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腹黒乙女と12の時代勇者様  作者: 朝月ゆき
【一章】 黄の乙女は始まりを知る
11/24

〜鎌倉の勇者様(2)〜

「……なに、これ」


目の前で一体なにが起きている。


「理香様?どういうこと…?」


これは、抗う理香と千夜を油断させるための狡猾な戦法なのか。

敵対している人間である理香に首を垂れるという。


『我らはずっと貴女を捜していたのです。理香様』


ずっと捜していた。

貴女を。


限界まで目を見開く理香の眼下ーーいや、跪くような体勢をとってもなお理香たちの見上げる先にいる竜の形を模した敵達。


人類の敵は、確かに理香に敬意を払っていた。


天を切り開きそうな巨大な翼も今は折りたたまれており、長い首を地に打ち付けるくらい垂れ下げている。


「……お前ら、ほんとにどういう事なの?」


手にしていた長剣の剣先を邪魔だと言わんばかりに地に刺し、千夜が驚きの表情を消して訝しむような顔になった。


だが、そんな千夜を一瞥する事もなく敵のリーダー格のような竜は冷たい声を発した。


『黙れ、人間。きさまには何の用もない』


「……酷いなあ。でも、俺は理香様(・・・)の勇者だからね。除け者にしないでほしいなあ」


千夜がお互い殺しあった仲じゃないかと、無邪気でしかしどこか侮れない笑みを浮かべた。


「けど、【我らが】って言葉は気に入らないなあ。理香は決してお前らのものじゃないし、【俺の】主だからね」


その言葉に敵達はあからさまにいきり立った。


竜の姿をした敵はざっと見て二十体ほど、この場にいたがリーダー格のような敵以外の敵達は全身の鱗を逆立たせた。


『きさまごときが理香様の…!?ふざけるな!』


『それは理香様を侮辱する行為だ。気づいているのか、人間!!』


『滅びよ…人間!!』


怒りの咆哮が敵たちから放たれ、憎悪さえまとった鳴き声が天を震えさせた。

その叫びが辺りにあった荒廃した建物を粉砕させ、その声が地を裂く。


『ーー黙れ。誇り高き我ら竜神族が愚かな人間の所作に翻弄されてどうする。恥を知れ。理香様を怯えさせる気か』


静かだが威圧的な声と言葉がリーダー格の竜により放たれた。


『し、しかしこいつは理香様を…』


『私に刃向かうのか?痴れ者が。私に殺されたくなければそれ以上騒ぐな。その醜態をオディアス様に知られたくはないだろう?』


『は、申し訳ありません!』


一匹の竜がリーダー格の言葉に打ち震え、怯え焦りながら後退した。


「へぇ…」


リーダー格がその身に纏う他者とは違う風格、言行に感心でもしたのか、腕を組んで佇む千夜の口角がわずかに上がった。


『申し訳ありません、理香様。お騒がせしました。名乗り遅れましたが、私はサレイドと申します。我らは竜神族。貴女をずっと探し求めていたのです』


今だに固まったままの理香にサレイドと名乗った竜は縦長の黒の瞳孔をした金色の目を細めた。


まるで、微笑むかのように。柔らかく。


『先ほどは貴女様と気づかず手荒な真似をして申し訳ありませんでした。聞いていた特徴と貴女様の容姿がなかなか合致しなかったので、気づくのに遅れました』


ずっと、目の前の竜は言葉を紡いでいる。

だけど、理香の耳には全くその言葉は入らない。


だが、千夜は興味深そうにサレイドの話を静聴していた。

それこそ冷静に。

自分の何百倍もある竜が視界を占めているというのに。


『貴女を見つけ出すために、我らはこの国の人間を全て屠ったのです』





そして、理香は後に思い知ることになる。







ーー自分は存在してはいけない人間だったと。








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