6話
「それはちょっと難しいな…」
「いや、こんなありきたりの武器をどうして作れないんだ?」
俺は今、人間最高の腕を持つと言われている名工リンポス…の三番弟子であるコーワンの元を訪れている。
忘れてるかもしれないが、俺は現在愛用している両手剣『ツインストレートN』の右剣を、例の大型魔物に投げてしまったことで失っている。
なので、もう一度作れないかと頼んでいたところだった。
だったのだが、
「なんでと言われてもだなぁ…
その『ありきたりの武器』によく使う鉄が不足してるんだ。
ここらで鉄が採れるのはドーガ火山くらいだが、あそこは鬼の領土。
それに戦争のお陰で人の領土で採れる鉄の大半は軍に回ってる。」
「個人で鉄を買い付けに行くか、魔物から取り返すしかないのか…」
「俺は買い付けに行こうにも取り返すにも、店を空けるわけには行かないからな。
しばらく盾無しの片手中剣で頑張れ!」
ってな感じで断られてしまった。
「そうは行ってもなぁ…
俺は両手剣以外を使ったことがないからなぁ…」
「なんとかなるだろ!
お前の素質は未知数だからな!」
「未知数ってなぁ…
俺はただのランク2魔狩者だぞ?」
「ともかく、それしか道はないんだ。
腕の良い片手剣使いを紹介してやるから、そいつに手取り足取り教えてもらえよ!」
「あぁ、すまないな。」
「良いってことよ!
じゃあ、明日の昼あたりに来てくれよ。
ちょうどそいつが来る予定になってるんだ。」
「わかった。明日の昼だな。」
そうして、コーワンの店を後にした。
「ただいま~」
「あ、おかえりタカミ!」
「おう、早かったな!」
宿に帰ってきた俺は、二人に武器の事がどういう話になったのかを聞かれたので、さっきコーワンと話した内容を伝えた。
「じゃあ、その片手剣使いにしばらくお世話になるってこと?」
「そういうことだな。」
「でも大丈夫か?昔から両手剣だったのを変えるってきついだろ?
ギルドに武器を借りたらどうだ?」
「たしかにそういう手もあるけど、ギルドの貸し出し武器はあまり良いものがないだろう。
すぐ刃こぼれするようなボロ武器だ。」
「だよなぁ~」
「じゃあ仕方ないよね…」
「だから悪いが、俺はしばらくクエストには行けないことになる。」
「それなら大丈夫だよ。
まぁ、大丈夫ではないんだけど…」
「ん?どういうことだ?」
「例の大型魔物の影響でランク4未満の魔狩者の林へのクエストは出れなくなってんだよ。
だから俺たちはしばらく町で待機してるしかないって訳。」
「まじかぁ…
って待て!俺の右剣はどうするんだよ!」
「諦めろ」
さらっと笑顔で言われましたとさ。
その時、誰かが部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「はーい?」
「デリーツ様にお手紙が届いております。」
この宿の宿主だ。
しかし、手紙とは珍しい。
孤児の俺たちにはギルド以外に知り合いなどほとんどいない。
そのギルドも緊急でない限り手紙など寄越さないのだから。
いわば、これが俺たち3人にとって初の手紙だ。
「えーっと、誰からだ?」
「あ、裏に書いてある。ララさんからだ!」
「ララから?なんだろう…」
「速く読めよタカミ!」
「わかったわかった。えっと…」
さすがはギルドの受付嬢。
手紙の書き方が完璧だ。
が、拝啓などは飛ばして、内容はこうあった。
『先日タカミ君たちを襲った魔物の正体がわかったわ。
レスワイバーンという魔竜種だったみたい。
調査部隊の報告でわかったことで、たしかに片目に中剣が刺さっていたそうよ。
今レスワイバーンの討伐がランク4クエストに出されているわ。
中剣は回収できれば所有者に返却されるらしいから、安心してね。
追伸:ルルお姉ちゃんの計らいで返却されることになったんだから、感謝してよね。』
「感謝してよね。って、計らってくれたのルルさん…」
「まぁ、感謝しとこうぜ。
それにしても、ランク4かぁ、俺の予想も外れたなぁ…」
「予想?なんの予想だ?」
「あの大型魔物はランク5以上だろうって予想。
でも、レスワイバーンで、ランクは4。的ハズレだったよ。」
「でも、よかったじゃない。
本当にランク5以上だったら皆死んでたかも知れないし。」
「そうだな!それにしても、レスワイバーンか。
魔竜がこの辺にいるなんて珍しいな。」
「そうだね、たしかにこの辺は魔竜含め、竜人さえ嫌う植物が群生してるのに。」
「レスワイバーンだぜ?飛び付かれて降りてきたのかもよ?」
「たしかに、レスワイバーンならあり得るか。
まぁ、深く考えてもしょうがない。
そろそろ夕飯にしようぜ。」
「じゃあ、宿主さんにルームサービス頼んでくるね。
何が良い? 」
「じゃあ、魚A。」
「俺は肉Cで!」
「はいはーい。」
やっと大型魔物の正体が判明しました。
レスワイバーン…劣ったワイバーンです。