収拾
それから数刻―――――
ババローネ軍曹から賊殲滅の一報を聞き、皆総出で火を沈下、焼き焦げた本邸を呆然と見た後。
私は生存者を全員『第零塔』に集めた。
エリザはレインハルトとババローネを後ろに侍らかせ、急遽持ってこられた椅子に腰を下ろし、眼前を見下ろした。
急遽とはいったが、それなりに質の良い鉄椅子だったが・・・
確認の意を込めて、問を投げる。
「生き残ってるのはこれで全部?」
当主たる父の死亡、火の燃え方、鎮圧までにかかった時間を考えても、かなりの被害が出たことは想像に難くなかったが・・・予想以上だよこれは。
「いえ、各地に散らばり、諜報活動をしている『影』の者を集めれば、後百人ほど居ります。」
ババローネの言葉にエリザはOKと頷く。
(『影』か・・・
確かパパ直属の特別諜報員だったわね・・・え?今100人って言った?
おかしい、おかしいわよこれは・・・)
今エリザベータの目の前には100以上は固い黒ずくめの集団がいる。そして、アルバート家の執事とメイドはそれぞれ80人ずつ。計180人・・・
どー考えても比率が可笑しいでしょ。
何、どんだけ諜報好きなのパパ・・・
「一応聞いておくけど元は何人くらいいたの?」
この事態の原因は父上にあるのではないのかと思い始めるエリザベータ。
最後の望み(←訳分らん)をかけ、そう聞いてみた。
答えたのは元執事長セバス。
セバスは老練白髪の執事だ。厳かな面持ちで、ガタイも年を感じさせないほどに立派だった。
その声もまたなかなか・・・ダンディーだ。
「執事が儂を含め82人。メイドが81人。コックが23人。演奏家が3人。『影』が394人。常駐騎士が528人です。」
「現状は・・・?」
「執事が儂一人。メイドがエリザベータ様の世話係だったミランダと産休を取っていたアリアの二人。コックは全員逃げ出し、演奏家も以下同文。『影』ここに居る108人と出かけている103人の計210人。最後に騎士はここに居る124人で全てです。」
「・・・・・」
言葉が出ないとはこのことかもしれない・・・。
『影』の事を聞こうと思ったら、とんでもない事実を発掘してしまった。
――――――――コックが全員逃げ出しました
―――――――コックが全員逃げ出しました
――――――コックが全員逃げ出しました
――――
――
あ~、やっぱ今の無し、今の無し。
よし!聞かなかったことにしよう。
「・・・・・」
私以上に悲壮な顔つきをしている者達と目が合う。兵士たちだ。
胃袋を掴まれた子豚の様な・・・悲惨だ・・・
そんな目で見ないでくれ。
分かった。分かった。考えればいいんだろ?
よーし、よっしゃ任せておけ。
私はパチンと手を叩き注目を集める。
出来るだけ、軽い口調で言葉を紡いだ。
「あ、とー、・・・演奏家は別にいいわ。音楽聞かなくても死なないからね・・・。コックは料理作れる人はいる?居ないとケッコー困ることになるわよ。ババローネは騎士の増員について考えて・・・。『影』は今のところ問題は無いはわ。ただし情報収集は怠らず。執事とメイドは・・・仕事を分散するからしばらくは現状維持で・・・。何か反論・意見・異議申し立てがある人はいる?」
私は言い終えると、鷹揚に全体を俯瞰する。
「「「万事ご命令通りに!!!」」」