暗闇の中にただ一人?
目が覚めた。そこは何も見えない暗闇だった。
ここは一体どこなのだろうか?
私は、誰なのだろうか。
記憶を辿ってみるが、何故か何も思い出せない。
(これではただの空っぽな人形ではないか)
…人形?そもそも私は体があるのだろうか。
暗闇で何も見えないが、自分の体に動かすことや触ることはできた。
少しだけ暖かい、体。
柔らかい皮膚。
前後に動く四肢。
どうやら私は人間のようだ。
『…目が覚めたの?』
どこからか知らない声がする。でもどこか、懐かしい声。
(あなたは、誰?)
『そのうちにきっと分かるよ』
(では、ここはどこ?)
『さぁ、どこだろうね。強いて言うなら…何もない、゛虚無゛の世界だろうね』
(なぜここに私が?)
『君が゛創造者゛だからだよ。…何も覚えてないのかい?』
(ええ。)
『そうか、それは困ったな…。この世界は君が造り出した、これはさっき言ったから分かるだろう?…君がこの世界を造り出した目的があった筈なんだ。しかし君は忘れてしまった。
残念ながら僕はその目的を知らない。さて、どうしようか…』
(記憶を取り戻すほか、ないでしょう)
そうだねと相槌を打つ彼だが、やはり相当困惑しているようだ。
『…そうだ』
何かを閃き、明るい口調でこんな提案をする。
『゛赤い世界゛に、行ってみないかい?』
そこに行けばきっと、思い出す筈だよ。
この世界を造り出した目的も、
僕のことも、ね。
(そうだね。でも、どうやって行くの?)
『簡単さ。君がここを出ようと強く思えば出れるよ。なんたってここは君が造り出したんだから』
強く、強く願う。
すると暗闇の中に白い光が現れ、私はそこに向かって歩きだす。
(眩しい)
眩すぎて何も見えない。言わば白い闇、だ。
またどこからか声がする。
『行ってらっしゃい。僕はここで留守番をしているよ。あぁそれと……』
『―――には、気を付けてね』
最後のほうがあまり聞き取れなかったが、最初に言わなかったということはあまり大切な事ではないだろう。
きっと。