも仲良くしてやってくれると嬉しい」
「母の綾深よ。よろしくね。ちぃちゃんがお友達つれてくるの初めてだからワクワクしてしまうわ。もう感激よ」
「あっ! お店の名前ってお二人のお名前! って、アタシは雪野瑠香でーす! 十七歳、高校生! よろしくお願いしまーす!」
「ははは。良く分かったね。そうだよ。結婚してから持った店でね。二人の名前を付けたんだよ」
「素敵です! 千寿さん、優しそうなご両親で羨ましいです! わたしは藤里美優です。雪野さん、瑠香ちゃんって呼んでいいですか? 同い年ですよー。えへへ」
「いいよー。瑠香でもるぅでもなんでもオッケーだよっ」
「女の子が増えるとは華やかになっていいわねぇ」
瑠香ちゃんと美優ちゃんが同い年かぁ……。
若いし元気が合って美少女だし可憐な子だし羨ましい。
「じゃあ次は俺かな。俺は佐久間貴志。二十一歳、大学生。よろしくお願いします」
「オレは、富田啓介、二十六歳。一応社会人枠で。あ、言っときますけど、さぼりじゃないですからね」
貴志君はどちらかと言うと硬派イケメンで、啓介さんはぱっと見遊び人風イケメンなんだけど、口調が丁寧だったのが以外で軽く驚いたのは内緒。
さて、と……。
ここからが本番だよね。
「お父さん、お母さん、あのね、その、こちらの二人を紹介するんだけど、ね、驚かないで聞いてくれる?」
「うん? あれ以上に驚く事はあるのかな?」
「た、多分……?」
「そう言えば、見た事のある顔だね。いやでもうーん、髪色とか……」
ちらりと見せた写メの二人は、髪も目も変えてない姿だし戸惑うのも無理ないよね。
でも、流石商売をしているだけのことはある。あの時見せただけなのに、覚えてるとか。そりゃそうだよね。特徴ありすぎっていうか、綺麗な顔してるから印象に残るよね。
私は、とりあえずスマホを取り出して準備をしてから深く呼吸した。
「こちらの二人は、その、私が戻ってきた後に見せた写メで紹介した事ある人で……。黒髪の方がアルウィン・セイル・シェルファウラレイクさん、です。えっと……前に見せた写メのこっちの……。そのお隣にいるのが、ユラン・マルケイドさん、です。写メのこっちに写ってるこの……」
お父さんとお母さんは、「やっぱり……」と呟きつつも目を丸くして写メと実物を交互に見ながら口をあんぐりと開けていた。
うん、そうなるよね。
私も、そうなると思うから、大丈夫だよ。