形見の品
モンスターから出る薬草や皮など微量なアイテムを、神殿の施しに混ぜて渡すとシスター達はとても喜んだ。
アルバは毎朝山小屋で手伝いをしたいと偽り、森のモンスターと戦っていたのだが、この日はいつもと違い、昨日頼まれたお使いをして神殿に戻った。
子供部屋に入ると、いつもアルバの後をついてくる3人がいなかった。
《みんなー、アロンとダニーとマリアはどこに行ったか知ってるか?》
《知らないよ。シスターマザースがアルバに自分の部屋に来るようにって言ってたよ、後3人は内緒話をしていたんだ。その後直ぐに出て行ったよ》
《何だそれ…あいつら又何かやったのかなぁ…。ありがとうマザースの所に行って見るよ…》
アルバは部屋を出てマザースの部屋へ向かった。
アルバはマザースの部屋の前に行き扉を叩いた。
《シスターマザース、アルバです。只今帰りました。入って良いですか?》
《どうぞ…お入りなさい。アルバ》
扉を開けるとマザースは悲しみ表情で俺の顔を見た。
《マザース!!大丈夫ですか?具合でも悪いのですか?》
《いいえ大丈夫ですよ、ありがとうアルバ。お帰りなさい》
《俺を呼んでいると聞いたのですが、何かご用ですか?》
《えぇ…、その事もあったんだけど…アルバ、ダニーから聞きましたけど、貴方職種を決めたそうですね》
《...‼︎》
《何故…決める前に相談してくれなかったの、貴方が何故その職種を選んだかは、私はすぐ分かりましたよ。貴方は優しい子だから…。ごめんなさいアルバ…》
《…マザース。大丈夫だよ。俺強いから…。もっともっと強くなって、マザースが太っちゃうぐらい稼いで来るから…。そうしたらここはお城になっちゃうかもね》
俺がそう話すと、マザースは俺を抱きしめ涙を流した。
《アルバありがとう。でも決して無理はしないで下さいね。貴方に何かあったら私が悲しいって事を覚えておいて下さいね。私だけで無くここに居る皆も貴方が大好きなのですよ》
《はい…分かりました。》
そういうとシスターは立ち上がって、扉から大きな袋を引きずり出した。
《本当は貴方がもう少し大きくなってから渡したかったのですが、貴方がこの頃山小屋で薪割りのお手伝いをしてると聞いて、渡す決心をしました。今、貴方に必要な物でしょう》
《必要な物?》
マザースから渡され袋を開けて見ると、森の木々の装飾が施された大きな斧だった。
一目で高級な品だと分かる物だった。
《マザース…これは…!?》
《それは貴方のお父上の形見の品です。お父上は名のある木こりでした、その斧も大変高価な品です。貴方が父親の職種を受け継いだらと思い、大切に保管していましたが…今貴方に返す時なのでしょう。お持ちなさいアルバ》
袋の中の斧は思った以上に大きく、俺の身体が隠れるぐらいだった。
斧にACを差し込むと、驚く程斧は軽く持ち上げる事が出来た。
《マザース有難う。大切にするよ…父さんの形見だ…、持っててくれてありがとう》
俺は斧の柄の部分をつかみ、肩にかけ紐で固定した。
いつかこの斧を片手で持てる男になれるだろうか。
「えぇ…アルバ、今日が貴方の新たな出発ですおめでとう。そしてこれは私からの祝福です」
そういうとマザースは俺の額に祝福のキスをした。